『勝利の女神:NIKKE』のPC版ランチャーが読み込む公式CDN上のファイルが改ざんされていたことが、プレイヤーや独立系の研究者によって明らかになった。11月3日にGitHubで公開された分析報告によると、仕込まれたローダーは遠隔操作型のトロイの木馬をダウンロードして実行するといい、該当するPCは完全に侵害されたものとして扱うべきだとしている。
InvenGlobalの記事公開時点で、開発元のSHIFT UPと発行元のLevel Infiniteはいずれも公式な見解を出していない。以下の日時はすべて外部の分析によるもので、照合できる公式発表はない。

時系列と、食い違う2点
InvenGlobalがまとめた時系列は次のとおり。9月27日、攻撃者のコードがCDN上の公式JavaScriptファイル3本に入り込んだ。これらはランチャーの起動時に読み込まれる。10月28日には3本目のファイルが元の場所で修復された。遅くとも11月1日以降、ランチャーを開くと遠隔操作プログラムをダウンロード・実行する可能性があった。ただし毎回発動するわけではない。11月3日の17時04分と17時21分(GMT)に2本のファイルが差し替えられ、18時31分に攻撃者のサーバーが応答を停止。18時59分の時点でも、2つのCDNノードが改ざん済みのコピーを配信していた。
GitHubの報告は、この説明と少し異なる。報告が挙げる公式アセットは4本で、確認済みなのはFeedListとvue-bucketの2本。11月4日の再確認では4本とも正常なバージョンに戻っていたという。9月27日は、約5年間放置されていた制御用ドメインinsightjs.comが再登録された日として記されている。また、ローダーが設置されてからペイロードが実行されるまでに約37日あったとも指摘しており、その間にランチャーを開いたプレイヤーが異変に気づけたとは限らない。
なぜゲーム向けのトロイの木馬がClaude Codeの設定を盗むのか
報告によると、このトロイの木馬には19のコマンドがあり、任意のコマンド実行、対話型シェル、ファイル転送、スクリーンショット、認証情報の収集をカバーする。収集対象のパスは約1,790件で、名指しされているAI・開発ツールにはClaude Code、Gemini CLI、Cursor、Windsurf、MCPの設定が含まれる。さらに、AIサービス事業者のAPIキーやOAuthトークン、クラウドのキー、パッケージレジストリのトークン、CIやKubernetesの認証情報、SSH鍵とGPG鍵、ブラウザのセッション、28種類の暗号資産ウォレット拡張機能のデータも狙う。
この一覧は、先月のLiteLLM汚染事件とよく似ている。10月21日、改ざんされたLiteLLM 1.107.0がPyPIに公開された。この情報窃取プログラムもブラウザの認証情報とクラウドのキーを狙っており、Wizは、攻撃者が数時間後には盗んだAWSの認証情報の検証を始めたと公表している。侵入経路は大きく異なり、一方は開発者の依存パッケージ、もう一方はプレイヤーのゲームランチャーだが、欲しいものはほぼ重なる。開発者のローカル設定ファイルには平文のキーが置かれていることが多く、そのキーは計算資源の利用枠やクラウドのリソースにそのまま換えられる。LiteLLMの事例でも、攻撃者は認証情報を検証したあと、Bedrock上のモデルを一覧していた。
報告は、確認できていない点をいくつか明記している。攻撃者がどうやってCDNの書き込み権限を得たのか、実際の感染規模、同じ時期にほかの資産が汚染されていたかどうかである。作者はまた、悪意のある第2段階のスクリプトを独自には復元できていないこと、コード中のK2Fというブランド表記や証明書情報は攻撃元の特定には使えないことも説明している。今回の事件とLiteLLMの件が関連しているという証拠は、現時点では一つもない。
確認方法と対処
PC版を遊んだことのあるユーザーは、次の手順で確認できる。
- NIKKEのインストールフォルダ内にある
Launcher/intl_serviceのdebug.logを開き、k2f_chanを検索する。この文字列があれば、遠隔操作プログラムが動作した可能性がある。 - 公式が修正を確認するまでは、PC版ランチャーを起動しない。再び使う前にキャッシュを消去する。
- 痕跡が見つかった場合は、まずそのPCを隔離して証拠を保全し、そのうえで安全な端末からパスワードの変更、全セッションのサインアウト、APIトークンとSSH鍵の失効を行う。
- ウォレットのシードフレーズはローテーションでは対処できない。新しいウォレットを作り、資産を移す必要がある。
報告はさらに、このトロイの木馬はローダーを自分で再インストールできるため、ファイルのハッシュだけで判断するのは信頼できないと注意を促している。Chromeのディレクトリを丸ごと削除することも避けるよう勧めている。
参考資料:GitHubの独立分析報告、InvenGlobal、CocoLoop。汚染されたファイルの数は両者で説明が異なり、感染規模と侵入経路はいずれも未確認で、公式の回答はまだない。