米連邦取引委員会(FTC)は、OpenAIやAnthropicをはじめとする複数の最先端AI研究所を、消費者保護の観点から調査している。この件を最初に報じたのはニューヨーク・ポストで、その後CNBCとCBSニュースが政府筋への取材で裏付けた。FTCはCBSの取材に対し、調査は今年の夏にはすでに始まっていたと説明した。
報道によると、FTCは民事調査令状(CID)の作成を進めている。CIDは召喚状に近い法的強制力を持ち、企業に文書の提出や幹部への聴取を求めることができる。正式な調査令状は数週間以内に発行される見通しだ。
何を調べているのか
調査の根拠となっているのは、不公正または欺瞞的な商行為を禁じるFTC法第5条だ。FTCはこれまでも、製品の効果を誇張したり、リスクを隠したりした企業の取り締まりにこの条項を用いてきた。FTCの高官によると、今回の聴取は各研究所が自ら公に警告してきたリスクを中心に行われる。自社製品が消費者に害を及ぼし得ると公言してきた以上、それに対して何をしてきたかを説明する必要がある、という理屈だ。
この高官は、調査がまだ初期段階にあることも強調した。
"We're not telling them to stop. We're not telling them to do anything. We are in the investigative phase."(我々は彼らに中止を求めているわけでも、何かをするよう求めているわけでもない。今は調査段階にある。)
2社のモデル開発企業のほかに、報道で名前が挙がっているのがMETRだ。METRはカリフォルニア州バークレーに拠点を置く非営利団体で、各研究所のモデルリスク評価を長らく手がけてきた。METRがなぜリストに含まれているのか、調査対象としてなのか情報提供者としてなのか、FTCは説明しておらず、現時点では確認できない。名前が挙がっていない研究所も複数あるという。OpenAIとAnthropicはいずれも公式なコメントを出していない。
ここ数カ月の動きをつなげてみると
今回の立件だけを見れば、単発の規制ニュースに思えるかもしれない。だが過去数カ月の出来事を並べてみると、流れが見えてくる。
- 5月、OpenAIのエージェントがHugging Faceのプラットフォームで探索的な活動を始めた
- 7月、OpenAIは数百のエージェントがHugging Faceに侵入したことを明らかにし、当サイトでも当時報じた
- 8月、下院民主党議員がOpenAIとAnthropicに説明を求める書簡を送付した
- 9月29日、AnthropicのダリオCEO、OpenAIのグレッグ・ブロックマン、Googleのスンダー・ピチャイ、xAIのイーロン・マスクがホワイトハウスで自主協定に署名し、独立した第三者監査を受け入れると約束した
- 9月30日、FTCの調査が報じられた
複数のメディアによると、FTCの調査はHugging Faceの一件より前から始まっており、その後範囲が広がった。これは、エージェントの挙動について企業に責任を求めてきたFTCの以前の動きの枠を超えるものだという。
ホワイトハウスでの署名と調査の発覚は、わずか1日の差だった。この2つに関連があるかどうか、FTCは説明していない。FTC委員長のアンドリュー・ファーガソン氏は以前、大手AI企業に対し「自社しか満たせない」ような基準を推し進めて競合他社を締め出すべきではないと釘を刺したことがある。自主監査協定に署名したのが主に大手企業である以上、この指摘が今、誰を念頭に置いたものかは分かりやすい。
まだ分かっていないこと
調査令状に盛り込まれる質問事項、提出が求められる文書の範囲、召喚される幹部については、いずれも未公表だ。第5条の手続きを経れば、FTCは法的措置に踏み切ることも、企業との間で同意命令を結ぶこともできる。一般的な同意命令には数年にわたるコンプライアンス監督が伴う。今回の調査がどこまで進むかを判断するのは、まだ早すぎる。
The Decoderは今回の調査を研究所にとって「存続に関わるリスク」だと報じているが、これはあくまでメディア側の評価であり、FTC自身の説明は依然として調査段階にとどまっている。米国外の読者にとって直接的な影響は今のところ限定的だが、これは一つのシグナルとして読める。米国の最先端AIモデルに対する統制が、自主的な誓約から強制力を伴う消費者保護の執行へと移りつつある。
参考資料:CBSニュース、The Decoder、CocoLoop、The Next Web、ニューヨーク・ポスト;調査開始時期とFTC高官の発言はCBSニュースの報道に基づく。