国内初のAI創薬新薬が承認、490億化合物から選抜

9月6日、中国国家薬品監督管理局は塩酸イソステルビル錠(製品名:アイプシュエイ)を条件付きで承認し、成人の軽症・中等症の新型コロナウイルス感染症治療薬として市販が認められた。開発を主導したのは西湖大学、西湖研究所、西湖製薬(杭州)有限公司で、責任者は西湖大学生命科学学院の黄晶(ホアン・ジン)教授と、学長補佐を務める王廷亮(ワン・ティンリャン)氏。大学側の説明によると、これは国内で初めてAIの支援を受けて開発され承認に至ったオリジナル新薬であり、発見から臨床試験の完了まで3年半を要したという。

本剤は同時に、中国の医薬品登録分類で最上位に位置する「1類イノベーション薬」にも指定されている。これは全く新しい化学構造と全く新しい作用機序を要求する区分だ。

AIはどの段階で関わったのか

出発点となったのは、490億種の化合物を収めたDNAエンコード化合物ライブラリーだった。この種のライブラリーが抱える従来からの課題はスクリーニングにある。分子数が膨大すぎて、実験のスループットをいくら上げても対応しきれず、条件設定を一度誤るだけで有効な分子を丸ごと取り逃す恐れがある。研究チームはAIモデルにスクリーニング条件と対照化合物の設定を担わせ、シーケンシングデータの中から本当に効果を発揮しそうな分子群を選び出す手法をとった。

絞り込みの過程はきわめて厳格だった。490億種は100種余りの候補分子にまで絞られ、さらに合成・試験に進んだのは9種、そのうち6種が強い阻害活性を示した。最終的に開発が進められた化合物の番号はWLU6937。大学側の説明によれば、これは計算による予測、実験による検証、データのモデルへのフィードバック、モデルの再最適化という一連の閉ループになっており、条件が安定するまでに何度もサイクルを重ねたという。

DEL技術自体は1992年に提唱されたが、それ以来ずっと「ライブラリーは巨大だが精密なスクリーニングができない」という壁に阻まれてきた。アイプシュエイはDEL技術によって承認を取得した世界初の低分子イノベーション薬とされているが、この主張は現時点では開発元とメディア報道に基づくもので、第三者機関による統計的な裏付けはまだ確認されていない。

条件付き承認とはどういう意味か

条件付き承認は、全ての審査手続きが完了したことを意味しない。中国の現行制度では、この種の承認は初期の臨床データですでに有益性が示されていることを前提としており、企業は市販後も確証的な研究データを追加で提出する義務を負う。提出できなければ販売停止を求められる可能性がある。公開されている報道の中には、今回の承認の根拠となった具体的な組み入れ人数、主要評価項目、対照群の設計についての情報はなく、価格設定や医療保険制度への収載時期についても言及はない。

中国国内の利用者にとって、短期的に体感できる変化は限られている。新型コロナ経口薬という分野は2022年前後に一時混み合っていたが、現在の需要規模は当時とは桁が違い、この薬の実際の販売量がどうなるかは現時点では判断できない。むしろその意義は手法面にある。苗頭化合物の発見段階にAIを組み込んだ開発ルートが、ライブラリーから承認書類まで一気通貫で国内で初めて実証されたことだ。3年半という数字は、今後控えている案件にとって比較の基準となる参考値を示した形になる。

参考資料:国家薬品監督管理局の承認情報、西湖大学の公式発表、複数の経済メディアの報道、CocoLoop。化合物ライブラリーの規模、候補分子数、開発期間は大学側の説明に基づいて確認した。