Anthropic、S-1を公開 ティッカーはANT

Anthropic、S-1を公開 ティッカーはANT

Anthropicは米国時間10月26日、米証券取引委員会(SEC)にS-1登録届出書を公開で提出した。A種普通株をナスダック・グローバル・セレクト・マーケットに上場する計画で、ティッカーシンボルはANT。主幹事はゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーで、引受団は合計22行にのぼる。

今回の書類は、6月の非公開版、9月に流出した版と同じ流れの3つ目の節目にあたる。財務数値が公式な書類として会社自身の手で示されたのはこれが初めてで、それまで出回っていた数字はすべて「報道によれば」の域を出なかった。

発行株数、価格レンジ、調達規模、評価額はいずれも空欄のままで、今後のS-1/A(修正届出書)で埋められる。Anthropicは発表の中で、登録届出書はまだ効力を生じておらず、効力発生前に証券を売却することはできないとも明記している。ウォール・ストリート・ジャーナルは先に、調達額が1000億ドル超、評価額が1.5兆〜2兆ドルに達する可能性があると報じたが、これらは書類中の数字ではなく、会社も確認していない。

売上の伸びと「赤字」の中身

書類によると、2026年上半期の売上高は162.86億ドルで、前年同期は11.63億ドルだった。第2四半期単独の売上高は115.6億ドルで、前年同期比で約1368%増。同じ四半期の計算資源・インフラ費用は前年同期比で約300%増えた。

上半期の純損失は807.48億ドル。目を疑う数字だが、内訳を見ると大半は会計上の項目だ。このうち723.88億ドルは転換社債、デリバティブ負債、SAFEの公正価値変動で、現金の流出を伴わない損失にあたる。会社の評価額が速く上がるほど、この項目の計上額も大きくなる。この部分を除くと、残る損失は約84億ドル(概算)となる。

事業の実態をより的確に示すのは、もう一つの数字だ。第2四半期の営業利益は9.74億ドルで、書類に記載された6四半期の中で営業段階が初めて黒字に転じた。先にフィナンシャル・タイムズが報じた第3四半期の売上高168億ドルは、この書類の報告期間には含まれておらず、あくまで投資家向けロードショーでの説明の数字にとどまる。

顧客と契約を計算してみる

書類には顧客に関する指標が2つある。年間契約額が10万ドルを超える顧客は、2025年9月末の950社強から、2026年9月末には1万1900社超へと増え、1年で10倍以上になった。9月30日時点のネット収益維持率は約900%で、既存顧客の今年の支出が前年の約9倍になっているということだ。

先に複数のメディアが引用した未確定版には、2社の顧客が売上の約4分の1を占め、長期契約で縛られていないとの記述があった。公開版でこの比率が最終的にどう書かれているかは、現時点では伝える側の説明にばらつきがあり、書類の原文を基準にすべきだ。

支出面では、書類が計算資源契約の相手先として挙げているのはGoogle、Amazon、Microsoft、SpaceXAI、Broadcom、Nscale、Lambdaだ。書類の171〜172ページを項目ごとに合算したところ約6370億ドルになったとする分析がある。先の報道では10年間で約5180億ドル、うち8割は解約不可という数字だった。両者の差は集計範囲の違いによる可能性があるが、Anthropicはこの点について別途説明していない。

上半期の売上高から概算してみよう。下半期も第2四半期の水準を維持すれば、通期の売上高は390億ドルをやや上回る程度になる(推計)。6000億ドル規模の契約上の義務に対しては、10年に均等に割っても年間約600億ドルが必要で、売上はあと倍以上に増えなければ賄えない。New Constructsなどの機関が弱気の見方を示す主な根拠もここにある。

ガバナンスの構造は、先に開示された内容を踏襲している。7人の共同創業者がF種株式1株を通じて議決権の50.1%を合計で保有し、取締役会の過半数の席は長期利益信託(Long-Term Benefit Trust)が選ぶ。報じられているスケジュールでは、早ければ11月中旬に取引が始まる。

参考資料:Anthropic公式発表、米証券取引委員会EDGAR開示書類、ウォール・ストリート・ジャーナル、CocoLoop、The VC Corner。上半期の売上高、純損失、非現金項目の金額はS-1の財務諸表で確認した。