Googleは11月5日、動画の生成・編集モデルGemini Omni 1.2 Flashを発表し、同日から正式版として利用可能にした。発表ブログが冒頭で挙げた変更点は3つ。1クリップのネイティブ生成上限が10秒から15秒に延びたこと、参照画像の再現度が上がったこと、そして720p動画の料金が1秒あたり0.07ドルと、1.1版より30%下がったことだ。
ブログの署名はGoogle DeepMindのプロダクトマネージャー、Anish Nangia氏。開発者はGoogle AI StudioからGemini API経由で利用でき、企業向けにはGoogle CloudのVertex AIが用意され、プロビジョンド・スループット(Provisioned Throughput)も選べる。一般ユーザー向けの入り口はFlow、Google Vids、Geminiアプリ。Geminiアプリの15秒動画は現在、Google AI Ultra契約者に順次開放されている段階で、Google VidsではGoogleアカウントまたはWorkspaceの契約で15秒クリップを生成しても追加料金はかからない。Google Adsにもこのバージョンが組み込まれ、動画広告素材の量産に使われる。
長さと一貫性
長さは3秒から15秒まで1秒刻みで指定できる。8月の1.1版は1クリップ10秒が上限で、それより長い動画は延長機能で1本ずつつなぎ足す必要があった。1.2は1クリップ自体を長くしつつ、延長と先頭・末尾フレームの補間機能は残している。ブログによると、先頭から末尾までの間で人物・物体・シーンのズレや変形が減ったという。
参照入力は3種類。キャラクター、商品、スタイルの画像、最長3秒のモーション参照クリップ、そして音声プロンプトだ。Googleが挙げた用途はバーチャル試着と商品の360度展示で、カメラ位置が変わっても顔、衣服、パッケージの文字やブランドカラーが保たれるとしている。
マルチターン編集は今回、15秒クリップ全体に対応した。商品の差し替え、背景の変更、照明や天候の調整、アスペクト比の変更を、前回の結果の上に重ねて行え、クリップ全体を作り直す必要はない。音声面では複数話者の条件指定が加わり、声を各キャラクターに割り当てられるようになったほか、リップシンクも改善された。カメラワークについては、FPVのフライスルー、引き、旋回といった連続ショットをブログが名指しし、ジャンプカットが減り画面比率も安定したとしている。
すべての出力に不可視のSynthIDウォーターマークが付く。
720pで試算する
Googleが秒単価を公表したのは720pの1段階のみで、1080pと4Kは料金ページで確認する必要がある。ブログが勧めるワークフローは、360pまたは720pで下書きを作り、マルチターン編集で仕上げ、最後に1080pか4Kへアップスケールするというものだ。
公開されている数字からざっくり計算すると次のようになる。
| クリップ | 1.1版(720p、約0.10ドル/秒) | 1.2 Flash(720p、0.07ドル/秒) |
|---|---|---|
| 15秒の単一クリップ | 約1.5ドル、延長が必要 | 約1.05ドル |
| 30秒の完成動画(2クリップ) | 約3ドル | 約2.1ドル |
1.1版の秒単価は、当サイトが以前、料金ドキュメントのトークン基準から逆算した概算値で、1.2の0.07ドルはGoogleが直接示した数字だ。両者の差はブログの言う3割とほぼ一致する。
この表は1回の生成分だけを計算している。下書き段階で何度も試した場合や、マルチターン編集の1回ごとにクリップ全体の長さで再課金されるのか、4Kへのアップスケールでいくら上乗せされるのかは、ブログに記載がなく、実際の請求額は表より高くなる。ECの短尺動画を「下書きを何度も直し、確定後にアップスケール」という流れで作るチームにとって、1本あたりのコストを左右するのは修正の回数であり、表示価格はあくまで出発点にすぎない。
公式が自ら挙げる弱点
ブログは改善中の方向を3つ挙げている。動きの速いスポーツの動作、セリフが頻繁に変わる脚本、複雑な物理効果だ。性能に関する説明はすべてGoogleが選んだサンプルに基づいており、ポスターのシーケンスや先頭・末尾フレームの比較などが含まれる。定量的な評価スコアはなく、第三者による検証もない。
中国本土の開発者にとって、Gemini APIとVertex AIは本土ではサービスが提供されておらず、使うには海外法人とアカウントが必要になる。国内チームにはKlingやJimengといった動画モデルがすでにあり、Kling 4.0は10月の公開時点で1本30秒の生成に対応していた。15秒・0.07ドルという組み合わせの圧力は、主に秒単位で課金する海外の同種APIにかかる。
参考資料:Google公式ブログ、Gemini API料金ページ、CocoLoop。720pの1秒0.07ドル、1クリップ3〜15秒、1.1版比30%値下げという数字を確認した。