8月26日、智譜はOpenCodeとOpenRouterで1週間以上匿名稼働していた「Ox Alpha」の正体を明かした。正式名称はGLM-5.3-Flash。同日、重みがHugging Faceに公開され、ライセンスはMITを採用した。
GLM-5シリーズで初めてネイティブにマルチモーダル対応したモデルだ。総パラメータは3200億だが、1トークンあたりの有効パラメータは180億にとどまる。層数はGLM-5.3の92層から45層へ半減し、有効パラメータも前世代の320億から180億へ縮小した。浮いた計算資源はそのまま価格に反映されている。公式価格はGLM-5.3のおよそ10分の1、期間限定の割引でさらに半額となり、Claude Opus 4.8と比べるとおよそ40分の1の水準だ。Z.aiが示すもう一つの数字では、割引価格で1タスクを完了する平均コストは0.045ドルという。
パラメータは半減、スコアは下がらず
Artificial AnalysisのIntelligence Index v4.1.1で、GLM-5.3-Flashは57点を獲得し、世界のフロンティアモデルの水準に入った。これはAnthropicの現行の人気モデルOpus 4.8と同じ階層にあたる。個別項目のばらつきはより大きい。DeepSWE v1.1はGLM-5.2の46.2から63.4に上昇、Terminal-Bench 2.1は84.3、Toolathlon Verifiedは78.4、AutomationBench v1.0.6は48.8を記録した。智譜自前のZ.ai Code Benchでは最高難易度で29.0、Opusの29.5に肉薄している。
マルチモーダルは今世代の新機能だ。OfficeQA Proは62.4、ツール推論付きのCharXivは89.4、ツール付きChartographyは78.0、動画系ではMVBenchが77.8、MMVUが80.5となった。この組み合わせが狙うのは「表やチャートを読めるオフィス向けエージェント」であり、汎用の画像理解を競うベンチマークショーではない。
アーキテクチャ面では、スパースアテンションと線形アテンションを混在させたオープンなフロンティアモデルとして初めての例であり、IndexPoolとmHC(多様体制約付きハイパーコネクション)も導入した。効果は二つの数字に表れている。GLM-5.3と比べてアテンションの計算量は約3分の1(3.0倍削減)、KVキャッシュは約4分の1(4.4倍削減)まで下がった。長文コンテキストのコストの大半はKVキャッシュが占めており、この倍率こそが100万トークンのウィンドウを仕様表上の数字で終わらせず、実際に使えるものにできるかを左右する。
推論トラフィックはすべて国産チップで処理
匿名テスト期間中、Ox AlphaはOpenCode上で一時、呼び出し数が最も多いモデルとなった。智譜によれば、この期間の推論トラフィックはすべて国産AIチップが処理し、エンドツーエンドのサービス性能は従来比3倍に向上、コストは主流のNVIDIA GPU構成と同水準まで並んだという。
この情報の重みはベンチマークスコアに劣らない。この1年、中国製オープンモデルをめぐる典型的な語り口は「スコアは肉薄しているが、実運用はH系カードに頼らざるを得ない」というものだった。推論側が国産シリコン上でフル稼働し、単位コストが主流GPUと拮抗すれば、モデルベンダーの価格戦略はもはやカードの調達価格に縛られなくなる。GLM-5.3-Flashが前世代の10分の1という価格を打ち出せた自信の半分は、ここに由来する。
簡単に試算してみる。期間限定価格の入力100万トークンあたり0.075ドル、出力100万トークンあたり0.25ドルで、1日あたり入力5000万トークン・出力1000万トークンを消費する中規模エージェントアプリの場合、1日のモデル利用料はおよそ6.25ドルとなる(キャッシュ割引や失敗時の再試行は含まない概算)。同じ呼び出し量をOpus 4.8で処理すると、コストは一桁違ってくる。中国国内でエージェント製品を手がけるチームにとって、これは「本番投入できるかどうか」を予算の問題からエンジニアリングの問題へと引き戻すものだ。
デプロイ面では、SGLang、vLLM、KTransformersがすでに対応済みで、APIも同時にdocs.z.aiで公開された。今回MITライセンスを採用したのは珍しい一手だ。GLM旧世代の多くは独自ライセンスを採用していたが、MITの下では商用の再配布にほぼ追加条件が課されず、海外チームが改変する際に改めて法務確認を通す必要がなくなる。
1週間前、智譜はOx Alphaが自社の反復モデルであることをすでに公に認めており、当時示したデータでは呼び出し数がDeepSeekの2倍を超えていた。名前、重み、価格の三つがそろった今、残る問いはどれだけのチームがこれを「安価なテストモデル」から本番の主力モデルへと切り替えるかだ。
参考資料:Z.ai公式ブログ、Hugging Faceモデルページ、CocoLoop、Artificial Analysis。パラメータ規模、ベンチマークスコア、API単価は公式発表ページの記載に基づき確認した。