Anthropic のCEO、Dario Amodei氏が9月12日に公開した長文の提言は、各社と各国政府が足並みをそろえてフロンティアモデルの能力向上のペースを落とし、安全性とアライメントの検証に余裕を持たせるべきだと訴えるものだった。Sam Altman氏とElon Musk氏も相次いで賛意を示した。この呼びかけは本来、業界内部に向けたものだったが、3日のうちに最も大きな反応を返してきたのはワシントンと北京で、そのどちらも同じ方向を向いていた。
アイルランドのゴルフ場からの反応
9月13日、トランプ氏はアイルランドのDoonbegゴルフリゾートで記者団にこの件を問われ、警告を突っぱねた。発言は次の通り。
We're leading China in AI, we're the most sophisticated country in the world, and frankly, I want to keep it that way because whoever wins AI, wins.
同氏はさらに、AIのリスクをめぐる懸念の背景に「非常にネガティブな勢力」があると主張し、AIやデータセンターを標的にした動きがあるとも述べた。公開された報道を見る限り、ホワイトハウスはこの件について文書や大統領令を一切出しておらず、あくまで記者団への即興的な発言であって、政策としての動きではない。
北京が使った言葉は「フィアモンガリング」
9月14日、中国外務省の郭嘉昆報道官は定例記者会見でこの件に触れた。
Fear-mongering, confrontation, competition will just disrupt [the] process of global AI governance.
環球時報の表現はさらに踏み込んでおり、この提言には「中国を狙った封じ込め条項が盛り込まれている」とし、AI分野における冷戦の脚本だと評した。中国の安全保障当局トップも同様の見方を示したと伝えられているが、これは提案が中国の発展を抑え込む狙いだという判断で、この部分は現時点で伝聞情報にとどまり、原文は公開されていない。
両者の発言に共通しているのは、どちらも「減速」を交渉のテーブルに乗せる気がないという点、そして双方とも相手を理由に自分たちが減速できない事情を説明している点だ。ワシントンの理屈は中国に追いつかれてはならないというもので、北京の理屈はそもそもこの提言自体が中国を狙ったものだというもの。二つの言い分は互いの根拠として機能している。
提言そのものに残っているもの
Amodei氏の案には実行可能な部分もある。Anthropicはすでに条件を文書化して提出済みで、第三者評価チームへの執務スペースや入館権限の提供、社内リスクチームへのアクセス、編集による統制を受けない発表権などが含まれる。OpenAIは最初のステップに追随する意向を示しているが、具体的な条件やスケジュールはまだ示されていない。3段階の計画のうち、残る2段階については今のところ動きがない。
両社が示したものは同じ重みではない。Anthropicが提出したのは検証可能な具体的な取り決めであるのに対し、OpenAIは現時点で意思表明にとどまっている。同じ提言に賛同していても、署名した人数と実際に文書化された条項の間には小さくない差がある。
この道筋と政治的な表明は、そもそも同じ次元の話ではない。前者は企業間の自発的なコミットメントと第三者検証によって進むもので、立法を必要としない。後者が左右するのは、トップダウンの外圧をかける主体が存在するかどうかだ。9月13日と14日のこの2つの表明は、その外圧という選択肢を両方向から半分ずつ閉ざしたに等しい。
今後どう見ておくべきか
今回の応酬の影響は、すぐに業界側に波及するだろう。米国側が規制を強化するつもりがないということは、フロンティア研究所のリリースペースが規制圧力によって落ちることはないという意味であり、中国側がこの提言を封じ込め策と位置づけたことで、米中間で「共同減速」について対話が生まれる余地もほぼ消えた。米中首脳会談が近づく中、AIはガバナンスの議題としてではなく、競争の議題として卓上に上る可能性が高い。
開発者や企業ユーザーにとって、このニュースが意味する実際のところは、ペースは変わらないということだ。モデルの改良、値下げ、性能面での飛躍は、各社独自のスケジュール通りに進み、外部からのブレーキがかけられる気配はない。注目すべきは別のシグナルで、どの企業がすでに予定されていたリリースを後ろ倒しにするか、どれだけ延ばすか、理由を示すかどうかだ。これこそが、この提言に実効性があるかどうかを検証できる唯一の材料であり、現時点でそれを公に行った企業はない。
参考資料:NPR、CocoLoop、CNBC、環球時報。トランプ氏および中国外務省報道官の発言は、各メディアの英語原文に基づいて確認した。