World Labsが新モデル「Atlas」を公開した。同社はこれを空間知能向けの「オムニモーダル」モデルと位置付けており、テキスト、画像、動画、3Dデータが同一のアーキテクチャで処理され、出力は画像、動画、点群、あるいは3Dガウシアンスプラッティングのいずれにもなり得る。同社のこれまでの公開の動きは資金調達と自社プラットフォーム「Marble」に集中しており、モデル本体がこれほど完全な形で公開されるのは今回が初めてだ。
Atlasの技術構成はマルチモーダルな自己回帰拡散トランスフォーマーで、拡散部分にはrectified flow(矯正フロー)を採用している。カメラの位置と向きをネイティブな条件入力として扱っている点が、このモデル最大の技術的な難所だ。動画を生成する際、カメラがどちらに、どのくらいの速さで動き、どの焦点距離で撮るかをピクセル単位で指定できるため、「ゆっくりズームイン」とプロンプトに書いてモデルが意図通りに解釈してくれるのを祈る必要はない。
1つのモデルで4種類のタスクをこなす
公式が挙げる機能は4グループある。1つ目はカメラ制御可能な生成で、テキストまたは1枚の画像から、ユーザーが指定したカメラの軌道に沿って動画を生成する。2つ目はスパース再構築で、1枚から100枚超の写真を入力すると、対応するシーンの3D表現を出力する。3つ目は時空間シミュレーションで、既存の動画の構図やカメラ位置を変更するもので、公式はロボット向けのReal-to-Sim用途を挙げている。4つ目は比較的従来型の、テキストからの画像生成と360度パノラマだ。
動画出力の上限は1440p、1分間だ。今日の動画生成モデルの水準からすると野心的な数字ではなく、動画に特化した製品はすでに長さの面でより先に進んでいる。ただしAtlasが訴求しているのは長さではない。公式が示す比較データはカメラ追従タスクにおけるもので、AtlasはFLUXを相手に93%というユーザー選好率を記録した。3D再構築については、専門の再構築SOTAモデルを上回ったとしており、平均絶対相対誤差は25.3だという。
汎用モデルが2つの専用分野のいずれでも見劣りしない――これがAtlasが語りたいストーリーだ。それが成立するかどうかは、初期テスターが公開するサードパーティーの検証結果次第となる。
カメラ制御がなぜ分岐点なのか
この2年間、動画生成モデルのカメラワークは基本的に意味的な推測に頼ってきた。「周回撮影」と書けば、モデルはおおよそ回転しているような映像を出力するが、何度回転するのか、中心はどこか、ブレはないかは一切保証されない。映像のプリビジュアライゼーションを行う人々の一般的な対処法は、十数本生成してその中から1本を選ぶことだ。ロボットのシミュレーションを行う人々に至っては、そもそも使わない。シミュレーションには再現可能なカメラ外部パラメータが必要で、「動いているように見える」だけでは価値がないからだ。
位置と向きを条件入力にすることは、この課題を生成の問題から制御の問題へと格下げすることを意味する。モデルは依然として画面の内容を作り出しているが、カメラという次元だけはランダム性から解放される。下流への最も直接的な影響は、生成結果を3D再構築と整合させられる点だ。同じシーンから動画と、点群およびガウシアンスプラッティングの両方を得られ、両者は同じ座標系を共有する。World Labsはこの方向性を「空間知能」と呼んでおり、フェイフェイ・リーが以前これを理由に10億ドルの資金調達を行った際の説明もこれと同じだった。
初期テストと、Marbleの次バージョン
Atlasは現時点で一部のパートナーにのみ公開されており、申請フォームを通じた提供で、公開APIも価格設定もない。同社は、AtlasがMarbleの将来バージョンを支えることになると明言している。MarbleはWorld Labsがすでに公開している空間生成プラットフォームで、現行版はまだ旧世代の技術スタックで動いている。
このペース配分には意図がある。World Labsは創業以来、製品面での動きが一貫して遅く、Marbleが初めて実際に触れるものだった。そしてAtlasは公開リリースという段階を丸ごと飛ばしている。評価額も調達額も高く積み上げている企業にとっては、誰でも試せるデモを公開するより、ロボットや映像業界のごく少数のパートナーにまずモデルを渡すほうが実利は大きい。前者からはシミュレーション精度が十分かどうかのフィードバックが得られるが、後者はおそらくソーシャルメディア向けの短い動画を量産するだけに終わる可能性が高いからだ。
Atlasの実質的なハードルをざっと試算してみる。1分・1440pの動画に加え、同じシーンの3D出力まで生成するとなると、1回の推論にかかる計算コストは消費者向けサブスクリプションでは到底賄いきれない。価格欄が空欄のままなのは、おそらくこれが理由の一つだろう。モデルの形はひとまず収束したが、それをどう売るかはまだこれからの課題だ。
参考資料:World Labs公式ブログ、CocoLoop。モデルアーキテクチャ、動画の長さと解像度、カメラ追従の選好比率、再構築誤差の数値はいずれも公式発表の内容に基づいて確認済み。