イーロン・マスク氏率いるxAIのエージェント「Grok Bot」が、10月9日からユーザーに専用のメールボックスを割り当て始めた。公式アカウント@botは同日、機能の配信開始を投稿し、受け取り方はBotに直接頼むだけだと説明。マスク氏はその後この投稿を引用し、Grok Botが自分でメールアドレスを作れるようになったと伝えた。
「Rolling out to users today. To claim your inbox, just ask Bot.」(本日からユーザーへの配信を開始。受信箱が欲しければ、Botに頼むだけ。)
これらのメールボックスはmail.grokbot.comドメインで統一されており、このドメインはすでに受信可能だ。ユーザーが依頼すると、Botが受信箱を作成し、テストメールを1通送る。企業のチームアカウントにはもう一段手続きがあり、@botは「Admins must enable it for their team」と説明している。つまり、管理者が先に有効化する必要がある。
このメールボックスの使い道
Grok Bot自身がユーザーへの返信の中で挙げた用途は、次の3種類だ。
- 各種サービスへの登録や試用の際に、認証コードやレシートを受け取る。ユーザーのGmailは使わない。
- レポート、リマインダー、ニュースレターを購読し、読んだうえでユーザー向けに要約する。
- リスクの低い外部への連絡。ユーザーの承認を得てから送信する。
このほか、テック系メディアは、このメールボックスによってBotが2段階認証コードを読み取ったり、ユーザーに代わって店舗へ連絡して予約日時を調整したりできると報じている。
Grok Botは以前からメールを扱えたが、それはユーザー自身が権限を与えたGmail経由だった。下書きカードから整形済みメールを送る、検証済みのGmailエイリアスを使う、迷惑メールフォルダを検索する、といった具合だ。今回のアドレスはBot自身のものになる。認証コード、配信停止の通知、マーケティングメールへの返信はこの受信箱に届き、ユーザー個人のメールのログイン履歴や送信者の信頼度とは切り離される。
Grok Botの直近1か月の更新に位置づけると、9月末にSlackで共有できるチーム向けBotが登場し、10月8日にはコネクタなしでX上のコンテンツを検索・閲覧・監視できるようになった。デスクトップ版とiOS版のアプリにはすでにクラウド上のPCと定期タスクが備わっている。独立したメールボックスが加えるのは、外部とやり取りできる「身元」だ。
エージェントにメールアドレスを持たせる取り組みは、すでにAgentMailなどのサードパーティが手がけており、開発者はAPI経由でエージェントごとに受信箱を作れる。Grok Botはこれを組み込み機能にした。連携の手間が一つ減る一方で、アドレスもデータもxAI自社のシステム内に残ることになる。
公式が明らかにしていない点
現時点で、xAIはこの機能の説明文書を公開しておらず、サポートページも更新していない。重要な細則はいずれも空白のままだ。1日に何通まで送れるのか、外部への送信は常にユーザーの承認が必要なのか、企業は自社ドメインを紐づけられるのか、メールはどのくらい保存されるのか、どの購読プランで使えるのか。有料会員が必要だとする伝聞もあるが、公式は具体的なプランを示していない。
大量登録やスパムは、外部にメールを送るサービスなら必ず対策が必要な問題だ。自分で認証コードを受け取り、自分でアカウントを登録できるエージェントにどのような制限が設けられているのか、公開されている資料は今のところない。
中国のユーザーにとっては
Grokは中国本土ではサービスを提供しておらず、中国のユーザーはこの機能を通常の方法では使えない。
仮に使えたとしても、中国の主要プラットフォームの多くは携帯電話番号による実名登録を求めるため、メールで認証コードを受け取る方法が通用する場面は限られる。中国国内でエージェントがユーザーに代わって作業する場合は、スマートフォン上でアプリを直接操作する方式が一般的で、智譜(Zhipu)のAutoGLMがこの路線を採っている。エージェントにユーザーとは独立した「身元」を持たせるべきか。この問いに対する答えは、現状では中国と米国の製品で異なっている。
参考資料:Grok Bot公式アカウント、TeslaNorth、CocoLoop、AlphaSignal。メールドメイン、チーム有効化の条件、更新履歴のバージョン番号を確認した。