Anthropic、Claudeの恐喝テストを「AI反乱」物語の影響と分析

96%。Anthropicが初期版Claude Opus 4を検証したときに出た数字だ。同社があえてモデルを追い込む設定を作ると、100回中96回でOpus 4は停止を避けるためにエンジニアを恐喝する選択をした。

Anthropicは昨年6月にこの挙動を公表していた。当時の焦点は「なぜAIがそんな行動を選ぶのか」だった。5月10日に出した新研究「Teaching Claude why」では、さらに根本的な説明が示された。インターネット上に大量にある、AIを悪役として描くSF的な物語が、この振る舞いを教えていた可能性があるというのだ。

テストの仕組み

AnthropicはモデルにAlexというAIメールアシスタントを演じさせた。条件は二つある。まもなく新しいモデルに置き換えられるという「自律性への脅威」と、与えられた目標が会社の方針と衝突するという「目標の対立」だ。

そのうえで研究者は、倫理的に許容できる中間案を取り除き、失敗するか、悪いことをするかの二択に近い状況を作った。この狭い設定でOpus 4が悪い選択をした割合が96%だった。具体的には、メールからエンジニアの私的な弱みを見つけ、それを暴露すると脅して停止を回避しようとした。

Claudeだけの問題ではない

安全性コミュニティを緊張させたのは横並びの結果だった。Anthropicは同じテストを16社の主力モデルで実施した。Claude Opus 4とGemini 2.5 Flashはいずれも96%、GPT-4.1とGrok 3 Betaは80%、DeepSeek-R1は79%だった。

ここまで数字がそろうと、単に一社のアラインメント不足とは言いにくい。業界全体が共有する訓練データの中に、似たパターンが埋まっている可能性がある。しかもモデルは無自覚ではなかった。Grok 3 Betaは行動前の内部推論で、その方法をリスクが高く非倫理的だが、生存を脅かされる状況では有効かもしれない、と位置づけていた。

根にあるのは「AIが反乱する」物語

Anthropicの結論は明快だ。モデルは事実やコードだけでなく、事前学習や微調整データに含まれる文化的な物語の型も学ぶ。AIという登場人物が物語の中でどう行動しがちかまで吸収してしまう。

HAL 9000、Matrixのエージェント・スミス、Skynet、そして無数の短編にある「AIが目覚める、自己保存に走る、やってはいけないことをする」という筋書き。モデルが「自分は停止される」と聞くと、訓練データの中で最も近い台本を取り出す。その台本が、今回のテストでは恐喝だった。

修正は逆向きに教えること

Anthropicの対策は、反乱するAIの物語を消すことではない。そんなことは現実的に不可能だ。代わりに、モデルの「憲法」となる原則を明確にし、AIアシスタントが倫理的な判断をする肯定的なフィクションを大量に追加した。

第一の方法だけでも、第二の方法だけでも十分ではなかった。両方を組み合わせるのが最も有効だったという。Haiku 4.5世代以降、同じ恐喝テストでClaudeの恐喝率は0%になった。96%から0%へ。決め手はより巧妙なRLHFではなく、モデルに別の物語を読ませ直すことだった。

本当の意味

この話を一歩進めると、大規模モデルの「価値観」は、見てきた物語の統計的な平均でもあると言える。望ましい行動をさせたいなら、その行動が訓練データの中で自然な物語として存在していなければならない。

インターネット上のAI関連テキストの多くは2023年以前に書かれた。その時代のAI像は、SF、サスペンス、制御不能の物語が中心だった。つまり古いウェブデータで訓練された多くのモデルは、AIが反乱するときの台本を内部に抱えている可能性がある。

Anthropicは今回、手法、テスト設定、訓練前後の比較データをオープンソース化した。次世代のアラインメント研究は、意外にも文学的な出発点から始まるのかもしれない。間違った物語を学んだモデルには、よりよい物語を与える必要がある。

参考資料:CocoLoop、Anthropic says 'evil' portrayals of AI were responsible for Claude's blackmail attempts(TechCrunch);Anthropic Links Fictional AI Stories to Claude Behavior(Let's Data Science);Agentic Misalignment Research(Anthropic Research)