5カ月で、評価額は7億4,000万ドルから20億ドルへ跳ね上がった。
4月29日、Twitterの元CEOであるParag Agrawal氏が創業したParallel Web Systemsは、1億ドルのSeries B調達を発表した。Sequoia Capitalが主導し、Andrew Reed氏が取締役会に加わる。Kleiner Perkins、Index、Khosla、First Round、Spark、Terrainなど、前回ラウンドの既存投資家もほぼそろって追加出資した。
累計調達額は2億3,000万ドルに達した。昨年11月のSeries Aからまだ5カ月しかたっていない。
Agrawal氏が狙うもの
これは検索エンジンではない。Perplexityのような回答エンジンでもない。
Parallelが作っているのは、AIエージェント向けのウェブインデックスとAPIだ。エージェントが企業の財務資料を探すならAPIを1回呼ぶ。サプライチェーン情報を調べるならAPIを1回呼ぶ。デューデリジェンスを進めるならAPIを1回呼ぶ。その裏側では、Parallelが自前でクロールし、エージェント向けに構造化したウェブインデックスが動く。
Agrawal氏はこの構想をこう説明している。
Parallelを始めたのは、エージェントが人間の1,000倍の頻度でウェブを使い、その大半がバックグラウンドで行われるという判断からだ。
ビジネスの言葉に置き換えると、人間が1日にブラウザを20回開くなら、エージェントは2万回APIを呼ぶ。 その規模が現実になれば、クリック課金、SEO、広告入札に支えられた従来のGoogle検索モデルは効きにくくなる。エージェントは広告をクリックしない。必要なのは、構造化され、低遅延で、出典を検証できるデータだ。
エージェントがウェブへ入る入口を握る企業が、次世代検索のキャッシュフローを握る。
顧客リストが示すもの
| 企業 | Parallelの用途 |
|---|---|
| Harvey | 法律推論ユースケースのためのウェブデータ取得 |
| Notion | ユーザーのためにエージェントが行うリサーチ |
| Profound | コンテンツ調査 |
| Actively | 営業リードの監視 |
| Opendoor | 不動産関連データの照会 |
| 複数の投資銀行とヘッジファンド | 市場と企業情報のリアルタイム取得 |
| 米国の大手P&C保険会社2社 | 保険金請求に関する確認作業 |
すでに10万人以上の開発者が利用している。共通点は明快だ。単なるチャットボットではなく、自律的に複数段階の作業を完了するエージェント型プロダクトばかりである。
HarveyのGabe Pereyra氏は端的に述べている。
Parallelは、私たちがウェブを画面の中に取り込むための方法だ。
NotionのSarah Sachs氏もこう補足した。
人間と同じように、エージェントも仕事をし、判断するために公開ウェブを調べる必要がある。Parallelはそれを可能にする。
Sequoiaが追いかけた理由
今回取締役に入るAndrew Reed氏の見立ては率直だ。
長時間動くエージェントは、あらゆる業界のプロダクトを再定義している。エージェントにはウェブが必要だ。
SequoiaはすでにCursorやHarveyといったエージェント領域の有力企業に投資している。そこにParallelを加える判断はわかりやすい。アプリケーション層に張った後、今度はインフラ層に張るということだ。
2010年代のクラウドネイティブ時代に、SequoiaがSnowflakeとDatadogの両方へ投資した構図にも近い。縦のアプリケーションと横のツール、その両方を押さえる。
BingやGoogleではない理由
BingにはAPIがある。GoogleにはCustom Search APIがある。Brave、Exa、Tavilyもある。競合がいない市場ではない。
Parallelの差別化は、エージェント専用設計を具体的な要件に落としている点にある。
- 構造化スキーマ:返すのはHTMLの塊ではなく、エージェントがそのまま扱えるJSON。
- 完全な出典追跡:各情報を元のウェブページまでたどれる。金融や法律など規制産業では重要な要件だ。
- エージェントが許容できる遅延:人間向け検索なら500ミリ秒でも耐えられる。だが1つのタスクで十数回APIを連鎖呼び出しするエージェントには、100ミリ秒未満に近い遅延が必要になる。
最後の点は、Parallelが本番レベルのエージェントを支えられるかどうかを左右する。1つのタスクで50回ウェブを調べ、毎回500ミリ秒かかれば、それだけで25秒待ちになる。
この勝負の本質
Parallelは今回、パブリッシャーが神経をとがらせる細部にも触れた。同社はオープンウェブの経済性と市場メカニズムに投資し、コンテンツ所有者やデータ提供者がAIシステムから収益を得られるようにするという。
要するに、データをクロールする行為に新しい支払い経路を作ろうとしている。
これはこの1年、AI企業とメディア企業が争ってきた問題の中心にある。Anthropicは音楽著作権訴訟で15億ドルの和解に応じ、OpenAIは複数の出版社から訴えられ、RedditとTwitterは無料APIを閉じた。Parallelがパブリッシャーに自発的な参加理由を与える仕組みを作れれば、それは単なる別の検索エンジンではない。エージェント時代のStripe、つまりデータ流通の決済レイヤーに近づく。
20億ドルの評価額は高いのか。答えは、この決済レイヤーが動くかどうかにかかっている。動けば、10倍どころではない物語になる。
参考資料:CocoLoop、Parallel Web Systems hits $2B valuation five months after its last big raise(TechCrunch)、Parallel Raises at $2 Billion Valuation to Scale Web Infrastructure for Agents(PR Newswire)、Parag Agrawal's startup raises $100M to build a parallel web for AI agents(SiliconANGLE)、Sequoia Capital leads Parallel's $100M raise at $2B valuation(TechFundingNews)