OpenAIは9月10日、音声モデル「GPT-Live-1」をAPI開発者向けに公開した。このモデルは2カ月前にChatGPTの音声機能で先行公開されており、当時は「API版は追って公開」とだけ説明されていた。今後は開発者が電話サポートや音声アシスタント、会話練習アプリなどに直接組み込めるようになる。
GPT-Live-1は全二重モデルで、ユーザーが話している間も、自分が話している間も常に聞き続けており、いつでも割り込まれることができる。バックグラウンドノイズや長時間の通話にも対応する。従来のRealtimeシリーズと違い、すべてを自分で考え切る設計ではない。推論やツール呼び出しが必要なリクエストは、開発者が設定したバックエンドモデルに引き渡し、自身は会話のテンポを保つことに専念する。
フロントエンドとバックエンドは別々に課金
料金体系もこの構造に沿って2つに分かれる。音声フロントエンドは1分0.05ドルで秒単位の課金、端数を切り上げて1分扱いにすることはない。バックエンド側のモデルやツールの利用料は、それぞれの通常料金で別途発生する。
OpenAIが示す組み合わせ例は3パターンある。予約や注文のような高頻度で単純なタスクには「Luna」、推論が必要な複雑な問い合わせには「GPT-6 Astra」、コード関連の会話には「Codex」を割り当てる。サードパーティのモデルをバックエンドに接続することも可能だ。
開発者向けドキュメントによると、モデル名はgpt-live-1で、既存のRealtime APIではなく新しいLiveエンドポイント(v1/live/sessions)を使う。入出力は音声とテキストに対応し、画像・動画は非対応。学習データのカットオフは2025年7月31日。同時セッション数の上限はアカウントの等級によって25から500まで幅がある。
GPT-Realtime-2.1との比較
OpenAIが公表したテスト結果の中で、最も差が大きいのはタスク完遂系の指標だ。
| 指標 | GPT-Live-1 | GPT-Realtime-2.1 |
|---|---|---|
| Tau3音声知能(一発成功率) | 86.2% | 45.7% |
| 全二重インタラクティブ性 | 80.1% | 45.4% |
| ツール呼び出し一発成功率 | 87.0% | 60.0% |
| ターン切り替え遅延 | 0.798秒 | 1.41秒 |
| Artificial Analysis会話ダイナミクス | 97.3% | 95.7% |
会話の自然さという項目では両世代の差はわずか1.6ポイントで、前世代の時点ですでにほぼ満点に近かった。差が開いたのは「話しながら実際に業務をこなす」部分だ。Tau3とツール呼び出しの2項目はいずれも、音声対話の中で一連の実業務フローを最後までやり切ることを求める。アーキテクチャ面で見ると、この向上の多くは推論をバックエンドに任せたことによるもので、フロントエンドは聞くことと話すことに専念している。Tau3のスコアはバックエンドモデルを組み合わせて測定されており、公表資料が挙げる組み合わせはGPT-6 Astraだ。Lunaのような安価なバックエンドに替えた場合の点数は、公式には個別に示されていない。
先行顧客の反応
OpenAIが名前を挙げた先行顧客はYelp、Speak、Fin、Cognitionの4社。Yelpの最高技術責任者(CTO)Alex Levy氏は、電話をかけてくるユーザーがより完全な文で話すようになったことに気づいたという。
"Callers are also speaking fuller, more natural sentences, which tells us the experience on the other end of the phone feels genuinely different."
(電話をかけてくるユーザーの話す文がより完全で自然になった。それは電話の向こう側の体験が本当に変わったことを示している、という趣旨。)
語学学習アプリSpeakのCTO Andrew Hsu氏は具体的な数字を挙げている。ユーザーが言葉を探して黙り込んだときにモデルが割り込んでしまうケースが、順番交代型のシステムに比べて約80%減ったという。カスタマーサポート企業FinのCOO Jordan Neil氏は、音声サポートが「一問一答で止まる」やり取りから、通常の電話に近いリズムに変わったと表現した。Cognitionはコーディングエージェント「Devin」に接続し、エンジニアが話しながらエージェントと方針をすり合わせられるようにした。
生成される音声にはSynthIDの電子透かしが付く。音声の種類は現時点では少数に限られており、カスタム音声を使うには営業チームへの問い合わせが必要だ。
今回公開されなかったのが中国語での性能だ。OpenAIは対応言語・アクセントを今後数カ月かけて順次拡大するとしか説明しておらず、具体的な言語リストは示していない。中国語の電話サポートを手がけるチームは、乗り換える前に自分たちでテストを回す必要がある。
参考資料:料金・API・同時接続数の確認にOpenAI公式発表と開発者向けドキュメント、Unite.AI、CocoLoop、YelpやSpeakなど顧客の公開発言。各テストのスコアはOpenAI公表の数値による。