階躍星辰(StepFun)は9月20日、新世代の主力基盤モデル「Step 5 Preview」を発表した。同日から自社製品とAPIで利用可能になり、完全な重みは10月15日にオープンソース化される予定だ。
モデルはスパースMoE(Mixture of Experts)方式を採用し、総パラメータは600B、トークンごとの活性化パラメータは27B、コンテキストウィンドウは100万トークン、テキストと視覚入力をネイティブにサポートする。発表では想定用途が具体的に挙げられており、AIコーディング、ソフトウェアエンジニアリング、専門知識労働、金融分野が対象とされた。
ベンチマーク成績と独自ベンチマーク
Artificial Analysis総合知能指数でStep 5 Previewは44点を獲得し、世界のオープンウェイトモデルで3位に入った。その他の公開ベンチマークの成績は、GPQA Diamond 93.5%、Terminal-Bench v2.1 85.0%、BrowseComp 88.7%、マルチモーダルのMMMU-Proが76.0%。階躍星辰はAA-LCRやCyberGymなどのベンチマークでも最高または次点の成績を収めたとしている。
別に見るべき数字もある。階躍星辰はStepCodeBenchとFinStepBenchという2つの成績も公表しているが、これらは同社が独自に構築したベンチマークだ。StepCodeBenchは553のコードリポジトリ、9種類のタスク、20の応用分野、33のプログラミング言語をカバーし、バグ修正、機能開発、コードリファクタリング、環境設定といった実際の開発タスクを測定する。独自ベンチマークは公開ランキングとは設計意図が異なり、異なる設定下の結果は直接比較できないと、階躍星辰自身が資料で明記している。
エージェント能力については、モデルが3時間を超える連続タスクを自律的に実行でき、コードデバッグ、シリアルポートアクセス、スクリーンショット取得、カメラ呼び出し、マウス操作のシミュレーションに対応すると階躍星辰は説明する。こうした説明は現時点で第三者による再現がなく、外部が検証できるのは公開ベンチマークの数値のみだ。
コストの主張とその内訳
発表で最も引用されているのは、単一タスクあたりのコストがAnthropicのClaude Opus 5の8分の1にとどまるという一文だ。この数値の出所は階躍星辰自身であり、公開資料には算出根拠——タスク数、難易度分布、API定価ベースか実利用量ベースか——は一切示されていない。
この倍率を具体的な場面に当てはめてみる。あるチームがOpus 5の推論に毎月10万元を支出しているとすれば、8分の1で計算するとStep 5 Previewでは約1万2500元となり、年間では数百万元規模の削減になる。この数字が成り立つのは、タスク分布が階躍星辰の試算時と一致している場合に限られるが、その部分こそ公開されていない。移行を検討するチームにとっては、10月15日の重み公開後に自らのタスクで実際に検証する方が、この倍率を引用するより信頼できる。
比較対象の選び方にも位置づけが表れている。階躍星辰は別のオープンウェイトモデルではなく、クローズドモデルの最上位層の中でも単価が最も高い部類を比較対象に選んだ。
1カ月の猶予
プレビュー版をAPIで先行公開し、正式な重みは1カ月後という進め方は、今年、中国国内の企業がますます採用しているパターンだ。まずランキングと話題性を先取りし、その後に重みを公開する。リスクは、この1カ月の間に同クラスのオープンウェイト旗艦モデルがいつ登場してもおかしくないことで、44点というこの順位が10月15日まで保たれるかは誰にも保証できない。
エンジニアリングの観点では、総パラメータ600B・活性化27Bという構成は導入側にとって比較的扱いやすい。活性化量が27Bであれば、単一ノードの複数GPUでの推論が現実的であり、600Bの密なモデルと同等のリソースを用意する必要はない。これはそもそも重みを公開できる前提条件でもあり、パラメータ規模がさらに大きくなれば、オープンソースとしての実際的な意義は導入のハードルに食われてしまう。
ライセンス条項とAPI料金は、今回階躍星辰から公表されていない。この2点が、10月15日以降に実際にどれだけの人がこのモデルを導入するかを左右することになる。
参考資料:階躍星辰公式発表、鳳凰科技(Ifeng)、CocoLoop、新浪科技(Sina)。パラメータ規模、AA総合知能指数のスコア、オープンソース化時期は公式発表に基づき確認済み。コスト倍率と独自ベンチマークの成績はいずれも階躍星辰側が公表した数値。