AMD MI400、432GB HBM4搭載でNVIDIAに挑戦

AMDは今年、MI400シリーズAIアクセラレータを投入する。フラッグシップとなるMI455Xは432GBのHBM4メモリ、19.6TB/sのメモリ帯域幅、FP4精度で40 PFLOPSの演算性能を備える。

スペックだけを見れば、確かに強力だ。

しかし問題は、AMDが「ハードウェアスペックでNVIDIAより優れている」という話を何年も続けてきたことにある。

MI400の数字

まずはスペックを並べてみる:

指標AMD MI400(MI455X)AMD MI350NVIDIA Vera Rubin(2026年下半期)
メモリ432GB HBM4288GB HBM3E288GB HBM4
メモリ帯域幅19.6 TB/s8 TB/s13 TB/s
FP4演算性能40 PFLOPS--
FP8演算性能20 PFLOPS10 PFLOPS-
出荷時期2026年出荷中2026年下半期

メモリ容量はMI350比で50%増、帯域幅は2倍だ。まもなく登場するNVIDIA Vera Rubinと比較して、AMDはメモリ容量で1.5倍、帯域幅で1.5倍のリードを主張している。

この比較データが正しければ、AMDは今回ハードウェア仕様でNVIDIAを上回ったことになる。

アーキテクチャ:CDNA 5 + Heliosラックソリューション

MI400シリーズはCDNA 5アーキテクチャをベースとし、ラックレベルソリューション「Helios」を組み合わせる。インターコネクトにはUALoE(Ultra Accelerator Link over Ethernet)を採用。AMDはオープンスタンダードを推進し、NVIDIAのNVLinkに依存しないクラスタインターコネクトソリューションの構築を目指している。

各GPUのスケールアウト帯域幅は300GB/sで、UALおよびUEC(Ultra Ethernet Consortium)規格に基づく。

製品ラインは2つの方向に分かれる:

  • MI455X:トレーニング+推論、フラッグシップ版
  • MI430X:HPC向けバリアント

アナリストの試算

S&P Global Market Intelligenceのアナリストは、AMDが2026年に約258,000枚のMI400シリーズチップを出荷し、平均販売価格は約30,926ドルと推定している:

258,000 × $30,926 ≈ 72億ドル

これはAMDのデータセンター事業収入の約25%に相当する。

決して小さな数字ではないが、NVIDIAのデータセンター事業は2025年にすでに1,000億ドルを超えている。市場は均等に分けられているわけではなく、先着順かつエコシステムによるロックインが支配的だ。

CUDA:AMDがどうしても越えられない壁

なぜAMDのハードウェアスペックが時に優れていても、NVIDIAが市場支配を維持できるのか?

答えはCUDAだ。

CUDAは単なるプログラミングフレームワークではない。それは:

  • 10年以上にわたるチュートリアル、Stack Overflowの回答、オープンソースプロジェクトの蓄積
  • PyTorch、TensorFlow、JAXがデフォルトでCUDA上に構築されている
  • ほぼすべてのAI研究チームのツールチェーンがCUDAベース
  • NVIDIAのソフトウェアエコシステムへのエンジニアリング投資は、AMDのROCmをはるかに上回る

AMDに切り替えるコストは、ハードウェアを変えるだけではない。コードの書き直し、ベンチマークの再実行、安定性の再検証が必要になる。数十億パラメータのモデルを訓練しているチームにとって、この切り替えコストはほぼ受け入れられない。

ROCm(AMDのGPUコンピューティングプラットフォーム)はここ2年で大きく進歩し、PyTorchのサポートはかなり充実してきた。しかし、推論最適化、オペレーターライブラリ、デバッグツールといった細部では、CUDAの成熟度にはまだ及ばない。

チップはハードウェアの戦場だが、AIトレーニングのビジネスはソフトウェアエコシステムで決まる。

AMDが勝ったもの、勝てなかったもの

AMDはAIチップにおいて、もはや必死に追いかける段階ではなく、真の競争状態に入っている。MI300Xは2024年、AMDのデータセンター事業をほぼゼロから数十億ドルに押し上げ、MI400はその流れの延長線上にある。

AMDが勝ったもの:

  • メモリと帯域幅のスペックで競争力を持つ
  • オープンなインターコネクト標準により、クラウド事業者にロックイン回避の選択肢を提供
  • 実際の大手顧客を獲得(Microsoft Azure、MetaなどがAMDを採用)

まだ勝てていないもの:

  • ソフトウェアエコシステムの深さ
  • 大規模モデルトレーニングの主流ツールチェーンにおけるデフォルトの選択肢
  • CUDAの堀

258,000枚 vs NVIDIAの可能性のある数百万枚——この差はチップ性能で決まるのではなく、歴史的な蓄積で決まる。

短期的には、AMD MI400は新設データセンターやレガシーな制約のないクラウド事業者にとって、真剣に検討すべき選択肢だ。しかし、NVIDIAの牙城を揺るがすには、1世代のハードウェアのスペック優位だけでは不十分だ。

皮肉なことに、AMDは今回紙面上では勝っている。しかしAI市場は紙面だけで決まることは決してない。

出典:CocoLoop、AMD confirms Instinct MI400 series AI GPUs drop in 2026, next-gen Instinct MI500 in 2027(Tweaktown);AMD's next-generation AI chips set to power 2026 data center growth(S&P Global Market Intelligence);NVIDIA vs AMD 2026: AI Chip Showdown(IBTimes Australia);AMD's next-gen Instinct MI400 GPU confirmed: rocks 432GB of HBM4 at 19.6TB/sec(Tweaktown)