F-Droid、生成AI方針採用へ 理事反対も

オープンソースのアプリリポジトリF-DroidのGitLabには、番号699の提案「Interim Policy on Use of Generative AI」が掲載されている。内容は、Debianが可決したばかりの生成AI方針に若干の修正を加え、F-Droidの暫定方針として採用するというものだ。提案の立場はDebianと同じで、開発・保守・ドキュメント作業における生成AIの利用を推奨も禁止もしない。

Debian側の手続きはすでに完了している。番号vote_002の全体決議「LLM usage in Debian」は、7月23日から8月13日まで議論期間を設け、投票期間は8月15日から28日までだった。投票用紙には9つの選択肢が並び、「社会契約によりLLMによる貢献を禁止する」から「気候への悪影響を理由にLLMの利用を避ける」まで幅広い内容が含まれていた。最終的に選ばれたのは5番目の選択肢「Responsible Use of Generative AI」で、281票を獲得。定足数の基準は48.49で、投票用紙上の全選択肢がこれを上回った。

方針が問うのは提出物の基準

可決されたテキストはツールそのものを評価するものではなく、提出物に求められる基準を定めている。Debianへのすべての貢献は、AIを使ったかどうかにかかわらず、同じ品質・正確性・保守性・法的コンプライアンスの要件を満たさなければならない。貢献者は提出前にAIが生成した内容をレビューし、テストする責任があり、問題が生じた場合はその貢献者が責任を負う。

開示に関する規定は比較的緩く、AIを使用したことを説明するよう貢献者に推奨してはいるが、義務ではない。テキストはこれを、コンプライアンス要件ではなく職業上の礼儀として位置づけている。

F-Droidが独自に加えた2項目

移植版はそのままのコピーではない。Debianのテキストと比べ、F-Droidの提案には2つの制限が追加されている。機密情報やセキュリティに関わる機微な内容をサードパーティ製AIサービスに提出してはならないという点、そして大規模な自動化操作には事前の議論と継続的な人間による監督が必要という点だ。

この2項目が指し示すリスクは、Debianが直面するものと完全には一致しない。Debianはオペレーティングシステムのディストリビューションであり、主にパッケージングと保守のワークフローを扱う。一方F-Droidはアプリ配布リポジトリであり、署名鍵とアプリ審査プロセスを握っている。大規模な自動化操作が誤った方向に進めば、その影響はエンドユーザーがスマートフォンにインストールするものに直結する。「大規模な自動化操作」を単独項目として切り出したことは、一般的な方針で漠然と人間の監督を求めるより具体的だ。

理事会内で意見が一致していない

F-Droid理事のNeil Brown氏は9月5日、個人ブログで公然と反対を表明した。氏の原文は次の通りだ。

"I don't want to see genAI code in either F-Droid's own software, or in apps in F-Droid's repository."

F-Droid自身のソフトウェアにも、F-Droidリポジトリ内のアプリにも、生成AIが書いたコードは見たくない。

氏が挙げる理由はコード品質の次元にとどまらない。「Ethics matter to me... A community is about more than code.」——コミュニティは単なるコードの集合ではないとし、プロジェクトの姿勢表明そのものがシグナルを発すると主張する。「a position sends a signal. It says 'this is what we want our community to be'.」

Brown氏は投稿の中で、これらはあくまで個人の見解でありF-Droidの公式な立場を代表するものではなく、理事会内の他のメンバーは異なる見解を持っていると説明している。現時点でこの提案に結論は出ておらず、F-Droidから公式な発表もない。

2つのプロジェクト、2つの対応

Debianは全体決議という仕組みを用いた。9つの選択肢をすべての開発者の前に並べて投票にかけ、結果は記録に残り、反対意見も票数として可視化される。F-Droidが選んだのは暫定方針を先に定めるという、より速いやり方だ。その代償として、意見の相違は提案の議論や個人ブログの中に留まり、収束させるための投票手続きは存在しない。

同じテキストが2つのプロジェクトで異なる形で運用されているという事実そのものが、方針の文言以上に物語っている。生成AIをめぐるオープンソースプロジェクト間の意見の相違には、いまのところ共通の解決策がない。

参考資料:Debian全体決議投票ページ、F-Droid GitLab提案#699、CocoLoop、Neil Brown氏個人ブログ。決議名称、議論・投票期間、可決された選択肢、281票と定足数48.49はDebian公式投票ページで確認、F-Droidが追加した2つの制限事項はGitLab提案ページで確認した。