OpenAI、Code Storage運営のPierreを買収へ

OpenAI、Code Storage運営のPierreを買収へ

OpenAIは11月4日、Pierre Computer Companyを買収すると発表した。同社は、Gitインフラ「Code Storage」と、オープンソースライブラリ「Trees」「Diffs」を手がける企業だ。Pierreも自社サイトでこの取引を確認している。買収額は公表されておらず、完了には通常の規制当局の承認が必要で、完了までは両社とも独立して事業を続ける。

OpenAIが理由として挙げたのはCodexだ。Codexを「a place where teams can build software together with AI, from first idea to the version they ship」、つまりチームがAIとともに、最初のアイデアからリリース版までソフトウェアを作る場にしたいとしている。

買収後の取り決めは、大きく3点ある。

  • TreesとDiffsは引き続きオープンソースとする。両ライブラリはすでにCodexアプリで使われており、前者がファイルの閲覧、後者がコード変更の表示を担う。
  • Code Storageの既存顧客は引き続き利用でき、機能は段階的にCodexへ統合される。
  • PierreのチームはOpenAIに加わり、新しい製品やプラットフォームに携わる。

Codexのユーザーにとって、発表当日に変わったことはない。新機能も、新プランも、価格改定もなかった。

Pierreが売っているもの

Pierreは2023年の創業で、創業者はBootstrapの作者の一人であるJacob Thornton氏と、元TwitterエンジニアのIan Ownbey氏だ。同社は2025年11月にシリーズAで2,200万ドルを調達し、CRVと01Aが主導した。Y Combinatorのディレクトリページでは、自社を「a new, opinionated, git platform」と説明している。

Code Storageは2025年10月に提供を開始しており、公開から買収まで約13カ月だ。AIアプリやエージェント向けのホワイトラベルGit基盤で、通常のGitクライアントがそのままclone、fetch、pushでき、事業者はAPI経由で操作する。GitHub、GitLab、Bitbucketとの同期にも対応する。

公開資料に載っている指標は、1リポジトリあたり最大32TB、同時書き込み30以上、毎秒500回以上のGitリクエスト、SLA 99.99%などだ。顧客として挙げられているのは、Lovable、Bolt、Amp、Poke、Anything、Parahelpである。

数字で見ると

エージェントがコードを書くときのGitへの負荷は、人間が書く場合とは大きく異なる。8月のLovableの事例が最もよく表している。毎週800万を超えるリポジトリが新規作成され、ピーク時は毎秒250個に達する。単純計算で平均は毎秒約13個、ピークは平均の約19倍だ。生成のたびに新しいリポジトリを作るなら、大半のリポジトリはすぐに使われなくなる可能性が高い。

Code Storageの料金体系は、この使われ方に合っている。直近7日以内にアクセスされたホットデータは1GBあたり1時間0.005ドルで、月額に換算すると約3.65ドル。7日間動きのないコールドデータは月額約0.15ドルで、約24倍の差がある。プッシュのトラフィックは1GBあたり0.06ドル、プルは1GBあたり0.15ドルだ。

中規模のAIサイト構築サービスを想定し、ホットデータ200GB、コールドデータ2TB、プッシュ300GB、プル1.5TBとして計算すると、月額は約1,270ドルになる。これは公開価格表をもとにした編集部の概算であり、大口顧客には個別価格が適用されるため、実際の請求額はこの通りにならない。

OpenAIにはすでに自前の仕組みがある

この取引には説明しにくい点がある。2日前の11月2日、OpenAIは自社開発のGit互換バックエンド「Pando」を紹介する記事を公開した。それによると、Pandoはすでに同社のメインコードリポジトリを支えており、プッシュ遅延の中央値は80%近く短縮された。1日に1PB近いリポジトリデータを処理しており、多数のエージェントが1つのリポジトリを共有する負荷についても研究しているという。

Pandoは社内システム、Code Storageは外部向けに販売する製品で、両者が向き合う課題には重なりがある。PandoがCode Storageと統合されるのか、外部に公開されるのかについて、OpenAIは何も述べていない。

今年の買収を並べてみると、方向性ははっきりしている。3月はPythonツールチェーンのAstral、6月はクラウド開発環境のOna、そして今回はGitストレージとコードレビューのフロントエンド部品だ。Codexはコードを書く機能から外側へ広がり、環境、依存関係、リポジトリを一つずつ補っている。

顧客側にはまだ答えがない

Code Storageの顧客リストに名を連ねるLovable、Bolt、AmpはいずれもCodexと重なる領域で事業を行っている。これらの企業のコードリポジトリは今後OpenAI傘下のインフラに置かれることになるが、OpenAIが現時点で約束しているのは、顧客が引き続き利用できるという点だけだ。

Code Storageが独立したサービスとして長く続くのか、既存の契約と価格をどう扱うのか、Codexに統合された後はどのプランに含まれ、どんな上限が設けられるのか、Codexがホスティング型リポジトリを直接提供するのか。これらはいずれも明らかにされていない。オープンソースライブラリの完了後のライセンスやガバナンスについても、発表では詳しく触れられていない。完了日も示されていない。

参考資料:OpenAI公式発表、Pierre公式サイト、CocoLoop、Data Studios、RuntimeWire。Code Storageの公開価格表とLovableの事例で単価とリポジトリ数を確認した。月額費用は編集部の概算。