テンセント音楽、AI創作ツール「MusicBuddy」公開

テンセント音楽がミュージシャン向けのAI創作プラットフォーム「MusicBuddy」を発表した。公式サイトmusicbuddy.cnが既に公開されており、「ミュージシャンのためのインテリジェント創作プラットフォーム」と位置付けられている。公式の説明によれば、着想探し、楽曲のブラッシュアップから発表・プロモーションまで、AIとの対話だけで完結できるという。

現時点では一般登録はまだ開放されていない。ログインしたうえで先行体験リストに入って初めて利用できる。数日前には既にメディアがテンセント音楽が本製品を内部テスト中と報じており、今回は公式サイトと紹介ページとして正式に公開された形だ。

対話パネル付きの編曲ソフト

これまでに公開された画面を見る限り、MusicBuddyは従来型DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)の見た目を保っている。メイン作業画面はマルチトラック編集ビューで、伴奏・ボーカル・ドラムがそれぞれ波形として個別トラックに表示される。上部にはプロジェクト管理、メトロノーム、テンポ設定、書き出しといった通常機能が並ぶ。

違いは左側にある。エディターにAI対話パネルが組み込まれており、制作者は口語的な指示を出すだけで編曲の調整、楽器の差し替え、音量調整、リバーブの変更、歌詞の修正といった作業を行える。フェーダーを自分で動かしたりパラメータをいじったりする必要はない。プラットフォームの背後には複数の音楽生成モデルが接続されているという。

着想機能については、楽曲の再生実績、ファンの好み、話題性のシグナルを組み合わせて作曲の方向性を提案すると公式は説明する。完成後はワンクリックで発表でき、複数の音楽プラットフォームに同期したうえでプロモーション段階に進める。

奨励施策については一文のみ公開されている。基準を満たした作品には奨励金や深い協業機会を得られるチャンスがある。基準が何を指すのか、奨励金がいくらなのかは公式サイトでは明らかにされていない。

大手3社、3つの方向性

中国大手テック企業はこの1年、それぞれ異なる方向でAI音楽ツールを手がけてきた。

主な利用者特徴
アリババ HappyShrimpショート動画クリエイターAIによる作詞作曲、自動編曲、ボーカル合成で完成品を素早く出力
バイトダンス 妙響Douyin(抖音)クリエイター編集フローと連携し、ショート動画向けの軽量なBGM制作に特化
テンセント音楽 MusicBuddyインディーズミュージシャン着想から制作、微調整、発表・プロモーションまでの一気通貫

前者2社の出口はショート動画だ。楽曲が完成しても、主に動画のBGMとして使われる。一方テンセント音楽の出口は自社が持つQQ音楽、Kugou、Kuwoといったプラットフォームで、完成した楽曲は配信され、実際に聴かれ、再生数として計測される対象になる。だからこそMusicBuddyの画面はよりプロ向けソフトに近く、トラック分割を保ったまま細かく修正できる仕様になっており、1曲に時間をかけて磨き上げたい層を想定している。

海外での参照先はSunoだ。報道によれば、Sunoは著作権訴訟を受けて旧モデルの提供を停止し、新しいV6は商用ライセンス済みの楽曲データベースの上に構築され、無料枠や商用利用の条件も厳しくなっているという。中国のインディーズミュージシャンにとって、海外ツールの利用可否やライセンス条件が変化し続けるなか、大手による自社開発ツールの居場所は広がりつつある。

まだ明らかでない点

MusicBuddyで制作した楽曲の著作権が誰に帰属するのか、AIの関与度が高い楽曲を発表する際にどう表示すべきか、プラットフォームの生成モデルがどのようなデータで学習されたのか――これらは現時点で公式サイトに記載がない。この部分は、ミュージシャンが正式なリリース楽曲を安心してこのプラットフォームに預けられるかどうかを直接左右する。

先行体験の終了時期や、今後有料化するかどうかについても、まだ公表されていない。

参考資料:MusicBuddy公式サイト、網易号テクノロジー報道、CocoLoop、捜狐科技;製品機能と先行体験の状況は公式サイトおよびメディアの実機レビューをもとに確認。