米ギャラップが10月28日に公表した四半期調査によると、2026年第3四半期の米国の従業員エンゲージメントは29%となり、第2四半期から2ポイント低下した。2011年以来の最低水準だ。積極的に仕事から離れている「積極的不関与」の割合は17%から18%に上昇し、残る53%は「エンゲージメントなし」、つまり職場にいても気持ちが仕事に向いていない層だった。
調査は8月5日から19日に実施され、対象は米国の成人21,648人、誤差はプラスマイナス約1ポイント。ギャラップの換算では1ポイントがおよそ160万人の従業員に相当する。第3四半期の低下でエンゲージメントの高い従業員は約320万人減り、2020年に記録した36%のピークと比べると累計で約1,100万人少ない計算になる。
低下が最も大きかったのはリモートとハイブリッド
勤務形態別にみると、完全リモートの従業員は1四半期で5ポイント、ハイブリッド勤務は2ポイント低下した。出社勤務やリモートが難しい職種の低下幅は約1ポイントにとどまった。
ギャラップのリポートで最も注目を集めている一文はAIに関するものだ。
"Hybrid and remote employees in organizations adopting AI experienced the sharpest declines."(AIを導入している組織では、ハイブリッドとリモートの従業員の低下幅が最も大きかった。)
この一文は、ギャラップが7月に公表した分析と併せて読む必要がある。第2四半期のデータでは、AIを導入した企業の従業員エンゲージメントは未導入の企業より6ポイント高かった。明確なAI計画がある企業では15ポイント、管理職が積極的に後押ししている企業では18ポイント高く、この3つがそろった場合のエンゲージメントは53%に達した。勤務形態別では、AI導入企業のリモート勤務者が5ポイント、ハイブリッド勤務者が8ポイント上回っていた。
第3四半期には、リモートとハイブリッドの両グループでこの差が2ポイントまで縮小した。出社勤務の従業員が得ていたAIの優位は4〜5ポイントで、ほぼ変わっていない。つまり、AIを導入した企業は全体としては未導入の企業より良好な状態を保っており、縮んだのはリモートとハイブリッドの人たちが享受していた分の優位である。
基本的な2つの指標がそろって低下
「仕事で自分に何が求められているかをはっきり理解している」という項目に強く同意した人は、上半期の49%から第3四半期は46%に下がり、2024年の最低水準に並んだ。最高だった2015年は61%だった。「上司や同僚が自分を気にかけてくれている」という項目は40%から37%に下がった。最高は2020年3月の47%である。
ギャラップはAIとこの2つの指標の因果関係の分析を示しておらず、リモート勤務者のAI優位がなぜ1四半期で縮んだのかも説明していない。考えられる方向性として、ツールの入れ替わりが速く職務要件もそれに合わせて変わるなか、自宅で働く人は上司から明確な説明を受けにくい、という見方はできる。ただしこれはデータの動きからの推測であり、リポート自体がそう結論づけているわけではない。
中国企業にとっての示唆
中国でも今年、多くの企業がAI業務ツールの導入を進めており、釘釘(DingTalk)、飛書(Feishu)、企業微信(WeCom)はいずれもエージェント機能を搭載した。ただ、従業員のエンゲージメントとAI利用の関係を四半期ごとに追跡している組織はほとんどない。ギャラップのデータが示す教訓は素朴なものだ。ツールを展開したあと、管理職が「仕事がどう変わるのか」を従業員にきちんと説明できているかどうかが、ツールそのもの以上に影響する可能性がある。第2四半期に示された18ポイントの差も、管理職の支援という項目によるものだった。
中国は米国に比べてリモートワークの比率が低く、ギャラップのデータでは出社勤務者のAI優位も比較的安定している。これに沿って考えれば、中国企業が受ける影響は小さい可能性があるが、現時点で同じ基準の国内調査はなく、検証はできない。
参考資料:ギャラップの職場調査リポート(エンゲージメント29%、標本数と誤差、リモート・ハイブリッドの低下幅、AI導入組織の優位幅を確認)、CocoLoop、ギャラップの第2四半期AI利用分析。