LeCun氏、Meta退社後に10.3億ドル調達し世界モデル構築へ

Yann LeCun氏がMetaを退社した後、誰もが待ち望んでいた行動に出た。

同氏はAMI Labsを設立し、10.3億ドルのシードラウンドを評価額35億ドルで完了した。欧州史上最大のシードラウンドである。そして宣言した。「次の単語を予測する仕組みに頼らないAIを作る」と。

LeCun氏が大規模言語モデルを好まない理由

これは新しい立場ではない。LeCun氏は長年にわたりLLMの手法を批判してきた。核となる主張は単純だ。テキスト予測だけでは真の理解は生まれない。

どれだけ多くのテキストをモデルに与えても、学習されるのは言語の統計的パターンであり、世界そのものの仕組みではない。子どもがコップが机から落ちるのを見れば、重力についての文章を読んだことがなくても割れるとわかる。LLMにはそれができない。物理世界に対する直接的な知覚がないからだ。

LeCun氏はこの問題を「グラウンディング」と呼ぶ。モデルが言葉だけではなく現実世界と接触する必要があるという意味だ。

AMI Labsは、この問題に対する同氏の実践的な回答である。

JEPAとは何か、LLMとどう違うのか

同社の中核技術はJEPA(Joint Embedding Predictive Architecture、統合埋め込み予測アーキテクチャ)で、LeCun氏が2022年に提唱したフレームワークである。

LLMとの最も根本的な違いは予測対象にある。

  • LLM:次のトークン(単語断片)を予測
  • JEPA:抽象的な状態表現を予測

一見すると難解だが、本質的な差は大きい。LLMはすべての単語を予測対象とし、「the」や「a」のような情報量の少ない機能語にも容量を割く。JEPAはこれらを飛ばし、より抽象的なレベルで予測する。「この動作をしたら、世界はどんな状態になるか」という形だ。

これが世界モデルと呼ばれる理由である。言語の表面的なパターンではなく、世界の動作原理を内部に構築しようとする。

実用的な影響:

  • ロボティクス:動作の結果を予測する必要があり、JEPAは自然に適合
  • 医療診断:物理的プロセスに関する因果推論が必要
  • 産業制御:状態変化の継続的な追跡が必要

AMI LabsのCEOであるAlexandre LeBrun氏は、次のように皮肉を込めて述べた。

「世界モデルはすぐに次の資金調達のバズワードになると予測する。半年以内に、どの企業も資金調達のために自社を世界モデル企業と呼ぶようになるだろう」

10.3億ドルのシードラウンドを調達したばかりの人物が言う言葉として、皮肉が効いている。

会社の体制

AMI Labsの本社はパリだが、ニューヨーク(LeCun氏がNYUで教鞭をとる)、モントリオール、シンガポールにもチームを置く。

コアチーム:

  • 執行会長:Yann LeCun氏(2018年チューリング賞受賞、元Meta最高AI科学者)
  • CEO:Alexandre LeBrun氏(連続起業家、AI企業をFacebookに売却した経験を持つ)
  • CSO:Xie Saining氏(視覚表現学習研究者)

リード投資家はBezos Expeditions、Cathay Innovation、Greycroft、Hiro Capital、HV Capital。ベゾス氏の資金が入ったことは、これが単なる学術的な試みではないことを示している。

注目すべきタイミング

この発表は、Fei-Fei Li氏のWorld Labsが10億ドルを調達してから1カ月後に行われた。両社とも世界モデルに賭けており、両方ともAI分野のトップ学者が創業し、驚異的なシードラウンドを獲得している。

これは偶然ではない。投資家は、現在のLLMスケーリング路線が何らかの天井に近づいており、次世代AIには根本的に異なるアーキテクチャが必要になる可能性を嗅ぎ取っている。

LeCun氏の「テキスト予測では不十分」という主張は、かつては単なる学術的な論争だった。今や10.3億ドルが背後に立ち、論争は賭けに変わった。

なぜ容易ではないのか

JEPAは論文として存在してから4年が経つが、実際のシステムで実証された成果は限定的だ。この4年間でLLMはベンチマーク上で目に見える進歩を遂げてきたが、JEPAの進展は比較的静かだった。

LeCun氏の批判は正しい。しかし問題を指摘することと、より良い解法を生み出すことは別問題である。

たとえJEPAの方向性が正しくても、AMI Labsはすでに大きな先行優位性を持つ業界と正面から競争しなければならない。OpenAI、Anthropic、GoogleはLLMの限界を認識しており、マルチモーダルやエージェンティックな方向に進んでいる。ただLeCun氏ほど徹底的ではないだけだ。

AMI Labsの評価額は35億ドルだが、まだ製品はない。これは信念への資金調達であり、製品への資金調達ではない。

しかし、もしLeCun氏が正しければ、今投入された10.3億ドルは、この10年で最も価値ある賭けになるかもしれない。

出典:Yann LeCun's AMI Labs Raises $1.03B for World Models Development(TechCrunch);AMI Labs Secures $1B Seed Round Led by Yann LeCun(Crunchbase News);Yann LeCun's AMI Labs Raises $1B in Seed Round to Develop World Model AI Systems(The AI Insider);CocoLoop;[AINews] Yann LeCun's AMI Labs launches with a $1B seed @ $3.5B to build world models around JEPA(Latent Space)