RTX Sparkノート、10月16日発売 740億モデルも

NVIDIAとマイクロソフトは10月13日、RTX Sparkを搭載したWindowsノートPCを10月16日(金)に発売すると発表した。このチップは6月のComputexで初公開されたが、その時点で示されたのはハードウェア仕様と「今秋発売」という説明だけだった。今回は発売日に加え、ソフトウェア面の対応が一覧で示された。

ハードウェアの数字は変わっていない。最大128GBのユニファイドメモリ、1ペタフロップスのAI演算性能を持ち、CPUとGPUを1つの「スーパーチップ」にまとめてWindows on Armで動かす。NVIDIAはブログで、これを「a new beginning for the PC」(PCの新たな始まり)と表現している。どのメーカーのどのモデルが先行発売されるのか、価格がいくらなのかはブログに書かれておらず、16日に各社が店頭やサイトに並べるのを待つことになる。

まず整えたのは開発環境

Arm版Windowsで長年指摘されてきたのは、ソフトウェアが追いつかないという点だ。今回NVIDIAは、開発者向けのレイヤーをかなり細かく挙げている。

  • PyTorch、Python、CUDA、およびすべてのCUDAライブラリが利用可能。Windows on Arm向けとして初のPyTorch-CUDAビルドも含まれる。
  • Python 3.15がWindows on Armでネイティブ動作し、ネイティブ版Condaインストーラーには2,000以上のパッケージが付属する。
  • ダウンロード数上位15,000のPython wheelパッケージのうち97%が対応済み。
  • llama.cppがWindows MLのバックエンドの1つになり、Llama Windowsアプリも公開される。

残る3%のwheelパッケージが何なのか、よく使われるライブラリが含まれるのかについては、ブログに記載がない。

エージェントアプリとローカルルーティング

アプリ面では、GitHub Copilot、Hermes、OpenClaw、Perplexity、Pi、WorkBuddyの各エージェントアプリに、簡素化されたローカルインストール手順と、2種類のセキュリティ隔離が提供される。NVIDIAのOpenShellと、マイクロソフトの実行コンテナーMXCである。OpenClawとGitHub CopilotはすでにMXCに対応しており、HermesがOpenShellとMXCに対応するのは10月末になる。

NVIDIAは、リクエストごとにローカルモデルとクラウドモデルへ振り分けるモデルルーティングライブラリSwitchyardもオープンソース化した。個人向けAIルーティングツールPAIRはベータを終え、llama.cppへの対応と合わせて、Windows、Linux、macOSで使えるようになる。GitHub Copilotはローカルモデルのルーティングに「HydraFusion」という仕組みを使い、マイクロソフトのMAI 1.1 Coding Flashはローカルで動作する。

クリエイティブ系では、AdobeのPhotoshop、Premiere、Substance 3D PainterがRTX Spark向けに最適化され、公式には最大2倍の性能とされている。ただしPhotoshopとPremiereのAI機能の最適化はまだベータ段階だ。Blender 5.3ベータ版はすでに対応済みで、ComfyUIにはRTXによる動画フレーム補間とHDRノードが追加された。ゲーム面では、DLSS 5の2倍速モデルが10月16日に『NBA 2K27』で利用可能になり、10月23日にRTX Remixへ入る。

メモリ収支を計算してみる

今回の主力モデルは、10月15日に公開されるNemotron 3.5 Bolt 74B-A9Bだ。総パラメーターは740億、1回あたりのアクティブは90億で、2ビット量子化により容量は約24GB。重み、学習データ、学習レシピのすべてがオープンで、llama.cpp、vLLM、Ollama、Unsloth、LM Studioで動かせる。NVIDIAはこのモデルについて、速度と知能の最適なバランスを狙ったものと説明している。

ざっと計算してみよう。740億パラメーターを2ビットで保持すると、重みだけで約18.5GB。量子化メタデータや一部の高精度レイヤーを加えれば、公式の24GBという数字とほぼ合う。128GBのユニファイドメモリに載せても、モデル本体は5分の1に満たない。残りは長いコンテキスト用のKVキャッシュや、ルーティング用の小型モデルの同時常駐に回せる。同じ見積もりで4ビット版なら約37GB以上になるが、それでも収まる。容量から見ると、24GBという区分はメモリの少ない下位機種への配慮に見えるが、NVIDIAは2ビットを選んだ理由を説明していない。

2ビット量子化でどれだけ能力が落ちるのかについて、ブログは高精度版との比較スコアを示しておらず、現時点で第三者による評価もない。発売後に最初に検証されるべき項目だろう。

もう1つのNemotron 3.5 Bolt E4Bは約4GBしかない。NVIDIA ACEのゲームキャラクター向け第3世代小型モデルで、10月23日に公開される。NVIDIAはまた、ローカル大規模モデルのダウンロード数が昨年1年間の5倍に達したとしているが、集計方法はブログでは説明されていない。

これらのマシンがどれだけ売れるかを左右する最大の変数は価格だ。6月の発表時、NVIDIAは第1弾をハイエンド向けとし、後からメモリ容量の小さいモデルが出るとだけ述べていた。16日の発売後に、128GBの最上位構成と下位構成の価格差が見えれば、「ノートPCで70B級モデルをローカル実行する」ためにいくら上乗せが必要かがわかる。

参考資料:NVIDIA公式ブログ(発売日、ソフトウェアエコシステム、Nemotron 3.5 Boltの仕様)、CocoLoop、Computex 2026のRTX Spark発表資料(メモリと演算性能の数値)。