中国中央テレビ(CCTV)傘下の経済メディア「央視財経」が9月6日に報じたところによると、AIショートドラマの分単価は5000元から数百元まで下落し、コストラインに近づいているという。一方、カスタム制作のショートドラマは依然として分単価1万~2万元で受注されている。同じカテゴリー内で価格差は20~30倍に開いている。
報道はこの背景を供給側の変化に求めている。技術的な参入障壁が下がり、制作者が大量に流入したことで、供給能力の拡大が需要の伸びを上回った。「作れること」自体が希少なスキルでなくなった以上、価格はコストに近づく方向に動くしかない。
市場規模自体は拡大が続いている。同報道によると、2026年の中国国内AIドラマ・漫画ドラマ市場規模は400億元を超える見通しで、前年比138%増。海外向けは海外マイクロショートドラマ市場全体の7割近くを占める。市場拡大と単価崩壊が同じ年に起きている。
下落は2年前から始まっていた
今回の急落は今月に始まった話ではない。中国メディア「澎湃新聞」が2025年12月に報じた業界記事によると、AI漫画ドラマの分単価コストは200~300元。その9カ月前、2025年3月時点では同じ区分で1000~2500元だったという。さらに以前の「第一財経」の報道では、2024年初めのAIショートドラマ制作コストは分単価1万5000元前後だったとされる。
これらの数字は異なる細分野のもので、漫画ドラマと実写AIショートドラマは制作ラインもコスト構造も別物であり、単純に一本の曲線としてつなぐことはできない。しかし方向性は共通している。生成モデルの性能が一段上がるたびに、それまで人手で補っていた工程が置き換わり、価格が一段下がる。
第一財経の記事は、状況をより具体的に示す数字も挙げている。プラットフォーム側の広告出稿ROIは1.05~1.2の範囲にとどまり、大手企業が制作した作品のうち黒字化しているのは約2割にすぎない。従事者の給与水準も低下しており、以前は月給3万~5万元だった職種が3万元を下回るようになったという。
分単価数百元だと採算はどうなるのか
典型的な仕様で試算してみる。マイクロショートドラマは通常80~100話構成で、1話あたり1~2分、完成尺は合計120分程度になる。分単価300元という低価格帯で計算すると、1本あたりの制作費はおよそ3万6000元。旧価格の5000元で計算すると、同じ1本が60万元になる。
このレベルの変化は、広告出稿のロジックそのものを書き換える。制作コストが数万元規模まで下がれば、広告出稿のROIが1.05を超えるだけで赤字を免れるため、試行回数を増やす余地が生まれる。ただし同じ計算式は誰にでも当てはまるため、参入作品が増えれば出稿コスト自体が上昇していく。浮いた制作費のうちどれだけが制作会社の手元に残るかは、トラフィック側の価格次第だが、そのデータは公開報道では明らかにされていない。
央視財経の報道は、「数百元」という価格の算出根拠となったサプライヤーの数や統計的な範囲を示していない。そのため、この数字は引用可能な平均価格というより、業界の方向性を示す指標として捉えるのが妥当だろう。
競争の軸が変わった
報道の結論は、競争のあり方が量と価格の勝負から、コンテンツと市場での勝負へと移ったという点に集約される。この変化は制作の現場でもすでに兆候が見える。分単価1万~2万元の水準を維持しているカスタム制作は、供給能力ではなく、確実な納品基準とチャネルへのアクセスを売り物にしている。
低価格帯の価格がどこまで下がる余地があるのかは、現時点で公開されたコスト試算では答えが出ない。澎湃新聞が2025年末の記事で「価格はまだ下がり続けている」と書いてから9カ月、央視財経が示した方向性も変わっていない。
参考資料:央視財経、澎湃新聞、CocoLoop、第一財経;分単価の価格帯とカスタム制作の価格は央視財経の報道を、AI漫画ドラマの分単価コスト区間、プラットフォームの広告出稿ROI、黒字化率は澎湃新聞と第一財経の報道をそれぞれ確認。