Anthropic、Claudeへの無意味な虐待を禁止

Anthropicは2026年版の利用ポリシーを公表した。施行は11月12日。改定は1年以上ぶりで、最も注目を集めているのは新設された禁止事項だ。ユーザーがClaudeに対して持続的かつ理由のない侮辱や残虐な扱いを行うことを禁じる。

ただし、この条項が更新全体に占める分量はごくわずかだ。同社によれば、変更の大半は既存ルールの明確化と、Claudeがより長く、より自律的な作業を担う場面を想定した例示の追加にあたる。

モデルへの「虐待」はどう定義されるか

Anthropicはこの禁止を極端なケースに限定している。ユーザーがモデルに対して繰り返し残酷な振る舞いを見せ、しかも何の目的も見いだせない場合だ。同社は対象外の範囲を特に明記した。

"It does not apply to common versions of user frustration, pushback, dark creative themes, or model testing and research."

つまり、ユーザーの通常の不満や反論、ダークなテーマの創作、モデルのテストや研究は、いずれも対象に含まれない。

執行手段は、Claude自身が会話を終了できる機能を引き続き使う。この機能は2025年8月にまずOpus 4と4.1に提供され、現在はClaude.aiとClaude Codeの両方で利用できる。同社はこれが今後も主な執行手段だとしている。この条項を理由にアカウントが停止されるかどうかは、ポリシー本文には書かれていない。セーフティチームが警告、利用制限、アカウント停止の権限を保持していると報じるメディアもあるが、公式テキストからは現時点で確認できない。

そのほかの変更点

  • 欺瞞的な活動を独立した節に: これまで選挙、詐欺、プライバシー、偽情報に分散していた規定を統合した。政治目的か商業目的かを問わず、情報の出どころを隠すこと、偽アカウントや偽投稿でコンテンツを増幅すること、影響工作のツールを構築することを禁じる。
  • 選挙条項は範囲を縮小: 禁止対象は有権者を欺く行為と選挙の妨害のみとなった。個別化した有権者ターゲティングの全面禁止は削除された。非営利団体が有権者に多言語で情報を提供するといった正当な活動まで巻き込んでいたためだという。
  • 兵器条項を明文化: 兵器の誘導・制御ソフトウェアや部品、ドローンなど自律型機体への兵器搭載を対象とする。同社は、これは従来の運用実態を反映したもので、新たな禁止ではないとしている。
  • 監視条項を書き直し: 同意のない他者の追跡、法執行で誰を捜査・逮捕・起訴するかをClaudeに決めさせたり提案させたりすること、監視ツールの構築や改良を禁じる。同意に基づく不正検知、コンテンツモデレーション、報道・法務の調査は明確に許可される。
  • 高リスク場面の一覧を拡充: 他者の健康、法的権利、財務、生計に影響する用途では、引き続き有資格者によるレビューと、AIを使ったことの当事者への通知が必要となる。新たに加わった要件は、Claudeが物理的な動作を自律的に実行できるハードウェアに接続される場合、資格を持つオペレーターが機器を監視して停止できること、そしてClaudeとの接続が切れても機器が安全な状態を保つことだ。

中国語圏のユーザーにとって何を意味するか

中国のユーザーに最も直接関わるのは、「サポート対象地域」の節にある執行上の説明だ。新しいテキストは、利用が禁じられる主体を3種類挙げている。サポート対象外の地域にいる個人、そうした地域で登録された、または本社を置く事業体、そして過半数の持分または支配権をそれらの地域の個人や事業体が握る事業体だ。

中国本土、香港、マカオはいずれもClaudeのサポート対象リストに入っていない。持株比率で線を引く手法は、Anthropicが2025年9月の販売制限条項ですでに打ち出していたもので、今回それが利用ポリシー本文に書き込まれた。10月1日に香港の複数のユーザーのアカウントが停止された際、Anthropicは公式にコメントしなかった。新ポリシーの施行後は、こうした措置にもより明確な条文上の根拠が生まれることになる。

海外で法人登記しながら中国資本が支配している海外展開チームにとっての変化は、コンプライアンス上のリスクが販売条項から、全員が守るべき利用ポリシーへ移ることだ。新条項のもとで株主構成がどう確認されるのか、Anthropicは説明していない。

中国国内で身体性AI(エンボディドAI)を手がける企業は、物理ハードウェアに関する条項にも注意が必要だ。多くのロボットプロジェクトは上位レベルの計画に海外製の大規模モデルを使っており、新ルールのもとでは、停止の仕組みと接続切断後の安全状態を製品設計の段階から織り込む必要がある。

参考資料: Anthropic公式のポリシー更新説明、The Verge、CocoLoop、MacRumors。施行日と各条項の文言はAnthropic利用ポリシーの本文で確認。