Claudeがオンコール担当に、初動分析は中央値14分

Anthropicは社内CI/CDパイプラインの一次オンコール対応を、社内でClaude Tagと呼ばれる仕組みでClaudeに委ねた。8月18日に公開された発表で最も目を引く数字は2つある。障害チケットが起票されてから、Claudeが証拠に基づく最初の分析を出すまでの時間は中央値で14分。うまくいけば、最初のレポートの時点で根本原因を4分で言い当てることもある。

背景説明はかなり率直だ。エンジニア1人当たりの四半期コード生産量は、従来の8倍にまで増えたという。生産量が上がれば、ビルド失敗やテストの不安定化、デプロイのロールバックといった事象の絶対数も比例して増える。しかも1件の調査には1時間以上かかることが多く、勤務時間外に発生することも珍しくない。

Claudeが握っている権限

この仕組みを動かしているのは、モデルの性能そのものではなくアクセス権限の設計だ。ClaudeはMCPコネクタ経由で複数のツールに接続している。指標とスタックトレースを見るGrafanaとログストレージ、監視を補うDatadog、コミットや差分を読みプルリクエストを出すGitHub、クラスター単位の対処案を出すKubernetes、そしてアラート受信と結論の投稿に使うPagerDutyと複数のSlackチャンネルだ。専用のサービスアカウントで動作し、行動は監査可能になっている。

アラートが人を起こすべきかどうかの判断ルールは、自然言語でそのまま書かれている。記事が挙げる例は、エラー率が2%を超えた状態が5分以上続き、かつ既知のデプロイ時間帯でない場合にオンコールを呼び出す、というものだ。こうした閾値は従来、監視システムの設定ファイルの中にあり、変更にはリリースの手続きが必要だった。Claudeが読めるルールとして書くようになったことで、変更コストは文章を1行直す程度まで下がった。自動アラートに加え、チームメンバーや社内の障害ページから手動で起動することもできる。

トリアージは並列で走る

障害が入ると、Claudeはオーケストレーターエージェントを立ち上げ、そこから複数のサブエージェントを並列で派遣して異なる依存関係を調べさせる。あるエージェントはログを読み、別のエージェントは直近のコミットを比較し、もう一つは指標のグラフを見る。この「動的ワークフロー」が、あの14分の分析を生み出している。

判断を支えるのは2種類のファイルだ。1つは障害の種類別に書かれた調査手順書にあたるスキルファイルで、そのうち特に厄介なバグの1種類を扱うものは617行に及ぶ。もう1つはlessons.mdで、事案が片付くたびにClaude自身が追記し、次に似たパターンに遭遇したときにまず参照する。どちらもGitHubに置かれ、コードと同じレビュープロセスを通る。

修正は人の手に残る

修正の段階には人の出番が残されている。最も多い成果物はプルリクエストで、エンジニアがレビューしてからデプロイするかどうかを決める。展開はフィーチャーフラグで制御される。クラスターに関わる場合、Claudeはドレイン、隔離、スケーリングといった対処案を提示するが、実行するかどうかは人が判断する。修正が入った後は、同じツール群を使って検証も行う。

Anthropicは複数の役割を明確に人に残している。中長期のアーキテクチャ改善、共有モードでClaudeと一緒に仮説を補う作業(Claudeが最初から正しいとは限らず、人の勘で軌道修正する必要があるため)、プルリクエストの承認ゲート、そしてコミュニケーションの調子だ。ステータスレポートの書式はチームの好みに合うまで何度も調整が必要で、この部分は自動化しきれていないという。

引き継ぎもプロダクト化されている。週次のまとめレポートと日次のサマリーがあり、さらにci-weatherと呼ばれる別のエージェントが複数の事案をまとめて社外向けのステータス説明に仕立てている。

見落としやすい8倍という数字

この8倍という数字は、「なぜこれをやるのか」と「やってみてどうなったか」の両方の文脈で、意味合いが少し違う。一方では、これはプレッシャーの原因だ。チーム規模が変わらないまま出荷量が8倍になれば、障害チケットの数もそのままではいられない。もう一方では、このオンコール体制が成立するための前提条件でもある。もしコードが今も1行ずつ人の手で書かれていたら、障害の形や頻度、解釈のしやすさはエンジニアの勘に近いままで、AIによるトリアージの限界的なメリットはこれほど明確にはならなかっただろう。AIがコードを書く比重が大きくなった以上、最初の切り分けをAIに任せることは、この流れの延長線上にある。

導入のハードルもはっきり書かれている。Claude TeamまたはEnterpriseプランが必要で、ツール接続と権限設定には最初に数時間かかる。ほとんどのチームにとって難しいのは接続作業そのものより、プルリクエストを出しクラスターを操作できるサービスアカウントを渡す覚悟があるかどうかだろう。

参考資料:Anthropic公式ブログ、CocoLoop。中央値14分のトリアージ時間、最速4分の根本原因特定、四半期コード生産量8倍、スキルファイル617行はいずれも同社の公開発表に基づく。