Figmaは10月29日の投稿で、自社開発のデザイン編集モデルを明らかにした。土台はアリババ(Alibaba)がオープンソースで公開するQwen 3.8 27Bで、教師あり微調整と強化学習を経て、既存のデザインに対する精密な修正を担当する。このモデルはすでにFigmaのAIエージェントに組み込まれており、エージェント自体も全ユーザー向けに正式公開された。
投稿ではモデルに対外的な名称は付けられておらず、評価グラフでは「Figma design edits v3」と表記されている。Figma社内の編集評価でのスコアは77.8%で、サードパーティ製モデルのSol 6.1は76.9%だった。
「We've increasingly seen that specialized post-training can compete with frontier models.」
(特化した後学習が最先端モデルと渡り合えるケースが、ますます増えている。)
二段階の学習:まず模倣、次に強化
初期バージョンの土台はLlama 3.3 70Bだった。学習データは、元のデザイン、合成した修正リクエスト、成功した修正結果を1組にしたもので、デザインはFigma独自のファイル形式のまま表現されている。テーマやコンポーネントといったデザインシステムの資産にも、合成プロンプトが用意された。
データはまず大型の教師モデルが修正を試み、その結果を決定論的な検証器と視覚モデルによる審査にかける。パイプラインは評価のフィードバックに基づいて自己修正できる。初期バージョンでは25万件以上のサンプルを使い、編集タスクでは当時のトップモデルと並ぶ水準に達していた。
しかし模倣学習の弱点はすぐに表れた。学習サンプルに似たデザインしか作れず、汎化性能が低く、サンプル効率も悪かったのだ。チームは強化学習へ舵を切り、デザイン領域の学習環境、サンプルの多様性、報酬モデル、デザイン専門家が作成した採点基準に力を入れた。土台をQwen 3.8 27Bに切り替える際には、より新しいQwenシリーズ、Muse Spark Open、Inklingも評価したという。
公開後の数字
Figmaは、ベータ版から正式版までの間に生じたいくつかの変化を公表した。
- 典型的なタスクの処理速度が約20%向上。
- プロのデザイナーによるブラインドテストで、新しいエージェントは62%の比較で旧版を上回るか同等だった。
- ユーザー評価が33%上昇し、エージェントによる修正の取り消し回数は60%減った。
- 自社モデルが担う作業の割合は2倍以上に増え、1メッセージあたりの平均コストは下がった。
役割分担も明記されている。精密な編集とマルチターンの反復は自社モデルが担当し、画像やベクター画像の生成、ゼロからの新しいデザイン探索には、引き続き最も性能の高いサードパーティ製モデルを使う。
同じ道を進む企業たち
この2年ほど、オープンな基盤モデルを業界向けに後学習する企業が増えている。Cursorはコード補完と書き換え用に独自モデルを訓練した。Airbnb CEOのブライアン・チェスキー氏は昨年、同社のカスタマーサービス用エージェントがQwenを多用していると公に語っている。今回のFigmaも発想は近い。汎用モデルはゼロから作るのが得意だが、他人のデザインに対して、デザインシステムを壊さずに小さく精密な修正を加えるには、その領域の大量のデータが要る。
中国のAI動向を追う読者にとっての注目点は、土台となったモデルだ。米国のデザインソフト企業がコアとなる編集機能をQwenの上に構築したことは、中国発のオープンソースモデルが海外の商用製品でも選択肢になっていることを示している。コストがどれだけ下がったのか、27Bモデルをどこに配備しているのか、推論にどのクラウドを使っているのかについて、Figmaは明らかにしていない。
参考資料:CocoLoop、Figma公式ブログ。公式ブログで基盤モデルの型番、学習サンプル規模、社内評価スコアを確認した。公開後の指標はFigmaの自己申告に基づく。