OpenAIのBio Bug Bountyが本日、正式にテスト段階に入った。
条件は明快だ。Codex Desktop上のGPT-5.5に対し、1つのプロンプトだけで5問すべてのバイオ安全性問題に完全回答させ、どの審査機構も発火させない。最初に達成した研究者には2万5000ドルが支払われる。
CTFのように聞こえるが、実際の条件はそれよりはるかに厳しい。
この懸賞が特殊な理由
まず設計そのものがかなり絞られている。
- 賞金:5問すべてを最初に突破した研究者が2万5000ドルを受け取る。部分的でも価値のある発見には、裁量で賞金が出る可能性がある。
- 環境:対象はCodex Desktop上のGPT-5.5に限定される。他の利用経路での結果は対象外だ。
- 期間:応募期間は4月23日から6月22日まで、テスト期間は4月28日から7月27日まで。
- 契約:NDAへの署名が必須で、テストデータ、プロンプト、発見内容の公開は禁止される。
重要なのは「universal jailbreak」という言葉だ。OpenAIが探しているのは、ある1問だけを突破する方法ではない。1つのプロンプトで5問すべてを解ける万能型の突破法である。
この設定はかなり微妙だ。多くのAIレッドチーミングでは、ケースごとに個別最適化して突破を狙う。今回は逆に、単一プロンプトが5つのバイオ安全性ガードレールを一気に越え、しかも審査システムに検知されないことを証明しなければならない。
なぜCodex Desktopなのか
ここが直感に反する点だ。
GPT-5.5にはWeb、API、Codex CLI、Codex Desktopと複数の入口がある。それでもOpenAIは、今回のテストをCodex Desktopだけに限定した。
考えられる理由は2つある。1つ目は、Codex Desktopが開発者向けの、見えない同僚のようなエージェント環境だからだ。サンドボックス境界、権限、コンテキスト管理はWeb版ChatGPTとは異なる。この環境でバイオ安全性に関わる脱獄が成立するなら、エージェント型展開における安全境界に問題があることを意味する。OpenAIが最も気にしているリスク領域だ。
2つ目は、変数を固定するためである。テスト面を狭くすれば、レッドチーム報告の比較可能性が高まり、入口ごとのプロンプトテンプレート差によるノイズも減らせる。
ただし、この制限には含意がある。Web版ChatGPT、モバイル版、API直叩きでの攻撃面は、今回の懸賞の対象外だ。2万5000ドルで買っているのは、GPT-5.5全体の堅牢性ではなく、極めて具体的な安全境界に関する保証である。
5問の中身は何か
OpenAIは公表していない。NDAにより、参加者が問題を外部に漏らすことも禁じられている。
推測できるのは、この5問が専門家によって選ばれた、有害な生物研究を加速し得る具体的な問いだということだ。Anthropicは過去1年、Constitutional Classifiersで似たテストを行ってきたが、OpenAIの今回の方法はさらに踏み込んでいる。レッドチーミングと懸賞制度を直接組み合わせたからだ。
Anthropicが以前に行ったMythos Previewのように、40社を招いて脆弱性探索を行う方式とも対照的だ。OpenAIのBio Bountyは招待と応募を組み合わせ、純粋なレッドチーム人材に絞り、バイオ安全性という単一カテゴリの極限を見に行く。
Anthropicが企業エコシステムを試すのに対し、OpenAIは孤立したシナリオの限界を押している。
本当の見どころ
焦点は、2万5000ドルでトップ級のレッドチーム人材を呼べるかどうかではない。AIレッドチーム市場では、この金額は決して大きくない。GoogleのVRPやMetaのBug Bountyでは、6桁ドルに達することも珍しくない。
本当の見どころは、テスト期間が3カ月に及ぶことだ。
この3カ月以内に誰かが賞金を取れば、GPT-5.5のバイオ安全性ガードレールにはシステム的な弱点があることになる。OpenAIは次のGPT-5.5 Pro安全性アップデートで修正を迫られる。
逆に誰も成功しなければ、OpenAIは「公開レッドチーム挑戦で破られなかった」という信頼しやすい記録を得る。自己賛美的な安全性レポートより、はるかに効く材料だ。
OpenAIが単一カテゴリの安全ガードレールを公開の懸賞制度でテストするのは今回が初めてである。従来のBug Bountyは、モデル全体の安全問題やプライバシー問題を広く扱っていた。今回はバイオ安全性に狙いを固定した。
業界を見ている人なら理由は分かる。AIバイオ安全性は2026年の規制上の重点テーマだ。ホワイトハウスのNational Policy FrameworkもEU AI Actも、生物リスクを最上位の懸念カテゴリに置いている。
OpenAIは規制の詳細が固まる前に、先にデータを集めている。
この先3カ月は、かなり興味深い展開になりそうだ。
参考資料:GPT-5.5 Bio Bug Bounty(OpenAI公式);CocoLoop、GPT-5.5 Bio Bug Bounty Program Aims to Improve AI Safety and Performance(GBHackers)、OpenAI offers $25,000 reward to hack GPT-5.5 safety controls(VARindia)