The Browser Companyは10月22日、Arcブラウザーのサービスを2026年12月22日に終了すると発表した。あと2カ月である。以後、同社が保守するのはAIブラウザーのDiaのみとなる。
公式が挙げる理由はセキュリティに集中している。
"Keeping a browser secure takes constant, dedicated work that is only increasing in the age of AI."
ブラウザーを安全に保つには専任の継続的な取り組みが欠かせず、AI時代にはその作業量が増える一方だ。
発表によると、同社の最優先事項はメンバーに最高水準のセキュリティを提供することで、Diaは当初から現在のセキュリティ基準に沿って設計されている。エンジニアリングとセキュリティの両チームは今後Diaに集約される。
移行に際して示された約束
発表では4点が示された。パスワード、ブックマーク、拡張機能、履歴はスムーズにDiaへインポートできる。ArcならではのSpaces、Folders、Tab GroupsはDiaにも用意され、インポート後もデータはそのまま保たれる。安定性、速度、セキュリティのベンチマークでDiaはすでにArcを上回っている。そしてArcユーザーがよく使うブラウザー機能はDiaでは無料で、AIは任意の選択肢という位置づけだ。
最後の1点は、とりわけ既存ユーザーに向けたものだ。Arcの熱心なファンには、サイドバーやスペース管理が好きな一方でAIアシスタントにはあまり関心がない人も多い。「AIは任意」をわざわざ独立した項目として掲げたのは、そうした懸念への回答といえる。
一方で、発表は次の点に触れていない。12月22日以降、すでにインストール済みのArcが起動できるかどうか。サービス終了までセキュリティパッチの配信が続くのかどうか。WindowsとMacで同じ日に終了するのかどうか。詳細は公式ヘルプページの更新を待つ必要がある。
Arcの3年間
Arcは2023年にMac向けの一般ダウンロードを開始し、翌年にWindows版を投入した。縦型タブ、Spaces(区画分け)、数多くのショートカットジェスチャーで、デザイナーや開発者のあいだで評価を高めてきた。
転機は2025年5月だった。CEOのJosh Miller氏が公開書簡で、Arcの新機能開発を止めてセキュリティと保守のアップデートのみとし、チームはDiaに移ると表明した。同年9月には、Atlassianが約6億1000万ドルでThe Browser Companyを買収すると発表している。
開発停止からサービス終了の発表までは、およそ1年半あいた。今回の発表にある「セキュリティの作業量は増える一方」という言い分は、この間のブラウザー脆弱性の発生頻度と照らして見ると分かりやすい。保守のみでアップデートのないChromiumベースのブラウザーでも、上流が重大な脆弱性を修正するたびに、取り込み、テスト、リリースを行わなければならない。チームの労力は2つの製品に同時に割かれていた。
他社のAIブラウザーは
ArcがDiaに道を譲る動きは、AIブラウザー分野全体の再編の一部だ。
OpenAIが昨年投入した独立型ブラウザー「ChatGPT Atlas」は、今年8月に稼働を停止した。公開から1年足らずで、機能はChatGPTデスクトップアプリ、Chrome拡張機能、Codexのブラウザー機能に分散された。PerplexityのCometは運営が続いており、GoogleはGeminiをChromeに直接組み込んだ。
3社の道を並べると違いが見える。OpenAIは独立ブラウザーという外殻を手放し、GoogleはすでにシェアでトップのChromeにAIを加え、The Browser Companyは旧製品を閉じて唯一のAIブラウザーにユーザーを集める。DiaにはAtlassianという企業向けソフトウェア会社がついており、単独で戦うよりも業務コラボレーション方面へ展開する余地が大きい。ただ、Arcの既存ユーザーを受け止められるかどうかは12月以降の移行率次第で、現時点では同社はArcとDiaそれぞれのユーザー数を公表していない。
参考資料: The Browser Company公式発表、The Verge、CocoLoop、Engadget。サービス終了日、移行項目、買収額を照合した。