OpenAI、Cerebrasに200億ドルを投じる

同じ週に、2件の200億ドル規模のチップ取引が浮上した。

1件は、NVIDIAが昨年末にGroqを200億ドルで買収した案件。GroqはAI推論チップに特化した企業で、Cerebrasの最大のアーキテクチャ上の競合相手だった。

もう1件は、OpenAIによるCerebrasへの追加コミットメントだ。3年間でさらに200億ドルを計算能力に投じ、最大10%の株式ワラント、さらにCerebrasのデータセンター建設専用に10億ドルを別途拠出する。

この2件が同時に発生したのは偶然ではない。AIの計算戦場は訓練から推論へと移行しており、各社がポジションを争っている。

推論が主戦場に

まず背景を説明する。

AI計算能力には2種類ある。訓練(大量のデータをモデルに与えてパラメータを調整する、一度きりのコスト)と推論(訓練済みモデルを使って質問に答える、継続的に発生するコスト)だ。

数年前までは訓練が主要な支出だった。今は違う。

2025年、推論はすでにAI計算支出全体の50%を占めている。2026年にはその割合が3分の2に跳ね上がると予測されている。

ChatGPT、Claude、Geminiにメッセージを送るたびに、背後では推論リクエストが発生している。ユーザー数が増えれば増えるほど推論コストは線形に増加する。大規模モデル企業が数億人のユーザーにサービスを提供するには、推論インフラの効率が粗利率の維持を左右する。

NVIDIAのGPUは訓練に非常に適しているが、推論シナリオでは1つの弱点がある。メモリ帯域幅だ。推論のボトルネックは計算能力ではなく、データの移動速度にある。GPUはVRAMから繰り返し重みを読み出す必要があり、このプロセスは遅く、高コストで、電力を消費する。

Cerebrasが推論に適する理由

CerebrasのWSE-3(第3世代ウェハースケールエンジン)は、ウェハ全体を覆うチップだ。

パラメータWSE-3NVIDIA H100
チップ面積46,225 mm²814 mm²
AIコア900,000個16,896 CUDAコア
オンチップSRAM44GB
推論速度H100の15~20倍基準

WSE-3はH100より57倍大きい。これは誇張された数字ではなく、推論性能を決定づける重要な要素だ。44GBのオンチップSRAMにより、メモリと計算コアが隣接し、データ移動距離がセンチメートルからマイクロメートルに短縮される。これが推論速度の差を生む。

代償は何か?ウェハスケールパッケージの歩留まりの低さ、高コスト、CUDAエコシステムの欠如だ。訓練にはほとんど使えず、訓練分野におけるNVIDIAの堀は無傷のまま残る。しかし推論においては?Cerebrasのアーキテクチャはここで構造的優位性を持つ。

OpenAIの2つの布石

OpenAIとCerebrasの関係は新しいものではない。今年1月、OpenAIは最初の大型契約を結んだ。750メガワットの計算容量、3年契約、総額100億ドル超だ。

4月17日、The Informationが追加情報を報じた。OpenAIは新たにコミットメントを追加し、3年間の総支出は200億ドル超、最大300億ドルに達する可能性がある。内容は以下の通り。

  • 消費量に応じて増加する株式ワラント、最大Cerebrasの10%の所有権
  • Cerebrasのデータセンター建設支援のための別途10億ドル

これは単なる調達契約ではなく、戦略的提携に近い。同時にOpenAIはBroadcomと協力して自社ASICチップの開発も進めており、2026年末の量産を目指している。

OpenAIは意識的に計算能力の供給源を多様化している。NVIDIA以外に並行する経路を構築し、専用推論チップと自社開発チップの両方に賭けている。

NVIDIAの対抗策:競合を買収

NVIDIAは昨年末、Groqを200億ドルで買収した。GroqのLPU(言語処理ユニット)は純粋な推論アーキテクチャで、Cerebrasと同様にGPUのメモリ帯域幅のボトルネックを回避し、独立した推論チップ分野における主要な競合だった。

買収後、Groqは独立企業からNVIDIAの一部門となった。これは防御的な動きだが、効果は直接的だ。競合を社内に取り込むことは、市場で正面から戦うよりも安価で徹底している。

結果として、Cerebrasのこの分野における最大のアーキテクチャ上の競合は消え、NVIDIA自身の製品となった。この構図は、今後数年間のCerebrasの顧客開拓にとって有利に働く。

Cerebras、IPOに再挑戦

4月17日、CerebrasはSECに上場申請を再提出した。目標評価額は約350億ドル、30億ドルの資金調達を計画し、第2四半期中の上場を目指す。

最初のIPOが失敗したのは、最大顧客であるG42(アブダビのAI企業)がCFIUSの標的になったためだ。CerebrasはG42の議決権付き株式をすべて無議決権株式に転換し、CFIUSは2025年3月31日に最終的に承認した。

現在の条件は前回とは異なる。

  • GroqがNVIDIAに買収され、最大の競合が撤退
  • OpenAIがアンカー顧客となり、200億ドルのコミットメントが上場ロードショー最大の切り札に
  • 評価額は今年2月のシリーズHの230億ドルから目標350億ドルへ、上場前に50%上昇

OpenAI、NVIDIA、Cerebrasの3社は、推論の戦場でそれぞれの思惑を持つが、同じことに賭けている。今後5年間で推論計算の需要はさらに数倍に拡大する。今ポジションを確保するコストは、2年後に参入するよりもはるかに安い。

出典:OpenAI to Spend More Than $20 Billion on Cerebras Chips, Receive Equity Stake(The Information);AI chipmaker Cerebras files to go public after scrapping IPO plans last year(CNBC);CocoLoop、Two $20 billion deals: OpenAI and Nvidia are waging a "war of inference"(PANews);Cerebras IPO 2026: The $25B Nvidia Challenger(Nerd Level Tech)