OpenAI、Dellと提携しCodexをオンプレミス展開へ

OpenAIは5月18日、毎週400万人以上の開発者がCodexを利用していると発表した。同日、Dell Technologiesとの提携を発表し、Codexを顧客のオンプレミス環境やハイブリッドクラウドに導入することを明らかにした。

クラウド版Codexがすでに週間アクティブユーザー400万人に達した今、OpenAIが第二戦線を開くのは偶然ではない。

提携の内容

協業は2つの部分からなる。

第一に、CodexがDell AI Data Platformと統合される。 これはDellが企業向けに提供するデータ管理基盤で、ストレージ、整理、権限管理、コンプライアンスをカバーする。統合後、Codexは社内のコードベース、ドキュメント、運用知識、業務システムに直接アクセスでき、データは企業外に出ない

第二に、CodexがDell AI Factoryと接続される。 DellのAIワークフロー向けインフラは、Codex、ChatGPT Enterprise、その他のOpenAI APIサービスをサポートし、データ前処理、システム連携、テスト、オンプレミスまたはハイブリッド環境へのAIアプリケーション展開などを実行する。

DellのインフラストラクチャソリューショングループSVP兼CTOであるIhab Tarazi氏は次のように述べている。「DellのエンタープライズグレードのインフラとOpenAIのエージェンティックAIにより、企業はデータがすでに存在する場所にAIを展開できる」

要するに、AIはデータのある場所に動く——逆ではない。

なぜOpenAIが今オンプレミスに乗り出すのか

OpenAIはこれまでクラウドサービスを販売してきた。Codex、ChatGPT、APIはすべてクラウド上で動作する。シリコンバレーやスタートアップ、クラウドネイティブ企業では問題ない。

しかし、クラウド移行を拒む顧客層が存在する。

  • 金融: 規制により、顧客データは企業境界外に出せない。
  • 防衛・政府: コンプライアンス上、物理的な分離が必要。
  • 大規模製造・エネルギー: OTシステム、工場データ、独自の配合は外部ホスト不可。
  • 欧州企業: GDPRとデータ主権の二重の圧力。

これらのセグメントは、企業IT市場で最も裕福で、最も高いASPを支払う層である。OpenAIはこれまで彼らにリーチできなかった。Codexは1年以上販売されているが、金融、医療、政府ではデータ所在地の問題で壁にぶつかっていた。

DellのAI Factoryは既成、Dellの顧客リストは既成、Dellのコンプライアンス体制は既成。OpenAIがCodexをDellのハードウェアで動作させるようにしたのは、事実上、これまでアクセスできなかった市場の半分にエンタープライズ版図を拡大することを意味する。

Codexはコーディングを超えて進化

OpenAIは発表の中で静かに次のように述べている。「Codexはコーディングを超えて拡大している」

公式説明によれば、Codexはもはやコードを書くだけではない。顧客はすでに以下の用途で使用している。

  • ツール間のコンテキスト収集
  • レポート作成
  • 製品フィードバックのルーティング
  • 営業リードの資格審査
  • フォローアップメールの下書き
  • 業務システム間の作業調整

言葉の変化に注目。1年前、Codexは「AIコーディングアシスタント」と呼ばれていた。今、OpenAIは「AIエージェント」と表現している。機能はIDEのコード補完から、ソフトウェア開発ライフサイクル全体と一般的な知識作業へと拡大した。

これが、OpenAIがDellとオンプレミスに力を入れる理由を説明する。Codexが単なる補完ツールであれば、どこで動くかは重要ではない。しかし、企業内で「すべてのデータを読み、すべてのプロセスを実行する」エージェントになるのであれば、ローカルデータと密接に結合する必要がある

マイクロソフトとの関係が興味深くなる

避けて通れない話題:OpenAIとマイクロソフトの関係。

マイクロソフトのCopilotは、AzureやMicrosoft 365上で動作する独自のエンタープライズ展開ストーリーを持つ。Dellとの提携により、OpenAIはマイクロソフトに依存しないエンタープライズインフラパートナーを初めて得た

振り返ると、OpenAIのここ1年の動きは明確になってきている。

  • 4月:CodexがCerebrasのチップ上で動作(NVIDIAを迂回)
  • 4月末:AWS、Google Cloudと新契約(Azure独占を迂回)
  • 5月:Dellとオンプレミス提携(マイクロソフトのエンタープライズチャネルを迂回)

これは偶然ではない。OpenAIはIPO前に販売チャネルを多様化している。7年間の独占契約でAzureに縛られているのは一つの話だが、IPO後、株主は一本足打法を許容しない。

緊急性を示す詳細

OpenAIの発表では「毎週400万人以上の開発者がCodexを使用」とされている。CursorのARRは約200億ドル、評価額は500億ドルと報じられている。AnthropicのClaude Codeは1年で6倍に成長——AIコーディングツール市場は激しい競争にある。

Codexをオンプレミスに持ち込んでも、Cursorを使うクラウド好きの開発者をすぐに奪うことはできない。しかし、金融、医療、防衛などの大口契約を獲得すれば、1件の契約がCursorの小口顧客1000件分に匹敵する。

今後1~2四半期で、Dellが最初のCodexオンプレミス銀行顧客リストを開示するかどうかが注目点となる。

出典:CocoLoop、OpenAI and Dell Technologies partner to bring Codex to hybrid and on-premises enterprise environments(OpenAI公式ブログ)、OpenAI And Dell Technologies Announce Codex Partnership To Bring AI Agents To Hybrid And On-Premises Enterprise Environments(pulse2)、OpenAI Taps Dell for On-Prem AI(StartupHub.ai)