Liquid AIは、2B級のモデル6種からなる「LFM3」ファミリーを発表した。すべて単一の1.7Bベースモデルから分岐したもので、テキスト、ビジョン、音声、全モーダル対応の各1種に加え、ビジョン版とオムニ版を特化させた意思決定向けモデルが2種ある。重みはHugging Faceで公開され、オープンウェイトとして表示されている。LFM PlaygroundやLiquid独自のAPIからも利用できる。
アーキテクチャ面では、LFM3は純粋なTransformerを採らないというLiquidの方針を引き継いでいる。
"LFM3 combines three operators: gated short convolutions, sliding-window attention (SWA), and global attention."
(LFM3は、ゲート付き短畳み込み、スライディングウィンドウ注意、グローバル注意の3種類の演算子を組み合わせている。)
大半の層は短畳み込みとスライディングウィンドウが担い、グローバル注意はごく一部の層にしか置かれていない。これが、長いコンテキストでのメモリ使用量を抑えられる理由だ。
成績表を分解して読む
テキストモデルのLFM3-1.7Bは、ベンチマークの平均スコアが49.37。Liquidが比較対象に挙げたモデルのうち、自社の前世代LFM2.5-2.6Bは31.55、MiniCPM5-2Bは39.19、パラメータ数が5倍以上あるQwen3.5-9Bは47.24だった。
項目ごとの差は大きい。指示追従のIFEvalは96.66、ツール呼び出しのBFCL V4は71.39といずれも高く、この2つはまさにオンデバイスのエージェントが最もよく使う能力だ。一方、長文脈と難問の知識では分が悪い。RULER 128Kは65.56にとどまり、Qwen3.5-9Bは87.11。GPQA Diamondも63.37対80.40だった。つまり、平均で先行できているのは主に指示・ツール系の問題のおかげで、知識集約型のタスクでは依然として2Bモデルということになる。
ライセンスの具体的な名称は、公式ブログの閲覧できる範囲には記載がない。商用利用の条件はモデルカードで確認する必要がある。
スループットを計算してみる
今回の目玉はオンデバイスでの数値だ。llama.cpp、Q4_0量子化、32Kコンテキストという条件で、Liquidは、LFM3のデコード速度が3種類のデバイスで次点のモデルの1.8〜2.8倍に達し、メモリ使用量も最小だとしている。
サーバー側の数値も1つ示された。NVIDIA B300を1枚使い、SGLang、BF16、同時1024リクエストの条件で、1日あたり約36億トークンを生成できるという。概算すると、36億を86,400秒で割ると毎秒約4.2万トークン、これを1024の同時接続に割り振ると1接続あたり毎秒約40トークンで、人が文字を読む速さをかなり上回る。この基準なら、1枚のカードで千を超える会話を滞りなくさばけることになり、小型モデルで大量の分類、抽出、ルーティングを行うチームにとってはより参考になる。
これらの数値はLiquid自身による測定で、第三者による再現はない。テストで使ったプロンプト長と出力長も明記されておらず、負荷が変われば結果は大きく違ってくる可能性がある。
狙いはファインチューニング
Liquidが今回繰り返し強調するのは、「すべてのモデルを単一GPUでファインチューニングできる」という点だ。6モデルが1つのベースを共有しているため、チームはまずテキスト版で業務能力を調整し、それをビジョンや音声の系統に移すことができる。Liquidはローカル実行とファインチューニングのドキュメントも併せて提供している。
スマートフォン、車載機、産業用制御機器など、ネットワークに接続しにくい場面では、1GBのサイズ、256Kのコンテキスト、単一カードで調整可能という3点が、LFM3の狙う領域だ。そこを取れるかどうかは、この成績表だけでなく、実際のタスクでコミュニティが行うファインチューニングの結果次第である。
参考資料:Liquid AI公式ブログ、CocoLoop、Hugging Faceのモデルページ。ベンチマークスコア、オンデバイスのデコード倍率、B300の1日あたりスループットはいずれもLiquid自社測定の基準による。毎秒のスループットは、編集部が1日あたりの数値から概算したもの。