Cat Wu氏は11月5日、XでOpenAIへの参加を発表した。担当はCore Products(中核製品)のプロダクトマネジメントである。Wu氏はこれまでAnthropicでClaude Codeのプロダクト責任者を務めており、複数の報道によると最終勤務日は10月30日。退職から新しい所属先の公表まで、1週間もかかっていない。
新職場での報告ラインはかなりはっきりしている。OpenAIの確認として報じられたところでは、Wu氏はThibault Sottiaux氏に報告し、企業向け製品を統括するNick Turley氏、コンシューマー向け製品を統括するAshley Alexander氏と連携する。OpenAI社長のGreg Brockman氏も歓迎の意を公に示した。Sottiaux氏はこの投稿を引用する際、「CatGPT」と一言だけ添えた。
Wu氏の発表文にAnthropicへの言及はなく、中心はエージェント製品だった。
“Together, we'll build agents that have your back and your team's, and keep you in control, so you get more time for the people and work you love.”
大意:個人にもチームにも寄り添い、かつ人が主導権を握り続けられるエージェントを一緒に作り、大切な人や仕事に使える時間を増やしたい。
同じ投稿では、OpenAIがすでに10億人を超える人々にAIを届けていること、優れた製品が同社のミッションの中核にあることにも触れている。ただし具体的な製品名は挙げておらず、着任の手続きや時期についての記述もない。
研究系プロダクトからClaude Codeへ至る道筋
Wu氏のこの2年間をたどると、今回の退社にも前史がある。
Wu氏は2024年8月にAnthropicへ入社し、当初は研究分野のプロダクトを担当した。それ以前はScale AIとDagsterに在籍していた。Claude Codeは2025年2月にリサーチプレビューとして公開され、以降、Wu氏とエンジニアリング責任者のBoris Cherny氏は、社外から最も並べて語られるコンビになった。
2025年7月には短期間の離脱があった。2人はCursorの親会社であるAnysphereへ移り、約2週間後にAnthropicへ戻った。この一件は、少なくともClaude Codeチームの中核メンバーが以前から競合の引き抜き候補に挙がっていたことを示している。
Anthropicに戻った後も、Wu氏の担当範囲は広がり続けた。非プログラマー向けのCowork、エージェント製品のClaude Tagもその対象に含まれる。今年2月、AnthropicはClaude Codeの年間換算売上高が25億ドルを超えたと発表している。
8日間で少なくとも3人
今回の退職者はWu氏だけではない。公開報道で名前が挙がっているのは、あと2人である。Claude Codeデスクトップクライアントの作者Anthony Morris氏が10月23日に退任し、中核エンジニアのThariq Shihipar氏が10月24日に退社を発表した。Wu氏を加えると、10月23日から30日までの8日間で3人が去ったことになる。
3人の別れの言葉はいずれもAnthropicを称えるもので、公の場での批判はなく、具体的な理由も示されていない。Cherny氏は報道によればAnthropicに残っている。
タイミングの重なりは、つい憶測を呼ぶ。Anthropicの目論見書は11月2日に更新されたばかりで、同社は上場前の重要な局面にある。ただ、退職と上場スケジュールや株式報酬との間に関係があるかどうかについて、現時点で公開されている根拠はなく、3人とも触れていない。この点は保留にするしかない。
両社の製品の規模感
Claude CodeがAnthropicにとってどれほど重いかは、目論見書の数字から見て取れる。今年第3四半期、Claude Codeを使っていない法人顧客の月平均支出は75ドル未満だった。一方、Claude Codeの支出が上位5%に入る法人顧客の月平均は、その約20倍だった。
OpenAIの側では、Codexの週間アクティブユーザーが6月に500万人を超え、そのうち約2割は開発者ではなかった。9月29日のDevDayでは、CodexとChatGPT Workを合わせた週間アクティブユーザーが3,500万人を超えたと同社は説明した。Brockman氏は、法人顧客がすでにOpenAIの売上の過半を占めているとも述べている。
報告ラインを見ると、Wu氏の連携相手は企業向けとコンシューマー向けの両方にまたがっており、職名にもCodexの文字はない。したがって「Claude Codeの担当者がCodexを手がける」という見方は、今のところ推測の域を出ない。OpenAIはWu氏が管掌する具体的な製品を明らかにしていない。
まだわかっていないこと
OpenAIが自ら声をかけたのか、交渉にどれくらいかかったのか、報酬や株式の条件はどうなのか。いずれも公表されていない。報道ではAnthropicがコメントを控えたとされており、Claude Codeの製品ラインを誰が引き継ぐのかについても、公開情報は見つからなかった。
Wu氏の投稿は「Please keep your feedback coming」で締めくくられている。いかにもプロダクトを作る人らしい習慣である。Claude Codeのユーザーがこれから注目できるのは、おそらく2点だ。Anthropicが新しいプロダクト責任者をいつ発表するか、そしてOpenAIのエージェント製品にWu氏の手がけた痕跡がいつ現れ始めるかである。
参考資料:Cat Wu氏の公開投稿、36Kr、CocoLoop、Business Insiderの関連報道。法人顧客の支出額と週間アクティブユーザー数は、目論見書とDevDayに関する各メディアの整理による。