xAIは10月31日にAPIドキュメントを更新し、11月7日からGrok APIで生成するテキストに、目に見えない統計的な透かしを既定で付与すると発表した。開発者側のコード変更は不要という。ここ数日、SNSでは「Grokのテキスト透かしが世界一斉に展開」といった説が出回っているが、ドキュメントと複数メディアの伝えるところでは、今回の対象はAPIのみで、一般ユーザー向けのGrokプロダクトには影響しない。
対象はgrok-4.7、grok-4.6、grok-4.5、grok-4.3、grok-4.20の5バージョン。grok-4.20には推論、非推論、マルチエージェントの3種類があるため、7モデルと数えるメディアもある。第三者が照合した価格表にはgrok-build-0.1も載っているが、透かしの対象リストには含まれていない。理由はドキュメントに書かれていない。
透かしはトークンの選択に仕込まれる
方式はOpenAIやAnthropicのテキスト透かしと同じ系統だ。生成時にトークンの選択をわずかに偏らせるもので、1文だけ見ても不自然さはなく、テキストがある程度長くなって初めて統計的に信号を検出できる。目に見えるラベルも、隠し文字もない。コピーしても通常のテキストと見分けがつかない。
対象範囲はチャットの応答よりも広い。通常の応答、構造化出力、ツール呼び出しのためにモデルが生成する引数まで含まれ、Responses APIとChat Completions APIの両方が対象になる。開発者はレスポンスヘッダーx-watermarkで確認でき、値がtrueなら、その出力に透かしが付いている。
任意の文章に透かしがあるかを判定するには、別途、検出ツールの利用権限を申請する必要がある。結果は「透かしあり」「透かしなし」「判定不能」の3段階だ。1行の返答や短いJSONのような短いテキストは、「判定不能」になりやすい。xAIは、透かしが長さ、品質、速度に影響しないとしている。一方で、検出精度、誤検出率、言い換えや翻訳をした後でも検出できるかどうかといった数値は公表していない。
無効化にはハードルがある
設定項目はコンソールのチーム設定にあり、操作できるのは管理者だけだ。モデルごとに切り替えられ、効力はチーム内のすべてのAPIキーに及ぶ。個別のキーだけを設定することはできない。モデルによってはロックされている場合があり、その場合はサポートチームに依頼するしかない。
より実務的な制約は、法的責任にある。無効化する際には、何らかの法的例外が適用されることを確認する必要があり、残る表示・開示の義務はチーム自身が負う。操作はすべて監査ログに記録される。xAIが根拠に挙げるのはEU AI法の透明性要件で、関連規定は8月2日に適用が始まった。それ以前に市場に出ていたシステムには、改正後の第50条2項に基づき12月までの猶予期間があり、違反には最大1500万ユーロ、または全世界年間売上高の3%の制裁金が科される可能性がある。
3社でデフォルトがそれぞれ違う
3社を並べると、違いはデフォルト設定と対象範囲に集中している。
| 企業 | 一般向けプロダクト | API |
|---|---|---|
| Anthropic | 全世界で透かしあり | 透かしあり |
| OpenAI | EUの対象ユーザー | 全世界で手動有効化が可能、既定は無効 |
| xAI | 今回は対象外 | 既定で有効、法的例外を申告すれば無効化可能 |
OpenAIは10月にtextGrainを発表した際、検出データを示している。誤検出率1%の条件で、400トークンの文章の検出率は約95%、単語の4分の1を入れ替えると17%まで下がった。Grokの透かしが言い換えにどこまで耐えるのかについては、比較できる公開数値がまだない。
「xAIが最後の1社で、今や北米のChatGPTだけが透かしを入れていない」という説は、SNSの投稿に由来し、一部のメディアがそのまま引用した。プロダクトの範囲で見ると、この説は厳密には成り立たない。一般向けGrokは今回の対象に入っておらず、MicrosoftのCopilotについても、10月時点でテキスト透かしを説明した公開ドキュメントはない。
xAIの姿勢の変化についても、説明が待たれる。今年の初めには、同社がEUのAI生成コンテンツ透明性に関する行動規範に署名していないと報じたメディアがあった。今回のドキュメントは、署名したかどうかには触れておらず、透かしが第三者も読み取れる共通規格に沿っているかどうかも述べていない。Grok APIと連携している開発者は、11月7日までに自分の出力がどこへ流れるのかを確認しておくとよい。教育、出版、コンテンツモデレーションの分野は、検出結果に直面する可能性が最も高い。
参考資料:xAI APIドキュメント、Crypto Briefing、TokenPost、CocoLoop、Data Studios。ドキュメントの細部はメディアの報道と照合した。法令の条項については欧州委員会の公式説明を参照のこと。