智譜(Zhipu)は8月14日にGLM-5.3を発表し、8月18日前後にAPIの提供を正式に開始した。価格は入力100万tokenあたり1.40ドル、出力100万tokenあたり4.40ドルで、コンテキストウィンドウは100万tokenに達する。独立評価機関のArtificial Analysisは同日、Intelligence Indexのスコアとして60点を発表し、収録する182モデル中8位と評価した。同価格帯の推論モデルの中央値は35点にとどまる。
今回のニュースはまずスコア、そのうえで価格という二層構造で読む必要がある。Artificial Analysisの同一ラウンドのデータから、オープンウェイトまたは公開API経由で利用できる複数モデルを並べてみる。GLM-5.3は最高設定で59.5点(モデルページ上は四捨五入で60点と表示)、1タスクあたりコスト0.68ドル、1タスクあたり出力トークン数41107。Kimi K3は59.7点、0.84ドル、25474トークン。Qwen 3.8 Maxは58.1点、1.13ドル、38287トークン。xAIのGrok 4.6(high)は60.9点、0.84ドル、21735トークン。スコアで見るとGLM-5.3とKimi K3の差はわずか0.2点で、オープンウェイト陣営のトップ集団でほぼ並んでいると言える。ただしGLM-5.3は同じタスクをこなすのに約6割多くトークンを吐き出すため、単価の優位性はその分相殺される。それでも1タスクあたりコストで見ると0.68ドルはこのグループの中で最も低い。
発表当日、智譜が強調したのはコーディングとセキュリティ
8月14日の発表資料で智譜は、GLM-5.3をGLM-5.2と同じベースモデル上での「極限的なポストトレーニング」の成果と位置づけた。学習環境と学習時間を大幅に延長した一方、ベースモデル自体は変更していないという。公開されたスコアはコーディングとエージェントタスクに集中しており、Terminal Bench 3.0はGLM-5.2の4.6から28.3へ、DeepSWE v1.1は46.2から66.9へ、Agents' Last Examは23.8から28.5へとそれぞれ上昇した。智譜独自のZ.ai Code Bench(High)での正答率は31.4%で、同社が挙げるClaude Opusの29.5%を上回るとしている。社内評価によれば、コーディング能力はGLM-5.2比で50%向上したという。
"GLM-5.3 is the open-source model with the strongest programming ability."
これは智譜自身による位置づけで、オープンソース陣営の中で最もコーディング能力が高いモデルだと主張している。
もう一つ個別に取り上げられたのがサイバーセキュリティ能力だ。智譜によれば、ポストトレーニングの過程で「想定を超える」創発的なセキュリティ能力が現れ、レッドチームテストの段階で累計2436件の脆弱性を発見したという。CyberGymでのスコアは84.5%で、AnthropicのMythos 5(83.8%)に匹敵する。一方ExploitBenchでは54.4%と、Mythos 5の78.0%を明確に下回った。公式説明によれば、カバー範囲はソフトウェアからインターネットプロトコル、ロボットシステムにまで及ぶという。
重みは2週間以内に公開、先行提供はコーディングツール
オープンソース化のスケジュールは、発表から2週間以内(8月28日前後を想定)にHugging Face上で重みを公開するというもので、これは安全性評価と対策強化が完了することが前提となる。ライセンス条件はまだ公表されていない。それまでの間、モデルはAPIおよび一部のコーディングツール経由で提供される。智譜が名指しした連携先は自社のZCode、AutoClawに加え、TraeWork、WorkBuddy、Qoder、CatPawなどのサードパーティ製コーディングプラットフォームだ。
Hacker News上でのArtificial Analysisのデータをめぐる議論は、ユーザー視点での補足を提供している。ある開発者は、GLM-5.3の推論トークンが可視化されている点を評価し、「モデルが脱線したときにすぐ止められる」とコメントした。一方で、トークン消費量がKimi K3より多いと直接指摘する声もあった。トークン課金のチームにとって、1.4ドル/4.4ドルという単価は、より長い出力を掛け合わせたうえで比較する必要があり、価格表だけを見ると実態を見誤る。
国内開発者にとっての損得勘定
今回の価格設定を国産モデルの価格推移の中に置いてみる。GLM-5.2の発表時、智譜はコーディングのスコアがクローズドソースモデルに迫りながら、価格はGPT-5.5の6分の1に過ぎないとアピールしていた。GLM-5.3は絶対スコアをさらに一段階押し上げつつ、単価は同じ水準を維持している。国内の利用者にとって実際の比較対象となるのは、DeepSeek V4 ProやKimi K3のAPI価格、そして各社が用意するピーク・オフピーク割引だ。GLM-5.3はスコア面ではすでにこの土俵に上がっており、価格競争がこれに続くかどうかは、2週間後の重み公開とサードパーティ推論プラットフォームの参入後の価格設定次第となる。
参考資料:智譜GLM-5.3発表資料、Artificial Analysisモデルページ、CocoLoop、Hacker News上の議論、VentureBeat;API入出力価格、Intelligence Indexのスコアと順位、1タスクあたりコストおよび出力トークン数の算定基準(Artificial Analysisの統一評価環境)、公式ベンチマーク数値、重み公開スケジュールを確認済み。