4月初旬にほぼ同時に起きた二つの出来事は、別々に見るよりも一緒に見る方がはるかに興味深い。
一つ:ElevenLabsが4月1日、AI音楽生成iOSアプリ「ElevenMusic」をリリースした。もう一つ:その1週間後、バークリー音楽院で400人の署名が集まった請願書が提出され、学校に対しAI生成ツールの推進をやめ、AI作曲の選択科目を廃止するよう求めた。
この二つは、同じ戦いの両面である。
ElevenLabsが越境
ElevenLabsは創業3年、音声クローンとTTSで成長し、今年2月に5億ドルの資金調達を完了、評価額は110億ドルに達した。そして外部から見るとやや飛躍に思える行動に出た。音楽生成アプリの開発だ。
ElevenMusicの仕組みはシンプルだ。テキストを入力すると、曲を生成する。スタイル、長さ、歌詞の密度を調整でき、他のユーザーの作品を閲覧できる発見・リミックス機能も備える。Focus、Energy、Relax、Late Night、Cosmic、Chillなどのムードモードもプリセットされている。
- 無料版:1日7曲、一般ユーザーには十分
- Pro版:月額9.99ドル、月500曲、500GB以上のストレージ
競合はSunoとUdioだ。Sunoは前四半期に年間換算で3億ドル以上の収益を上げ、コンテンツ制作者の間で広く普及している。ElevenLabsの参入は、この市場が3社で分け合うのに十分な規模だと判断したことを意味する。
最初にiOSアプリとしてリリースしたことから、ターゲットはプロのミュージシャンではなく、コンテンツ制作者、ポッドキャスター、ショート動画の投稿者といった「手軽なBGM」を必要とする層であることがわかる。これはSunoのコアユーザー層であり、ElevenLabsは正面から挑んでいる。
ElevenLabsの音楽分野への拡大自体は驚くべきことではない。音声AIと音楽生成は技術的に多くの共通基盤を持ち、どちらもオーディオモデリング、感情表現、スタイル制御を伴う。音声を手がける企業が音楽に進むのは自然な拡張であり、無作為な越境ではない。
バークリーの学生:「もうたくさんだ」
バークリー音楽院は世界有数の現代音楽教育機関であり、多くの作曲家、プロデューサー、映画音楽作曲家を輩出している。4月、400人以上の学生と教職員が請願書に署名し、学校に対しカリキュラムでのAI生成ツールの推進をやめ、AI作曲の選択科目を廃止するよう求めた。
この科目は准教授のBen Campが担当している。彼はケンブリッジに拠点を置くAI音楽企業Sunoと密接な関係にある。引き金の一つは、Campがソーシャルメディアに投稿した次のような内容だった。
「Sunoは私の学生の80%よりも音楽の出来が良い。しかし、私の最高の学生は依然としてSunoを凌駕している。」
この投稿は後に削除された。
学生の反応は直接的だった。1年生のKeira Mannは「私たちは自分自身の物語を語るためにここにいるのであって、誰か別のバージョンを操作するためにいるのではない」と語った。映画音楽を学ぶ学生のMichael Hoffmanは「AIは古いものを消化しているだけだ。決して境界を押し広げるようなものを本当に創造することはない」と述べた。
より現実的な懸念もある。教授のEvan Williamsは、ハリウッドが有料の作曲家予算をAI音楽で置き換えることを懸念していると直接述べた。これは仮定の話ではなく、低予算のストリーミング制作ですでに起きていることだ。
学校側の対応は穏健なものだった。「学生を技術の変化に備えさせる責任がある」と述べた。この論争の中で、その対応は事実上何も言っていないに等しい。
二つの出来事が示す同じ問題
ElevenLabsが音楽アプリを開発したのは、AI音楽ツールがますます優れ、消費シーンが拡大し、市場があるからだ。
バークリーの学生が抗議するのは、その論理の終着点が見えているからだ。AIが十分に優れた音楽を生成できるようになれば、音楽に携わる人々のうちどれだけが直接的な競争に直面するのか。
| ElevenMusicユーザーの視点 | 音楽専攻学生の視点 | |
|---|---|---|
| AI音楽の意味 | 低コストで迅速なBGM制作 | 職業市場の縮小 |
| 参入障壁 | 低下、誰でも利用可能に | 低下、専門的価値の希薄化 |
| ツールの位置づけ | 生産性向上ツール | 潜在的な競合 |
この緊張感は現実のものであり、感情的な反応ではない。
注目すべきは、このパターンがAIとクリエイティブ分野ではほぼ必然的に発生していることだ。イラストレーター、写真家、映像編集者に続き、今は音楽。次は映画脚本、ゲームアート、あるいは何か特定のスキルかもしれない。
抗議によってElevenMusicの公開が止まることはなく、Sunoの反復開発が止まることもない。しかし、400の署名は一つのことを示している。音楽業界はこの問題を真剣に受け止め始めており、もはや遠くから傍観している段階ではない。
バークリーが最終的にどのような決定を下すかは、重要ではないかもしれない。この行方を決めるのはカリキュラムではなく、市場なのだ。
出典:CocoLoop、ElevenLabs releases a new AI-powered music-generation app(TechCrunch);At Berklee, aspiring composers worry AI threatens their future(WBUR News)