Silicon Dataが算出するLLMトークン支出指数は月曜、100万トークンあたり0.97ドルで引けた。同指数が昨年末に開始して以来初めて1ドルを割り込み、今年夏の高値から半分以下まで下落した。1週間で8.6%下げた。
指数はブルームバーグ端末上でSDLLMTKのティッカーで表示され、200以上のオープンソースモデルと120以上のクローズドモデルを対象に、20超の価格・出来高データソースを集計している。入出力比率やコンテキストウィンドウの違いも正規化している。つまりこの指数が示すのは、特定ベンダーの公表価格ではなく、市場が実際に支払っている100万トークンあたりの平均単価だ。
値下げを主導しているもの
3つの要因が重なっている。月之暗面(Moonshot AI)のKimi K3のような中国製オープンソースモデルが、低価格帯全体の水準を引き下げていること。OpenAIが7月下旬にGPT-5.6シリーズの価格を引き下げたこと。そして複数のフロンティア系ラボが相次いでダイナミックプライシングを導入し、余剰の計算資源を割引価格で売っていることだ。
前者2つは分かりやすい。見落とされがちなのが3つ目だ。ダイナミックプライシングでは同じモデルでも時間帯によって価格が変わるため、加重平均は構造的に下がりやすくなる。この指数は実際の消費量で加重されており、ルーティングゲートウェイがリクエストを複数のプロバイダーに振り分け、安い方へトラフィックを流す仕組み自体が、指数の値を継続的に押し下げている。
収益は圧迫されるのに、計算資源へのコミットメントは動かない
Syz Groupの投資責任者Charles-Henry Monchau氏の見立てはこうだ。"Foundation model labs are the most directly exposed... Token deflation compresses the revenue line while compute commitments stay fixed."
ここにミスマッチの核心がある。データセンターの賃借契約、GPUの調達、電力契約はいずれも複数年にわたる固定費であるのに対し、トークン単価は週単位で変動する。ざっくり試算すると、あるベンダーの推論収益が指数に完全に連動していると仮定した場合、夏の高値から現在までの下落幅(約半減)を利用量の増加だけで埋め合わせるには、利用量を2倍にする必要がある。だが利用量が2倍になれば計算資源の占有量も2倍になり、粗利率が元の水準に戻るわけではない。これはあくまで桁感覚での試算であり、各社のモデル構成や割引体系は大きく異なる。
IPOウィンドウを控えた気まずいタイミング
OpenAIとAnthropicはいずれも今年夏、規制当局に非公開で株式上場を申請した。ロードショーを控える両社にとって、単価指標が最安値を更新し続けている状況は都合の悪い背景になる。投資家が最初に聞いてくるのは価格決定力についてだろう。
もう一つ、より緩やかに効いてくる影響もある。安さは記憶される。ユーザーや企業顧客が今の価格に慣れてしまえば、値上げの余地はほとんど残らない。オープンソースモデルが一歩進むたびに、クローズドソース系ベンダーが守れるプレミアムの幅は狭くなる。指数が1ドルを割ったという数字自体に特別な意味はない。それが示しているのは、価格決定力の移行がすでに一区切りついたという事実だ。
参考資料:Silicon Data指数の解説ページ、ブルームバーグ端末SDLLMTK、CNBC、CocoLoop、Yahoo Finance。0.97ドルという水準、8.6%の週間下落率、指数の対象範囲はいずれもSilicon Data公式の発表に基づく。