Anthropic調査:ロボットは74%の作業に対応可能

Anthropicの経済調査チームは9月30日、レポート「What work can robots do?」を公開した。著者はRussell Legate-YangとMaxim Massenkoffの両氏。結論は二層構造だ。技術的な能力で見ると、米国における体力を伴う作業タスクの74%はすでにロボットが対応可能で、これらのタスクは全労働時間の34%を占める。一方コストで見ると、現時点で人を雇うよりロボットに任せる方が安いタスクはわずか0.3%にとどまる。

データの出どころ

ベースになっているのは米労働省のO*NET職業データベースで、約900の職業、1万9000件の具体的タスクを収録する。調査チームはこれに、米労働統計局の2025年版職業別雇用・賃金データ、2026年版雇用主負担コストデータ、2020〜2024年の米国コミュニティ調査(ACS)を組み合わせた。各タスクの「ロボット露出度」のスコアリングと自動化コストの推計にはClaudeを用いた。

レポートは体力作業を、環境がどれだけ制御されているかに応じて4段階に分類している。

  • ロボット専用に設計された環境(E1):労働時間の23%
  • ある程度の構造を持つ人間の作業現場(E2):10%
  • 道路のような非構造化環境(E3):1%
  • ロボットには対応できない体力作業(E0):12%

露出度が最も高い職業はタクシー運転手(指数2.2)で、次いでシャトルバスや専属運転手(2.0)、さらに倉庫作業員、配送員、梱包作業員が続く。レポートはロボットと大規模言語モデル(LLM)を組み合わせた場合についても分析しており、両方を合わせると、対応範囲に入らない職業は全体の5分の1程度にとどまると結論づけている。

どこで詰まっているか

障壁は4種類に分けられる。能力不足が関わるタスクは全体の約70%、コストの壁はほぼ全タスクに及び、規制による制約は体力作業の14%、人による対応を好む選好は25%に関わる。レポートは特に器用な操作(マニピュレーション)を課題として挙げている。

"Manipulation capabilities stand out: half of physical tasks wouldn't be automated at scale unless robots become more adept at touching and handling objects."

(訳:操作能力は際立った課題だ。ロボットが物に触れ、扱う能力をもっと高めない限り、体力作業の半分は大規模には自動化されない。)

40年という試算

コストの面でレポートは過去のデータをもとに試算している。ロボットの価格はこれまで年平均で約3%下落してきた。このペースで進むと、コスト面で競争力を持つタスクの割合は0.3%から10%まで上がるが、そこに到達するには約40年かかるという。

同じペースで単純計算すると、ロボット価格が半分になるまでに約23年かかり、40年後には現在の3割程度になる計算だ。このペースでは、ハードウェアが機械的に値下がりするだけでは人件費との差を埋めるには到底足りず、1台のロボットがこなせる作業の幅を広げるか、導入・保守にかかるコストを大きく下げる必要がある。

レポート自身も前提条件を明示している。すべてのタスクに同一の値下がり率を適用しており、選好や規制がもたらすフィードバック効果はまだ織り込んでおらず、コストの推計は「近似値」にとどまるという。人型ロボットや身体性を持つAIモデルへの投資はこの2年で活発化しており、器用な手、学習データ、機体コストの下落ペースが3%を大きく上回れば、40年という数字は大幅に縮まる可能性がある。レポートはこのシナリオについて個別の試算は行っていない。

影響を受けやすいのは誰か

露出度が最も高い上位5分の1の労働者を、影響の少ない層と比べると、女性の比率が20ポイント低く、ヒスパニック系の比率が16ポイント高く、学士号を持つ比率が55ポイント低く、時給は約30ドル低い。失業率は2倍以上に達する。

この調査は米国のデータのみを用いている。中国の製造業や物流業は、タスクの構成、人件費、工場の自動化水準のいずれも米国とは大きく異なるため、0.3%や40年といった数字をそのまま中国に当てはめることはできない。

参考資料:Anthropic経済調査レポート、CocoLoop、米労働省O*NETデータベースの説明資料。タスク比率と労働時間の割合はレポートの算出基準に基づく。価格半減までの年数は年3%の下落率を前提にした試算。