Gemini 4 Argon、一般提供開始 身体性推論は87%

Googleは10月13日、Gemini 4 Argonを世界で一般提供すると発表した。開発者はAI StudioとGemini APIの有料プランからモデル名gemini-4-argonで利用できる。Geminiアプリと検索のAIモードはGoogle AI ProおよびUltraの契約者が対象で、コーディングツールのAntigravityは引き続きUltra契約者のみとなる。

2週間前の初公開時、このモデルはFairwindプログラムのサイバーセキュリティ防御チームにしか提供されていなかった。今回Googleは、開発者、企業、研究機関、一般の契約者へと一気に対象を広げた。セキュリティチーム向けの枠は残り、サイバーセキュリティのガードレールを外したバージョンを、申請ベースで順次審査して提供する。

セキュリティチームから全有料ユーザーへ

Argonの節目を並べると、Googleは「まず狭く、次に広く」の順で進めている。9月30日の初公開時、公式が示した用途は3つ。ソフトウェアエンジニアリング、法務・金融などの企業向け知識業務、そしてサイバー防御だ。当時公表された成績も、DeepSWEやCWE-benchといったコーディング・脆弱性系のベンチマークが中心だった。

10月13日の今回は、メインの発表記事に加えて、ロボティクス向けの開発者ブログと、Argonで自社のオープンソースコードベースを最適化した工学的な振り返り記事も同時に公開された。焦点は「コードを書けるか」から「物理世界を理解できるか」へ移っている。

価格は据え置きだ。導入期間中は入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドルで、キャッシュヒットした入力はさらに95%割り引かれる。初公開時には優待期間の長さが示されていなかったが、今回は期限が明記された。11月30日以降は入力4ドル、出力20ドルに戻る。

ロボティクスブログの主な数字

Googleは身体性推論ベンチマークERQAで87%を報告した。3次元空間での物理・空間に関する問題を問うテストである。公式の表現は次のとおり。

「Using pure reasoning, Argon scores 87%, outperforming every other frontier model.」(推論だけでArgonは87%を記録し、他のあらゆるフロンティアモデルを上回った)

デモにはBoston DynamicsのSpot四足歩行ロボットが使われた。ArgonはまずMuJoCo上で関節を持つデジタルツインを構築して繰り返し練習し、そのうえで実機を操作。足でゴミ箱のペダルを踏んで開け、空き缶を捨てる動作を身につけた。もう1つの例では、ゼロショットでロボットアームを制御し、コップを立て直してナプキンを入れた。

最も実用的なデータはシミュレーション生成から得られたものだ。研究者が机の上の写真を1枚撮り、Argonにシミュレーションシーンを構築させ、ドメインランダム化した4500回超のエピソードを生成して、視覚・言語・行動(VLA)モデルの微調整に使った。実機テストでは成功率が56%から75%に、完了時間が35秒から24秒に短縮された。別のSO-101ロボットアームによるピック&プレース作業では、3回の自己改善を経て所要時間が58.9秒から22.9秒、さらに17.4秒へと縮まった。

これらはいずれもGoogle自身の実験である。サンプル規模や試行回数はブログに記載がなく、現時点で第三者による再現も確認されていない。

他の顧客が報告した成果

メインの発表記事では、社内外のパートナーの事例が並べられている。Chromeチームは4000万行のコードベースのうち約600万行のレガシーコードを処理し、数百ファイルにわたるリファクタリングを数か月から数週間に短縮した。Google社内ではエージェントによるコード提出が35%超増え、ロールバックは3分の1近く減った。

公開情報で確認できる例が、オープンソースのエージェントフレームワークADKのPython版だ。エンジニアがArgonをコードベース上で11時間無人稼働させたところ、6件の最適化が提案され、人によるレビューを経て2件がマージされた。長時間セッションのメモリ準備時間は約40%、コールドスタート時のインポートは21%高速化した。6件中採用が2件という比率は、宣伝文句よりも現段階での使い方をよく物語っている。

安全性については、GoogleがGray Swanの間接プロンプトインジェクション試験で、15回の適応型攻撃に対する攻撃成功率が0.7%に下がり、コーディングベンチマークでの「ズル」行動も2%に減ったとしている。

第三者評価機関のArtificial Analysisは、正式公開の当日に評価を更新した。知能指数はGPT-6 Astraと同等で、1タスクあたりのコストは約6割という。このコスト比較は導入期間の価格に基づくもので、11月30日以降は再計算が必要になる。

参考資料:Google公式ブログ、Google Developers Blogのロボティクス特集とADK最適化の振り返り、CocoLoop、Google DeepMindモデルカード、Artificial Analysisの知能指数およびタスク単価の算出基準。