オープンソースの地理情報システム(GIS)ソフトウェアQGISが、AIに関する方針を「認めない」に改めた。QEP 428と番号が付いた提案は、10月7日にQGISの機能拡張提案(QEP)リポジトリでAcceptedとされ、マージされた。タイトルは一文のみで、No AI contributions permittedという。
提案を出したのはQGISコア開発者のNyall Dawson氏で、9月24日に提起し、10月5日に投票へ進んだ。同氏は投票スレッドで賛成票を投じた4人のメンバーを挙げており、議論の中で+1を明言した人も数人いる。最初の投稿には「いいね」が25件、「よくないね」が3件付き、議論には全体で約15人が参加した。QGISは世界で最も広く使われているオープンソースのデスクトップGISの一つで、今回の採決により、AIが書いたコードの貢献を受け付けなくなる。
「人間が関与する」から全面禁止へ
QGISはこれまでQEP 408に沿って運用してきた。中核の原則は「human in the loop」で、提出内容に責任を持つ人間がいればAIツールの利用を認めるというものだ。Dawson氏は6月の開発者メーリングリストの時点で、このルールは「かなり緩い」と指摘し、当時PostGISコミュニティがAIによる提出をめぐって起こした衝突にも触れていた。
今回の提案が挙げる理由は主に二つある。一つはメンテナーが対応しきれないことだ。AIが生成する提出物の量が人間のレビュー能力を超え、無理に見れば審査が粗くなり、通せばコード品質を損なう。もう一つは、オープンソースのコミュニティが人と人との関係で成り立っており、人間のコントリビューターのための余地を残す必要があることだ。
旧方針の運用状況も議論で取り上げられた。計画されていた「extractive」ラベルは作られないままだった。メンバーのuclaros氏は議論の中で、約50件のPRに「AI Assisted」が付けられ、そのうち約40件は最終的にマージされずクローズされたと述べている。この数字は議論スレッドに由来し、ページ上に個別の一覧はないため、現時点では独自に確認できない。
Dawson氏は新ルールを「まず門を閉じ、あとで個別に少しずつ開けていく」ものと位置づけている。たとえばIDEの自動補完の代わりにAIを使う場合や、画面文言の翻訳に使う場合などが想定され、前提として事前に十分な議論を行うとしている。
GDAL、Godotとの比較
同じ界隈ではGDALが先行している。そのルールには「Submission of vibe-coded contributions is banned」と明記され、貢献の主たる作者は人間でなければならない。大規模言語モデルは、強化版の自動補完や、決定論的なアルゴリズムでも行えるような機械的なリファクタリングにしか使えない。無人で動作するエージェントによる提出は一切受け付けず、大規模言語モデルを使った箇所はすべて、チケット、コメント、コミットメッセージのいずれかで明示しなければならない。
ゲームエンジンのGodotは、より「責任の所在」に重きを置く。中心となる一文は「Contribute only what you understand」で、提出者は自分のコードをメンテナーに説明できなければならない。AIを使った場合も、他人のコードを写した場合も、他人のアイデアを実装した場合も、自分で書いていない部分はどこかを明らかにする必要がある。
Dawson氏が6月に投稿した際に挙げたのは、GDALとGodotを組み合わせる案だった。最終的に採択されたQEP 428は、そのどちらよりも厳しい。GDALは少なくとも自動補完と機械的なリファクタリングに余地を残しているが、QGISの今回の版はそれらも後日の個別議論に回している。
運用方法はまだ曖昧
運用面では、今のところ原則しかない。メンバーのtimlinux氏は議論の中で、基準は「良心に従って自分でコードを書いたかどうか」であり、プロジェクトが誰かのパソコンを調べることはないと述べた。つまりこの規則は、主にコントリビューターの自律と、メンテナーがレビュー時に下す判断に支えられている。
境界にもいくつか空白が残る。vpicavet氏とadamjstewart氏は相次いで、issue、コメント、PRの説明文、ドキュメントといった非コードの内容にも同じ規則が適用されるのかと質問した。「AIでコードを書く」ことと「AIでトラブルシューティングやレビューを補助する」ことの線引きについても、議論では意見が分かれた。提案がマージされた時点で、ページ上に正式な回答は見当たらない。
プロジェクト外でオープンソースに参加する開発者にとって、新ルールの直接的な影響は次のとおりだ。QGISのメインリポジトリにPRを出す前に、CopilotやCursorのようなツールが生成したコードをそのまま持ち込むことはできなくなる。中国では、地理情報、測量、行政GIS分野の多くのプロジェクトがQGISをベースに二次開発されている。自前のリポジトリでAIをどう使うかは制約を受けないが、上流へパッチを還元する際は新ルールに従う必要がある。
参考資料: QGIS機能拡張提案リポジトリ(QEP 428議論ページ)、QGIS開発者メーリングリスト、CocoLoop、GDALプロジェクトのAI方針。提案番号、賛成票の人数、約50件のAI Assisted PRという数字の根拠を確認した。