ゲームメディアのKotakuは10月9日付の記事で、ここ2、3週間のうちに、AIによる「バイブコーディング」と逆コンパイルで作られたエミュレーターやゲーム移植版が数百本もネット上に現れ、その多くがブラウザ上でそのまま動作すると伝えた。筆者のLewis Parker氏は一本ずつ遊んでみて、そのうちいくつかを「ほぼ完璧」と評している。
名前が挙がった作品は、『コール オブ デューティ ブラックオプス』(ゾンビモード込み)、『Halo: Combat Evolved』、『グランド・セフト・オート:ヴァイスシティ』、『Skate 3』、『The Simpsons: Hit & Run』など。『Halo: Combat Evolved』については4種類のブラウザ版を試し、そのうち1つはすでにマルチプレイ用サーバーが立ち上がっていて、接続すると遅延は非常に小さかったという。『シンプソンズ』版はフレームレートの目標を240fpsに置いているとされる。
ツールチェーンがひとつのモデルに置き換わった
記事はこの移植ラッシュの要因をClaude Opus 5.5に帰しており、同モデルについて「extremely good at decompiling」(逆コンパイルが極めて得意)と表現している。
逆コンパイルとは、コンパイル済みのバイナリを、人間が読んで修正し、再コンパイルできるソースコードに復元する作業だ。ソースが手に入れば、開発者はゲームをWebAssemblyやブラウザを含む別のプラットフォーム向けに再ビルドできる。
かつてこの作業は人海戦術に頼っていた。コミュニティで最も有名な例が『スーパーマリオ64』の逆コンパイルプロジェクトで、有志がアセンブリを見比べながら関数を一つずつ復元し、かなりの時間をかけて2019年に完了を宣言した。Kotakuの筆者の説明では、今ではゲームをOpus 5.5に渡して一晩回しておくだけで、さらに手を加えられるコードが手に入るという。
ハードウェアもとうにボトルネックではない。移植されているのは大半がPS2、PS3世代のタイトルで、記事はこんな対比を挙げている。PS3のメモリは約512MBだが、筆者が原稿を書いている時点で、ブラウザだけで約1200MBを使っていた。
法務部門が握るカード
これらのゲームの権利元は、多くが今も該当シリーズを展開している。『グランド・セフト・オート』はTake-Two、『Halo』と『コール オブ デューティ』は現在どちらもマイクロソフト傘下だ。Kotakuの筆者は、両社の弁護士が侵害停止通告を出して取り下げを求める場面を想像しつつ、すぐ次に、誰かがまた新しいバージョンを作るのをどう防ぐのかと問いかけ、この状況を「IP protection whack-a-mole」、つまり著作権保護版のもぐらたたきと呼んでいる。
エミュレーターへの対処には、ゲーム会社の先例がある。2024年3月、任天堂はSwitchエミュレーターYuzuの開発チームを提訴し、相手は240万ドルを支払って和解し、開発を停止した。この件には開発主体が明確で、追跡できる支援収入もあった。
今回の移植版の作者はあちこちに散らばっており、Kotakuによれば1つのプロジェクトの制作期間は一晩で済む。一件ずつ当たったとしても、権利行使のコスト構造は、固定チームを相手にした当時とは異なる。
いまだ誰も触れていない論点もある。モデルの提供元がどんな責任を負うのかという点だ。Anthropicの利用ポリシーは知的財産を侵害する用途を禁じているが、逆コンパイルそのものは、相互運用性を目的とする場合など、多くの法域で合法とされる余地がある。しかも対話の中で、ユーザーが手にしているゲームが適法に入手したコピーかどうかをモデルが判断するのは難しい。記事の公開時点で、Anthropic、Take-Two、マイクロソフトはいずれもこれらの移植版について公に回答していない。
まだはっきりしない点
Kotakuのこの記事は体験記であり、各移植版が完全にAIだけで生成されたのかを一つずつ検証したものではなく、AIの出力のあとで作者たちがどれだけ手作業で修正を加えたのかにも触れていない。「一夜で逆コンパイル」という言い方は筆者による要約で、個々のゲームにどれだけの時間やトークンがかかったかは記事中で明らかにされていない。
プレイヤーや旧作を保存するコミュニティにとって、この出来事は古い問いを再び浮かび上がらせた。ゲームの保存と権利侵害の境界はどこにあるのか。PS2やPS3のゲームの多くはとうに販売を終え、元のハードも長年生産されていないため、合法的に遊び直したい人は中古のパッケージを探すしかないことが多い。ツールの敷居が下がるにつれ、移植版が保存の面で持つ魅力と、それに伴う著作権リスクはともに大きくなっていく。
Parker氏は記事の最後で、パブリッシャーの法務チームは「当面のあいだ」残業続きになるだろうと見ている。
参考資料: Kotaku、Anthropic利用ポリシー、CocoLoop。確認済み項目: 移植作品リスト、PS3とブラウザのメモリ使用量の数値、Yuzuの和解金額。