State of AI年次報告、最先端は3ラボに絞られたと指摘

投資会社Air Street Capitalの創業者Nathan Benaich氏が編集する『State of AI Report』の2026年版が10月8日に公開された。2018年に始まった同報告書の第9版にあたる。報告書の公式サイトは各章に一行の導入文を付けており、先頭に置かれているのは「The frontier is now a three-lab race.」という一文だ。

3社とはAnthropic、OpenAI、Googleを指す。報告書が採用するArtificial Analysisのインテリジェンス指数(v4.1〜v4.3、エージェント系タスクを重視)ではAnthropicが首位で、Arenaのユーザー選好ランキングではGoogleが先頭に立つ。報告書はさらに、数学、科学的推論、コーディングのベンチマークが数カ月でほぼ上限まで押し上げられたとされ、次にモデル間の差を分けるのは実務タスクでの信頼性を測る新しい評価だと述べているという。

9つの章の導入文

公式サイトに掲載された各章の導入文を並べると、この1年の主な流れがおおよそ見えてくる。

  • エージェント:ツールとコンテキストの改善で、エージェントの能力が上がった。
  • 計算資源:拡張には資金調達、建設工事、そして地元の同意が必要になる。
  • ビジネス:推論が巨大な事業になりつつある。
  • ロボティクス:独自の「GPT-2の瞬間」に近づいている。
  • 科学:AIが支援して発見された薬が第3相臨床試験に入った。
  • 政策:ワシントンが最先端AIへの統制を強めている。
  • 安全性:「AI agents have attacked real systems.」

最終章は2027年の予測だ。例年どおり、報告書は前年の自らの予測を採点している。報じられたところでは、10件の予測のうち完全に的中したのは2件、部分的に的中したのは5件、外れたのは3件だった。公式サイトには2018〜2024年の通算成績もあり、採点済みの予測59件のうち的中31件、部分的中8件、外れ20件で、厳密に数えた的中率は53%となる。

地元の反対が変数になった

複数の要約が共通して取り上げているのが、データセンターに対する地域レベルの反発だ。報告書は2026年3月のギャラップ調査を引用しており、米国の回答者の71%が地元でのAIデータセンター建設に反対し、地元での原子力発電所建設に反対する人は53%だった。別のデータはData Center Watchによるもので、2026年第2四半期だけで少なくとも45件のプロジェクトが地元の反対で中止または延期され、計画されていた投資額は合計でおよそ680億ドルに上る。

ソブリンAIも別の流れだ。報告書は各国のソブリンAI計画が約束した投入額を合計約1380億ドルと集計し、外部依存を減らしたい国が最初に出す注文も、結局は同じ一社のチップ供給元に向かうことが多いという現象を指摘している。

報告書の全体的な判断は、モデルの能力はなお伸び、単位あたりのコストもなお下がっているが、どこまで大きくできるかは、電力、地域社会の同意、アクセス権といったモデルの外にある要素にますます左右される、というものだ。

中国の読者が注目すべき点

この報告書は、海外の投資家や研究者にとって毎年の基準点であり、各社をどう並べるかが多くのファンドや企業の判断に直接影響する。2025年版はOpenAIが僅差でリードし、DeepSeek、Qwen、Kimiがその後に続くと記していた。2026年版の冒頭の結論は最先端を米国の3ラボに絞っており、中国モデルの位置づけは本文中のランキング図とオープンソースの章で確認する必要がある。

政策の章の導入文「Washington is asserting control over frontier AI」は、中国の開発者にとってより直接的な意味を持つ。過去1年の米国によるチップ輸出とモデルアクセスの引き締めを、報告書は各国政府が計算資源とモデルへのアクセスへの統制を強めている動きとして整理しているとされ、これは中国のチームがGPUを調達し、海外APIを呼び出す際のコストに結びつく。

なお、上記の数字の一部は報告書の公式サイトの章ページと複数のサードパーティによる要約に基づいており、報告書PDF内の元の表は今回、項目ごとに照合できていない。具体的な集計基準は、Air Streetが公開する完全版を確認してほしい。

参考資料:State of AI Report公式サイトの章ページ、Crypto Briefing、ToolNavsの報告書要約、CocoLoop。世論調査の割合、中止されたプロジェクト数、ソブリンAIの投入額は報告書が引用した数値に拠り、予測の的中数は報告書の自己採点に基づく。