Fable 5.1、キャッシュ読取価格が4分の1に

Anthropicは Claude Fable 5.1 を公開した。モデルIDは claude-fable-5-1 で、Claude API、Bedrock、Google Cloud、Microsoft Foundry で同時に利用できる。仕様と価格が完全に同一の Mythos 5.1 も同時にリリースされたが、こちらは招待制の顧客限定となる。

土台は前世代を踏襲している。100万トークンのコンテキストウィンドウ全体で価格が統一されており、最大出力は12.8万トークン、適応的思考は常時オン、信頼できる知識のカットオフは2026年6月となる。

価格表で変わったのは1マスだけ

入力は100万トークンあたり10ドル、出力は50ドルで前世代と同じ。キャッシュ書き込み価格も変わっていない。唯一変わったのはキャッシュ読み取りで、Fable 5.1 では基本入力価格の0.025倍、つまり100万トークンあたり0.25ドルで課金される。他のClaudeモデルは0.1倍だ。

この値下げが効くのは1つの使い方だけだ。同じ前置き部分が繰り返し読まれるケースである。ざっくり計算すると、20万トークンのシステムプロンプトとコードベースの前置きを、数時間続くエージェントセッションの中で100回読み返すと、キャッシュ読み取りは2000万トークンに達する。旧価格なら20ドル、新価格なら5ドルだ。書き込み価格とキャッシュ可能な最小長である512トークンはどちらも変わっておらず、節約分はすべて「読み返す」という動作から生まれる。

長時間稼働するエージェントこそ、読み返しが最も密集する場面だ。値下げをこの1マスに絞ったことで、狙いは明確になっている。

そのままではエラーになる3つの変更

前世代からモデルIDだけを差し替えてコードを変えずに移行すると、少なくとも3カ所で問題が起きる。

強制的なツール呼び出しが廃止された。 tool_choice を any や特定のツールに指定すると、そのまま400エラーが返る。公式の説明によれば、このモデルは思考が常時オンになっており、強制的なツール呼び出しはその思考をスキップさせてしまう。結果としてモデルは推論過程をツールのパラメータに書き込んでしまい、パラメータの質がかえって落ちるという。構造が保証されたJSONが必要な場合は、厳格モードや構造化出力を使う必要がある。

思考ブロックがモデルを識別するようになった。 各思考ブロックには、それを生成したモデルの情報が記録され、一方向にしか受け渡せない。Fable 5.1 はそれ以前のモデルの思考ブロックを読めるが、逆はできない。セッション中にモデルをアップグレードすれば推論チェーンは保持されるが、ダウングレードするとその分の推論は失われる。ルーティングやフォールバックでセッション途中にモデルを切り替えると、APIは読めないブロックを静かに破棄する。課金はされないが、デフォルトでは通知もされない。

履歴を書き換えると、それ以降の思考ブロックがすべて無効になる。 思考ブロックより前にある何か——システムプロンプト、ツール配列、それより前のメッセージ——に手を加えると、次のリクエストは400エラーになる。この制約は8月31日以降に作成された新規アカウントに強制適用される。よくある落とし穴は、毎ターンの一時的なリマインダーを履歴に挿入して次のターンで削除するケースや、リクエストの間でシステムプロンプトを再構築するケースだ。公式クライアントを使っている場合は気にする必要はないが、自前でメッセージ配列を組み立てている統合は確認が必要になる。

入力で浮いた分は出力で戻ってくることがある

破壊的変更以上に注意が必要なのは、コードを変えなくても自動的に起きるデフォルト動作の変化だ。公式は7項目を挙げており、そのうち3つは直接課金に関わる。

1つ目は並列ツール呼び出しが不安定になったこと。前世代なら1ターンでまとめて複数呼び出していたところを、5.1では1回に1つしか呼ばないことがある。ドキュメントは回答品質は落ちないとしているが、ターン数が増えればトークンと往復コストがかさむ。2つ目は、ファイル全体を書き換える傾向が強くなったこと。結果は通常同じでも、出力トークンが余計にかかる。3つ目は、努力度が低い設定では検索呼び出しが減り、記憶に頼って回答する場面が増えることだ。

これらを価格表と並べて見ると、5.1がやっているのは値下げというより、コストを入力側からターン側へ移し替えることに近い。キャッシュ読み取りは4分の3安くなったが、細切れになったツール呼び出しやファイル全体の書き換えは、入力の5倍にあたる100万トークン50ドルの出力価格を食う。請求額が上がるか下がるかは、自分のエージェントループで「コンテキストを繰り返し読む」動作と「コンテンツを繰り返し吐き出す」動作のどちらが重いかで決まる。移行後に一度評価を回し直し、請求額を突き合わせる作業は省略できない。

新設された4つのベータ機能のうち、セッション途中で努力度を変更する機能と、1ターン限りで有効なシステムメッセージの2つは、まさに上記の落とし穴を回避するために用意されている。もう1つ、デフォルトで有効になったコンテンツ来歴機能もある。生成されたテキストには全プラットフォームで統計的な透かしが入り、取得した画像・動画にはC2PA資格情報が付与される。

ベンチマークの差が最も大きいのは研究系エージェント

公式が公開した横並び比較では、項目ごとの伸び幅にかなりばらつきがある:

ベンチマークFable 5.1Fable 5Opus 5GPT-5.6 Sol
Terminal-Bench-Science 0.1(エージェント型の科学研究)52.6%24.7%29.0%22.4%
Terminal-Bench 4.0(エージェント型コーディング)55.8%42.0%52.3%37.3%
GDPval-AA v2(知識労働、スコア)1853172318241711
OSWorld 2.0(コンピュータ操作、部分達成 / 厳密達成)77.9% / 41.7%72.9% / 36.1%75.4% / 39.6%
Humanity's Last Exam(ツールなし / ツールあり)60.9% / 65.0%57.8% / 63.8%56.6% / 63.6%
AutomationBench(業務ワークフロー)31.4%17.1%26.9%19.6%
CursorBench 3.2.0(エージェント型コーディング)73.4%70.5%70.0%67.2%

差が最も大きいのはリサーチ系エージェントだ。52.6%は前世代の24.7%から2倍以上に伸びている。ここは前世代がOpus 5に明確に劣っていた唯一の項目でもあり(24.7%対29.0%)、5.1は全面的な底上げというより弱点を埋めた形だ。業務ワークフローの項目も同様で、31.4%対17.1%となっている。Mythos 5.1はTerminal-Bench 4.0で別途60.9%を記録している。

一方、通常業務を見ると差は小さい。CursorBenchは70.5%から73.4%へ、伸びはわずか2.9ポイント。ツールありのHumanity's Last Examは1.2ポイント増。知識労働は1853で、Opus 5の1824との差は29点にとどまる。この数字は価格の章とも整合する——2倍の価格で買っているのは長時間タスクや高難度タスクでの性能であり、日常的なコーディングや通常の質問応答での差は、その価格差に見合うかどうか微妙な水準だ。公式のアドバイスも同じ方向を示している。多くの負荷は依然としてOpus 5から始めるべきで、Fable 5.1は難度の高い推論や長時間のエージェント向けに残しておくべきだという。価格差もそれを裏付けている。Opus 5は5ドルと25ドルで、レイテンシもより速い。

参考資料:Anthropicモデルドキュメント、CocoLoop、バージョン変更履歴ページ。価格、コンテキスト仕様、破壊的変更は公式ドキュメントの開示内容に基づいて確認し、長時間セッションのコストは公開単価によるおおまかな試算です。