アント、6B設計モデル2種を公開 画像を9層に分解

Ant Group傘下の百霊(Ming)大規模モデルチームは9月23日、Ming-Image-0.1-Designシリーズをオープンソース化した。モデルは2種類で、いずれもパラメータ数は60億(6B)。コードと重みはHugging Faceのinclusion AI組織下で公開され、ライセンスはMITとなっている。

  • Ming-Image-0.1-Designは「テキストからデザイン案へ」を担当する。要件を文章で入力すると、UI画面、データダッシュボード、インフォグラフィック、ポスターなど、レイアウトと文字が主体の完成デザインを生成する。
  • Ming-Image-0.1-Design-Layerは「デザイン案からレイヤーへ」を担当する。1枚に統合済みのデザイン画像を、個別に編集できる透明レイヤー2〜9枚に分解する。

同時に、エージェント向けスキルパックも2つ公開された。Ling UI Design Skillと、画像を編集可能なPPTに変換するImage-to-Editable-PPT Skillだ。モデルAPIはOpenRouterで2週間無料公開されている。

狙っているのはどんな画像か

汎用の画像生成モデルは絵作りは得意でも、ボタンやカード、多段組の情報ブロックのように「文字の正確さ」と「配置の整合性」が求められる領域では、文字の誤り、位置ズレ、同一画像内での配色の不統一が起きやすい。Ming-Image-0.1-Designはこの弱点に的を絞っている。

公式の説明によると、Designモデルは最大8Kトークンの構造化プロンプトに対応し、タイトル、ボタンの文言、カードの内容、配色までを書き込んだ長い要件をひとまとまりで入力できる。タイトル、ボタン、複数エリアの情報に関する文字レンダリングとレイアウトの安定性を重点的に強化し、VAEはRGBAをネイティブにサポートするため、透明背景の要素をそのまま生成できる。推奨出力解像度は2048×2048で、速度を優先する場合は1024×1024も選べる。

Layerモデルが解決するのはもう一方の課題だ。デザイナーがAI生成の画像を受け取り、ボタンの色を1つ変えたいだけでも、これまでは再生成するか手作業で切り抜くしかなかった。レイヤーに分解すれば、文字、背景、主要な要素をそれぞれ独立して移動・差し替えできる。

スコアとその見方

第三者評価機関Artificial Analysisが9月18日に更新したUI/UXデザイン専門ランキングで、Ming-Image-0.1-DesignはEloスコア1082を記録し、オープンウェイトモデルの中で首位となった。Ant Groupは併せて3つの内訳データも公表している。レイアウトの安定性67.4%、複雑な構成67.0%、文字レンダリング66.7%だ。この3つの数値がどのような方法で算出され、どのモデルと比較したものかは公開資料に詳細な記載がなく、参考にする際はEloの順位を主に見るほうが無難だろう。

Hugging Faceのモデルページには基盤アーキテクチャの詳細は示されておらず、クローズドソースモデルとの直接比較も掲載されていない。ランキングはオープンウェイトモデルの範囲に限定されており、クローズドソースの商用デザイン生成ツールと比べてどの位置にあるかを示す公開データは今のところない。

中国国内チームにとっての意味

まずハードルの話から。公式が動作確認済みの構成は、BF16精度でVRAM80GBのCUDA対応GPU1枚、つまりA100やH100クラスのデータセンター向けカードだ。コンシューマー向けGPUで動くか、量子化後にどれだけ精度が落ちるかはモデルページに記載がなく、ローカルで運用するチームは自分たちで検証する必要がある。まず効果を見てみたいという場合は、2週間無料のOpenRouter経由のAPIが最も低コストな入り口になる。

ライセンスについては、MITは商用利用と二次開発を認めており、生成機能を自社のデザインツールやマーケティング素材システムに組み込みたい企業にとって、法務面での追加負担はほとんどない。

日常業務に最も近いのは、あのPPTスキルパックだろう。多くの報告資料は今も「スクリーンショット+手作業での修正」で作られている。1枚の画像を編集可能なページ要素に戻せれば、繰り返しの手直しにかかる時間を削減できる。実際の再現度がどこまであるか——分解したテキストをそのまま編集できるか、フォントが置き換わってしまわないか——については公式の評価データもなく、実際に試す必要がある。

中国語の組版も、まだ検証が必要な項目だ。Ant Groupのスキルパック資料には中国語のデザイン例が含まれているが、モデルページには中国語の文字レンダリングに特化したテスト結果は掲載されていない。中国語のポスターやインターフェースを作るユーザーは、自分で何度か試してから判断する必要がある。

参考資料:Hugging Faceモデルページ、IT Home、CocoLoop、Artificial Analysis。パラメータ数・ライセンス・VRAM構成はHugging Faceモデルページに、ランキングおよび内訳データはArtificial Analysisと公式発表の情報に基づく。