国連とGoogleは、Googleがオープンソースで公開する「Data Commons」を基盤にした新プラットフォーム「UN System Data Commons」を発表した。長年運用されてきたポータル「UNData」の後継にあたる。新プラットフォームは自然言語での質問に対応するほか、MCP(Model Context Protocol)にも対応し、AIシステムが元データソースに直接アクセスして、出典を追跡できる形で結果を返せるようになる。Googleは自社の社会貢献部門Google.orgを通じて200万ドルの資金を提供する。
この取り組みを後押ししたのが、国連児童基金(UNICEF)による調査だ。調査ではOpenAIのGPT-4oとGPT-4o-mini、AnthropicのClaude Sonnet 4.5とHaiku 4.5、GoogleのGemini 2.5 Flashと2.0 Flashの計6モデルに、世界の開発指標に関する質問への回答性能をテストした。13万3000件超の回答の平均正答率は21.2%。約6割の回答は使える数字を示さず、モデルは曖昧な言い回しに逃げる傾向が見られた。また同じ質問を2日後に再度尋ねた際、同じ数字が返ってきた割合は約5割にとどまった。なお、この調査はまだ査読前のワーキングペーパーであり、投稿もされていない。
人が閲覧する仕組みから、機械が取得する仕組みへ
UNDataは典型的な統計ポータルの形をしていた。機関別、指標別、年別にクリックして進み、表をダウンロードする方式だ。新プラットフォームはその入り口を「一回の呼び出し」に置き換えた。ここでMCPが担うのは接続層としての役割で、モデルはもはやウェブページのキャッシュを取得するのではなく、データソースから直接値を取得し、参照元のパスを添えて返す。
国連統計局の局長代理を務めるShantanu Mukherjee氏はこう述べている。
We are orders of magnitude more advanced in scale, scope, and flexibility.
規模、対象範囲、柔軟性のいずれにおいても、以前とは桁違いに進化した。
Google Data Commonsを率いるPrem Ramaswami氏は、普及の進め方について「トレーナーを育成する」方式を採っていると説明した上で、一つの留保条件を付け加えた。モデルは微妙なニュアンスを読み違える可能性があるため、出力は人間が確認すべきだという。
現時点で参加を表明した国連機関は26。公開時点で利用可能なデータセットは20近くにのぼる見込みで、2027年までに国連システム全体の統計データセットの80%をこのプラットフォームに載せることを目標としている。
中国語圏ではまだ手つかず
中国の公開統計データには、まだこれに相当する呼び出し層が存在しない。国家統計局や各省庁、地方の統計年鑑の公開形式は依然としてウェブ上の表やPDFが中心で、モデルがこれを利用するには誰かがデータを取得し、手作業で再整理するしかなく、どの段階で誤差が生じたかを遡るのも難しい。いま中国語ユーザーがモデルに「2024年の中国の都市化率は」と尋ねても、返ってくる数字はもとの統計そのものではなく、どこかの二次的な記事に由来している可能性が高い。国連が今回取り組んでいるのは、まさに同種の問題だ。
もう一つ注目に値するのが、引用によるトラフィックだ。この調査によると、2026年1月から9月にかけて、ChatGPT経由の参照流入は前年同期比67%増加した。統計機関がこれまで影響力を測る指標にしてきたのはポータルの訪問数だったが、今後はもう一つ、モデルが回答の中で自分たちのデータをどれだけ引用しているかも追う必要が出てきた。
まだ答えが出ていない部分
プラットフォームの長期的な運用費を誰が負担するのか、200万ドルの後の予算をどこから調達するのかについて、発表では触れられていない。26の機関がそれぞれどの粒度までデータを公開するのか、機微な指標をどう扱うのか、加盟国が抱くデータ主権への懸念にどう対応するのかについても、公開された方針はまだない。2027年までに80%という目標も、現時点では一つの期日が示されているだけで、段階的な検証方法は示されていない。
参考資料:TechCrunch、国連統計局およびGoogle Data Commonsの発表、CocoLoop、UNICEFワーキングペーパー。正答率および参加機関数は調査・発表の記載内容と照合済み。