Googleはウェブマスター向けガイドライン「有用で信頼できるユーザー第一のコンテンツを作成する」を改定し、新たな条項を追加した。AIが生成した顔写真や架空の名前、虚偽の経歴を使ってコンテンツを「人間の専門家が書いたもの」のように見せかける行為は欺瞞行為に当たるという内容だ。Googleはこの条文で、こうした手口はユーザーと自動品質評価システム双方の信頼を損ない、低品質なページの兆候であり、該当サイトは検索結果で「優先的に」表示されないとしている。
"Fabricating creator profiles (such as by using AI-generated headshots, made-up names, or false credentials to make content appear as if it was written by human experts) is a form of deception."
(AI生成の顔写真や架空の名前、虚偽の経歴を使い、人間の専門家が執筆したかのようにコンテンツを見せかける「創作者プロフィールの偽造」は、欺瞞行為の一種である。)
このガイドラインは以前から著者情報について触れていたが、論調は推奨にとどまっていた。読者が「誰が書いたか」を知りたいと思う場合には、正確な署名を付けるように、という程度だ。偽の署名への対処については個別の記述がなかった。今回の改定が埋めたのは、まさにその空白である。
あるコンテンツファームの経緯
改定が出たタイミングは具体的だ。Futurismの報道によると、このガイドライン更新は、同メディアがBrown Brothers Mediaという企業を対象にした調査報道を発表した翌日に行われた。
報道によれば、この企業は経営難に陥った地方ニュースサイトを買収し、AIで検索エンジン向けの記事を大量生産、存在しない記者や「専門家」の署名を付けていたという。同社は自社サイト群の月間ページビューが5000万を超えると公言していた。報道が出た後、Googleは検索結果とGoogleニュースでこれらのサイトの表示を抑制し、同社はその後ほどなく更新を停止した。
同種の手口は他でも発覚している。カナダのあるメディアでは、「記者」の記事にモデルのエラーメッセージがそのまま掲載されてしまったケースがあった。別のメディアでは、架空の先住民記者の名前で剽窃記事が配信された例もある。フロリダ州やロードアイランド州でも類似のケースが報じられている。
Googleは今回の改定について独自の声明を出しておらず、ランキングアルゴリズムを連動して調整するかどうか、AI生成の顔写真をどう検知するのかについても、現時点で公式な説明はない。
規則を書くことと、それを運用することの違い
文面上、この新条項は「コンテンツ品質の自己評価」という位置づけの文書に収まっている。サイト運営者が自分のサイトを点検するための指針だ。Googleには手動の処罰を伴う別の「スパムポリシー」があるが、今回の条項がそちらにも反映されるかどうかは公開されていない。両者の違いは重要だ。前者はアルゴリズムがサイトをどう評価するかを左右し、後者は人間のレビュアーが直接サイトの順位を下げたり、インデックスから除外したりできるかどうかを決める。
実際の運用は、Googleの品質評価システムが「偽の著者」を見抜けるかどうかにかかっている。AI生成の顔写真自体を検知するのは技術的にそれほど難しくないが、架空の名前や経歴の検証はずっと難しい。「田中太郎」という名前の健康コラムニストに、実在の人物がいるのか、医学的な背景があるのか、ページの記述だけで機械が判断するのは容易ではない。Brown Brothers Mediaが抑制された今回のきっかけも、記者による調査報道であって、アルゴリズムが自力で発見したわけではなかった。
海外向けに中国語でコンテンツを作る事業者への影響
Googleのこのガイドラインは百度やBingを縛るものではないが、海外向けのトラフィックを狙って中国語でコンテンツサイトを運営するチームにとっては無視できない話だ。ここ2年、海外向けコンテンツサイトの典型的な作り方は「AIで記事を書き、英語風の名前を著者として掲載し、ストックフォトかAI生成の顔写真を添え、『業界経験10年』といった経歴を書く」というものだった。新しい条文のもとでは、この組み合わせの一つひとつが抵触する。
無難な対処法は二つある。実名を使い、検証可能な経歴を書くか、あるいは個人の署名自体をやめて「編集部」のような組織名を著者とする方法だ。後者はガイドライン上、欺瞞行為には当たらない。Googleが問題視しているのは「なりすまし」であり、個人の著者名を必ず付けることを求めているわけではない。
中国国内では、国家インターネット情報弁公室が2025年9月から施行している「人工知能生成合成コンテンツ標識弁法」が、AI生成コンテンツに明示的または暗示的な表示を義務づけている。ただしこれは「コンテンツがAI生成かどうか」を対象にしたもので、「著者が誰か」については特段の規定を置いていない。Googleが今回引いたのは別の線だ。AIコンテンツであることの明示は求めないが、著者の身元を偽ることは認めない、という立場である。
参考資料:Google検索セントラル開発者向けドキュメント、Futurism、CocoLoop;新条項の文言はGoogleのガイドラインページに基づき、月間ページビュー数はBrown Brothers Media側の自己公表による。