M6が2nm初搭載、M5 Ultraは512GBメモリ搭載

AppleはM6とM5 Ultraという2つの新チップを発表した。公式発表のタイトルには“performance and AI compute”という言葉がそのまま使われている。M6はMac miniに、M5 UltraはMac Studioに搭載され、現在予約受付中で、9月22日から出荷が始まる。

M6はAppleにとって初の2nmチップであり、TSMCの2nmプロセスによる量産製品の第一弾の一つでもある。スペックは12コアCPU(ハイパーコア2基、性能コア4基、効率コア6基)、12コアGPU、16コアNeural Engineを2基搭載し、ユニファイドメモリは最大32GB、帯域幅は170GB/s。Appleによれば世界最速のシングルスレッド性能を持ち、マルチスレッド性能はM5の1.2倍、GPUのAI演算性能はM5比で約30%向上、M1比では8倍以上、Neural Engineの性能は前世代の2倍になったという。

M5 Ultraは物量で攻めるアプローチを取った。新世代のUltraFusionでデュアルダイ構成のM5 Max 2基を接続し、Mシリーズ初となる4チップ構成を実現した。

M6M5 Ultra
CPU12コア最大36コア
GPU12コア最大80コア
Neural Engine16コア×232コア
ユニファイドメモリ最大32GB最大512GB
メモリ帯域幅170GB/s1.2TB/s

M5 UltraのGPUには今回Neural Acceleratorsが搭載され、AI演算性能はM3 Ultra比で4.5倍、M1 Ultra比では6倍以上に向上。1.2TB/sの帯域幅はM3 Ultraより50%高い。Appleは“M5 Ultra features a massive GPU, now with Neural Accelerators, and more unified memory bandwidth, pushing the boundaries of what a desktop can do”と述べている。

512GBという境界線で何が動くのか

ユニファイドメモリの意味が最も分かりやすく表れるのがローカル推論の場面だ。CPUとGPUが同じメモリを共有するため、モデルの重みをVRAMとメモリの間で行き来させる必要がない。ディスクリートGPU構成ではVRAM容量がそのまま上限になるが、Mac Studioの場合、その上限は今や512GBだ。

ざっくり試算してみる。オープンソース側の6000億〜7000億パラメータ級MoEモデルは、4bit量子化後の重みサイズがおおよそ350GB〜400GB程度になる。これにKVキャッシュや実行時のオーバーヘッドを加えても、512GBあれば1台にまるごと収まる計算だ。同等のメモリ容量をデータセンター向け構成で確保しようとすると、複数GPUの相互接続が必要になり、コストも電力供給もまったく別次元になる。

帯域幅は依然として弱点だ。1.2TB/sはデスクトップとしては高い数値だが、データセンター向けのHBM構成と比べればまだ差がある。長いコンテキストでの推論では、トークン出力速度が目に見えて落ちるだろう。その代わりに得られるのは別の価値だ。コンセントに挿すだけの1台のマシンでローカルモデルを動かし、データを外に出さずに済む。

2nmという一歩

M6は2nmの先陣を切った形で、ペースの面でもAppleは依然として最前線に立っている。プロセスの恩恵はピーク周波数ではなく電力効率に表れている――12コアのうち6コアを効率コアが占め、帯域幅も170GB/s(M5比でわずか10%増)にとどまる。M6の設計思想は消費電力を抑えることにあり、AI性能の伸びは主にGPUとNeural Engineの再設計によるものだ。

同じ週の業界全体の動きと重ね合わせると、方向性は一致している。データセンター側は1キロワットあたりどれだけ推論をこなせるかを競い、デスクトップ側は1台にどれだけ大きなモデルを収められるかを競っている。推論コストは両端から同時に押し下げられているのであり、その手段が異なるだけだ。

なお、Mac miniに搭載されるM6はメモリ上限が32GBにとどまり、ローカルで動かせるモデルの規模は限られる。このチップが狙う顧客層は、明らかにこの用途の先にはいない。

参考資料:Apple Newsroom公式発表、MacRumors、CocoLoop、Phoronix、9to5Mac。コア数、メモリ容量・帯域幅、倍率については公式発表と照合済み。量子化モデルのサイズは公開パラメータに基づく概算。