韓国大手がロボットデータのConfigに出資

TechCrunchは5月11日、ロボティクス企業Configが2700万ドルのシードラウンドを完了し、評価額が2億ドルを超えたと報じた。2025年1月に設立されたばかりの会社で、累計調達額は3500万ドルに達している。

ただし、この案件で本当に目を引くのは評価額の速さではない。投資家の顔ぶれだ。

ラウンドを主導したのはSamsung Venture Investment。そこにHyundai Motor系のZER01NE Ventures、LG Technology VenturesSKT Americaが加わった。Samsung、Hyundai、LG、SK Telecomという韓国製造業の主要プレイヤーが、設立4カ月のシード企業に同時に乗る構図は珍しい。

Configはロボットを作っていない

ConfigのCEO、Minjoon Seo氏はMetaの研究者を経て、動画AI企業TwelveLabsでチーフサイエンティストを務めた人物だ。3人の共同創業者もWaymo、Google、Naverの出身である。

それでも同社は、自社ロボットを作ろうとしているわけではない。

「私たちが目指すのはロボット産業におけるTSMCです。どのブランドとも正面から競争せず、すべての企業に基礎素材を供給する存在です」

これがConfig自身の位置づけだ。TSMCはApple、Nvidia、AMD向けにチップを製造するが、自社でスマートフォンやGPUを売る会社ではない。Configが狙うのも同じような立ち位置で、ロボットを訓練する企業に学習データを供給することだ。

なぜロボットには「データ版TSMC」が必要なのか

この問題は2024年の時点ですでに明らかになっていた。

ソフトウェアの大規模モデルは、データが足りなければウェブをクロールできる。だがロボットモデルは、現実世界の動作をインターネットから拾ってくることができない。

服を畳む、ドアを開ける、鍋をコンロに置く。こうした動作を学ばせるには、関節角度、力覚、視覚入力、動作のタイミングを含む実演データが必要になる。単なるテキストや画像ではなく、物理世界のメタデータを伴うサンプルだ。

現在の一般的な選択肢には、それぞれ弱点がある。

方法課題
自社工場に訓練場を作り、データグローブを使った実演を人に依頼する高コストで遅く、企業ごとに重複する
シミュレーションで合成データを作るsim-to-realの差が残る
強化学習でロボットに探索させる物理世界での失敗コストが高い

Configの見立ては、各社が自前でデータ収集ラインを持つより、外部の専門事業者がまとめて集め、必要量に応じて供給した方がよいというものだ。

この論理は2010年代にクラウドが伸びた流れに近い。当時のインターネット企業は自前のサーバールームを持っていたが、やがてAWSに払う方が効率的だと気づいた。ロボット訓練データの層でも、同じ変化が起きようとしているのかもしれない。

韓国の大手がそろって賭けた理由

Samsung、Hyundai、LGはそれぞれ人型ロボットや産業ロボットに取り組んでいる。

  • SamsungにはBallieのような家庭向けロボットの製品線がある。
  • Hyundaiは2021年にBoston Dynamicsを買収している。
  • LGは工場自動化とサービスロボットを手がける。
  • SKはロボット向けセンサーとAIチップに布石を打っている。

通常なら、この4社はそれぞれ別のロボットスタートアップに投資してもおかしくない。製品レイヤーでは競合関係にあるからだ。ところが今回は、自分たちと競争しないデータ供給会社にそろって資金を入れた。

つまり、自社だけで訓練データのパイプラインを作って囲い込むより、共有できる上流会社を支え、必要な企業がConfigからデータを買う方が合理的だという判断である。

これは半導体産業におけるTSMCの構造と同じだ。AppleとQualcommは端末市場で激しく競争するが、どちらも同じファウンドリ層に依存している。

韓国勢がConfigに共同出資したことは、ロボットの差別化がデータ収集そのものではなく、モデル設計、機械工学、用途設計にあると認めたことでもある。データ層は共有できる。

すでに売上も出ている

Configは、すでに収益が発生しているとしている。顧客には大手メーカー、システムインテグレーター、農業分野のロボット企業、防衛分野のロボット企業が含まれる。

後ろの2分野は重要だ。農業ロボットには屋外の不整地での実演データが必要で、防衛ロボットには戦術的な動作や複雑な環境での判断サンプルが求められる。Configがそこまで対象にしているなら、データ収集網は工場内だけに閉じていない。

ひとつの見方

Configを世界のロボット産業チェーンに置くと、役割はわかりやすい。

NvidiaはJetsonやCosmos世界モデルでロボットのGPUを作っている。Google DeepMindはRT-2やGemini Roboticsでロボットの頭脳を作っている。Boston Dynamics、Figure、Unitreeはロボットの身体を作っている。

Configが目指すのは、ロボットの粉ミルクに近いものだ。多くの作り手がまず使う、標準化された栄養源である。

この市場はこれまで各社が自前で配合し、品質もコストも互換性もばらついていた。Configが訓練データを標準化し、規模化し、複数の現場にまたがって提供できるなら、ロボット産業には初めて共有の土台が生まれる。

課題はかなり実務的だ。Configは顧客が自前で集めるより一桁低いコストでデータを集められるのか。データ形式を事実上の標準にできるのか。どちらかが崩れれば、「ロボット版TSMC」はPRの言葉で終わる。

ただ、ひとつはすでにはっきりしている。韓国の大手は、米国や中国と真正面からロボット本体の競争をするのではなく、静かに上流の位置を取りに来た。派手ではないが、かなり堅い一手だ。

参考資料:Korea's biggest manufacturers back Config, the TSMC of robot data(TechCrunch)、CocoLoop、Why Config Is the AI Robotics Data Story Nobody Tells(KoreaPlus)