1年余り前、MCP(Model Context Protocol)はAnthropicが公開したプロトコルで、開発者コミュニティの一部で流通していた。大半の人は、Claudeがさまざまな外部ツールに接続できるようにする、AIツール連携の技術仕様と見なしていた。
今、それがGoogle CloudとServiceNowの共同発表に登場した。ユースケースは5Gネットワークの自己修復だ。
今回発表された内容
4月22日、Google CloudとServiceNowはGoogle Cloud Nextカンファレンスで提携を発表した。中核は3つのプロトコルの組み合わせ活用である。
- MCP(Model Context Protocol):AIと外部ツール・データのリアルタイム交換のための標準インターフェース
- A2A(Agent-to-Agent):AIエージェント同士が指示や情報をやり取りするプロトコル
- A2UI(Agent-to-UI):AIエージェントがユーザーインターフェースを直接操作するプロトコル
3つのプロトコルを重ねると、何が起こるのか。
5Gネットワーク運用を例に挙げる。GeminiのAIエージェントがネットワークの異常を検知し、MCPでリアルタイムのネットワークデータを取得、A2Aプロトコルで複数のサブエージェントを連携させて原因を分析し、最後にServiceNowの自動化ワークフローを起動して修復を完了する。すべて人間の介入なしで行われる。
点在するツール呼び出しが、真の自律運用へと変わる。
エンタープライズAIの本当の課題
この発表が注目に値するのは、エンタープライズAI導入における極めて現実的な課題に触れているからだ。
AIが十分に賢くないのか?その問題は2024年までにほぼ解決された。エンタープライズAIを本当に阻んでいるのは、システム間の連携である。
大企業のIT環境は典型的にはこうだ。ネットワーク運用システムはServiceNow、データはBigQueryに保存、モデルはGemini上で動作、セキュリティポリシーはまた別のシステム。各システムはサイロ化しており、AIの能力は内部に閉じ込められて外に出られない。
MCPが行うのは、これらのサイロ間に統一された経路を構築することだ。
A2Aはさらに難しい問題を解決する。複数のAIエージェントが連携する際の「言語」の問題だ。異なるシステムで動作するエージェント同士が、共通の通信フォーマットを持つことで初めて、バラバラに動くのではなく真に協調できる。
ゼロコピーデータ:もう一つの詳細
発表では「Workflow Data Fabric」にも言及され、BigQuery MLのゼロコピーデータ接続が使用されている。
この詳細は重要だ。エンタープライズAIによくある落とし穴として、AIにデータを分析させるには、通常まずデータをAIシステムにコピーする必要がある。これは時間がかかり、セキュリティやコンプライアンス上のリスクも伴う。コピーされたデータの責任は誰が負うのか。
ゼロコピーとは、AIがデータを移動させるのではなく、データが存在する場所で直接アクセスすることを意味する。金融や医療などデータに敏感な業界では、このアーキテクチャはモデル能力そのものよりも重要である。
もう一つのシグナル:パートナー賞
Google Cloudは今回、ServiceNowに2026年度パートナー・オブ・ザ・イヤー賞を4部門同時に授与した。そのうちの1つは「Agentic AI Innovation」という名称である。
GoogleがエージェンティックAI専用のパートナー賞カテゴリーを設けたのはこれが初めてである。
この賞カテゴリーの創設自体が一つのシグナルだ。Googleは、エージェンティックAIがモデル能力の付属品ではなく、ビジネス価値を独立して評価できる段階に達したと見なしている。
MCPの歩んできた道
AnthropicがMCPを公開してから現在まで、おおよそ次のような道のりである。
- AIツールエコシステムの標準:CursorやClaude Codeなどのツールが外部データやシステムに接続できるようにする
- Linux Foundationが引き継ぐ:業界インフラとなり、Anthropic独自のプロトコルではなくなる
- Google Cloudによるエンタープライズ展開:5G運用や小売の予知保全などの本番シナリオで使用される
この経路は、初期のHTTPを彷彿とさせる。研究ネットワークから商用インターネットへと拡大し、誰もが使っているが特に意識しない基盤層となった。
規模と重要性は比較にならないが、普及の論理は似ている。
MCPは現在、開発者側のAIツール統合と、エンタープライズ側の自律運用という2種類の需要を同時に担っている。これらの2つのシナリオのユーザーも要件もまったく異なる。
両方を同時にうまくこなせるかどうかこそが、MCPが真の標準となるための試練である。
参考元:CocoLoop、ServiceNow and Google Cloud Unite AI Agents for Autonomous Enterprise Operations(Google Cloud Press Corner)