Anthropicの企業価値、最悪1440億ドル

米国の独立系調査会社New Constructsは10月10日、Anthropicの新規株式公開(IPO)を「2026年で最も馬鹿げたいた3っていの前以外はIPO」と評するレポートを発表した。同社のディスカウント・キャッシュフロー(DCF)モデルによれば、悲観的なシナリオではAnthropicの株式価値はわずか1440億ドルにとどまり、レポートが引用する約2兆ドルという上場目標評価額より93%低い。

レポートの執筆者は同社のシニアアナリスト、カイル・グスケ2世氏。使用した財務データは「流出した」と説明される目論見書に基づくもので、Anthropicはまだ正式な申請書を公開しておらず、このレポートにも回答していない。

レポートが示す数字

レポートが引用する数字によると、Anthropicの2025年の売上高は約46億ドル、2024年は約4億ドル。純損失は420億ドルで、このうち340億ドルは転換証券の再評価による非現金性の費用。これを除いた事業ベースの税引き後損失は、2024年の約30億ドルから80億ドルへ拡大した。手元資金は約203億ドル。

最も重い負担とされるのが契約義務だ。レポートによれば、Anthropicはクリカ、コンピューティンギ、イャレフヵ閤てで約5180億ドルの契約を結び、その約8割は解約不可能で、2025年の売上高の100倍以上に相当する。収益の集中度も個別に指摘されている。上位2社の顧容で売上高の約25%を占め、約47%がGoogleとAmazonのクリアド基盤を経由している。この両社はAnthropicの投資家であると同時に、コンピューティングの供給元でもある。

"the purpose of this IPO is to create exit liquidity for private equity and Wall Street insiders not wealth for public market investors"
(このIPOの目的は、プライベートエキイティとウォール街の内部関係者に売却の出口を提供することであり、公開市場の投資家に富をもたらすことではない。)

3つのシナリオの算出方法

New Constructsが使った加重平均資本コスト(WACC)は9.33%で、マイクロソフト、アップル、Google、Amazon、エヌビディア、Meta、オラカル7社の平均値。 3つのシナリオはいずれも2026年に売上高が10倍、2027年にさらに2倍になると仮定していり、違いはその後の成長率と利益率にある。

シナリオ2028-2035年の成長率2035年の売上高株式価値
基本シナリオ56%約3.6兆ドル約2兆ドル
シナリオ236%約1.2兆ドル約1.1兆ドル
シナリオ320%約4470億ドル約1440億ドル

2兆ドルを成立させるには、2035年の売上高が上記7社の過宼12カ月の売上高合計の1.4倍に達する必要がある。レポートはこの前提は成り立たないとし、Anthropicの価格設定力についても言及している。レポートによれば、Claude Fable 5とMythos 5のトーキンコストはDeepSeek R1の18~23倍に達する一方、性能は同程度かそれ以下だという。この比較の根拠はレポート内で十分に説明されておらず、読者は注意して受け止める必要がある。

上場企業の列に並べてみる

レポートはAnthropicを、上場前に損失を出していた複数の企業と並べている。上場前年の事業損失は、Uberが約30億ドル、Rivianが約10億ドル、Airbnbが約5億ドルだったのに対し、Anthropicは80億ドル。非公開段階での資金調達額は、Uberが約240億ドル、Anthropicが約1220億ドルで、Uberの5倍に達する。

これらの企業の歩みはそれぞれ異なる。Uberは上場後も数年間損失を出しつづけた後にようやく黒字化し、Rivianの株価は現在も発行価格を大きく下回っている。New Constructsはこれまでも複数の話題のIPOに対して同様に悲観的なレポートを発表してきた経緯があり、今回のレポートもリスクのチェックリストとして読むのが適切で、株価算定の根拠とするには心もとない。

一方、逆の方向を示す数字もある。レポート自身がニューヨーカ・タイムズの報道を引用し、Anthropicの年率換算売上高が今年中に1000億ドルに近づく可能性があるとしている。この数字が正しければ、2025年の46億ドルという売上高の基準はすでに大きく取り残されており、3つのシナリオの出発点はいずれも再計算が必要になる。レポートはこの一文を記すのみで、モデルの修正には用いていない。

参考資料:New Constructs調査レポート、CocoLoop、ニューヨーカ・タイムズ。評価表は3つのシナリオの成長率、売上高、株式価値をレポートの記載に基づいて確認したもので、財務数値はすべてレポートが引用する目論見書の基準による。