2028年、AI計算資源の8割が2社に集中

8月25日、SemiAnalysisの創業者ダイラン・パテル氏はドワルケシュ・パテル氏のポッドキャストで、2028年末までにAnthropicとOpenAIの2社が世界の利用可能なAI計算資源の大半を握るという試算を示した。

"By the time you're towards the end of 2028 — if this trend continues, and I see nothing that's stopping it — you've got them just controlling most of the usable flops in the world on their own."

(2028年末までに、このトレンドが続けば――それを止めるものは何も見当たらない――この2社だけで世界の利用可能な計算能力の大半を握ることになる。)

数字はこう並ぶ。両社それぞれの電力規模は、2025年末に約2ギガワット、2026年末に5ギガワット超、2027年末に約18ギガワット、2028年末に約54ギガワットとなる見込み。世界の新規AI計算資源に占める割合は、今年が約30%、来年は40〜50%、2027年12月前後には新規分の約半分、2028年には70〜80%まで上がるという。世界全体の増加分は2026年が30ギガワット、2027年が50ギガワット、2028年が70ギガワット、2029年が90〜100ギガワットで、2028年の世界全体の総量は200ギガワット前後になる。

1メガワットあたりの収益はどれだけか

パテル氏は、集中化の原動力は単位収益に隠れていると考える。現在のインフラコストはおおむね1メガワットあたり1000万〜1500万ドルだが、Anthropicの1メガワットあたり収益は一時5000万ドルに達したという。同氏の見立てでは、2027年末までに大手研究所の1メガワットあたり収益は5000万ドルを超え、7000万〜8000万ドルに届く可能性もある。1メガワットあたりの収益が高いほど、ラック争奪戦で高値を出せる。

"To get to that 100 gigawatts in 2028, you have to believe that the labs can outpay for compute...Does compute now get to $25 million a megawatt? Does it get to $40 million a megawatt?"

(2028年に100ギガワットに到達するには、研究所が他社を出し抜いて計算資源に対価を払えると信じる必要がある……計算資源の価格は今、1メガワットあたり2500万ドルまで上がるのか。4000万ドルまで上がるのか。)

同氏は3つのメカニズムを一言に集約する――「Every force is screeching towards centralization.」(あらゆる力が集中化に向かって突き進んでいる。)学習段階での規模の経済、先行者ほど高い1メガワットあたり収益、そしてそれによって得られる価格競争力が、互いにかみ合いながら回転を強めていく。

資金はどこから来るのか

この試算で最も重いのは資本の内訳だ。2024年から2029年にかけて、業界全体の設備投資は約11兆ドルに上り、うち6兆ドルは現金で、5兆ドルは負債でまかなわれる。新規に発行される与信規模は5兆ドルを超える見込みだ。金利について、Metaの現在の調達コストは5〜6%で、パテル氏はこれが8%まで上がらない理由はないと見る。この250ベーシスポイントの上昇は、信用市場を通じて経済全体に波及するという。

中国については3つの見立てを示した。2028年時点で中国のAI計算資源は30ギガワット以下にとどまる。現在、世界のデータセンター向けAI計算資源の展開において中国が占める割合は10%未満。そして換算係数として――「that 50 gigawatts is really worth as much as 20 gigawatts from American chips」(その50ギガワットの実質的な価値は、米国製チップの20ギガワット相当に過ぎない)。この換算係数はパテル氏自身の推計であり、算出根拠は公開されておらず、結論として扱うのは危うい。

この試算の脆さはどこにあるのか。計算資源の規模、1メガワットあたり収益、与信供給という3本の曲線を1本に束ねている点だ。前者2つは因果関係にあり、収益が高いほど計算資源を買え、買えるほど次世代モデルを作れ、モデルが強いほど収益はさらに高くなる――この循環が回り出せば、確かに自己加速する。3本目は外生的な要因だ。ざっと試算すると、8%の調達コストが成り立つ場合、5兆ドルの負債の利払いだけで年間4000億ドルに上り、この規模はAI関連収益が同時期にかなり高い水準に達することを前提とする。パテル氏自身もこの部分を問いのまま残している。研究所がさらに高値を出せるかを問うにとどまり、出せなかった場合どうなるかには踏み込んでいない。

他のプレーヤーにとっては、絶対値よりもこの比率の推移の方が参考になる。新規計算資源の7〜8割が2社に流れるなら、残る2〜3割を他のすべての研究所、クラウド事業者、自社構築の企業、そして各国のソブリンプロジェクトで分け合うことになる。世界全体の総量は上がり続けるが、その中で分け前を得られる割合は縮んでいく。

参考資料: Dwarkesh Podcast、CocoLoop、SemiAnalysis。両社のギガワット試算の幅、1メガワットあたり収益の算出方法、そして11兆ドルの設備投資に占める現金と負債の内訳については、独自の検証が望ましい。