中国信息通信研究院(CAICT)の人工知能研究所などは10月23日、「大規模モデル トークンサービス性能モニタリング報告(2026年)」を公表した。最も注目を集めているのが価格の数字だ。国内の大規模モデルサービスの正規化平均価格は、2025年下半期の6.8元から2026年に入って13.46元へ上昇し、上げ幅は2倍近くに達した。
報告は、CAICT人工知能研究所、工業情報化部の「人工知能大規模モデル・ソフトウェア/ハードウェア評価重点実験室」、中国人工知能産業発展連盟が共同で発表した。データは2026年1月から8月までの監視結果で、呼び出し成功率、スループット、最初のトークンまでの遅延、安定性、価格、コンテキストウィンドウを対象とする。
価格・速度・遅延、3つの指標
まず価格から見る。報告によれば、2年間にわたる価格競争を経て、2026年は国内外とも価格が明確に上昇した。海外で2026年に入って発表された代表的なモデルの平均正規化価格は約117.8元で、国内を大きく上回っている。
次に速度。国内各モデルの8月の平均TPS(1秒あたりの出力トークン数)は78.23個で、2025年平均の38.25個からほぼ倍増した。海外の代表的モデルの8月のTPS平均は112.82個で、昨年12月の51.35個から同じく2倍以上に伸びたが、国内は全体としてなお一歩及ばない。
遅延は逆に長くなった。国内の8月の平均TTFT(最初のトークンまでの遅延)は1.26秒で、2025年平均は0.78秒だった。海外の代表的モデルは8月が2.08秒で、4月には1.04秒にとどまっていた。報告はこう説明している。
「TTFTの上昇は、単純な性能劣化ではない」
原因として、モデルのパラメータ数の増大、コンテキストの長期化、呼び出し量の増加が重なったことを挙げる。コンテキストの変化は分かりやすい。監視対象モデルのうち、100万トークンのコンテキストを持つものが47.8%、200K以上は合計95.7%を占め、2025年末より76ポイント以上高い。
ざっと計算してみる
いくつかの数字を並べると、おおまかな比率が見えてくる。
- 価格:13.46 ÷ 6.8 ≒ 1.98倍。海外の平均価格は国内の約117.8 ÷ 13.46 ≒ 8.8倍。
- 速度:国内のTPSは約2.05倍に伸びており、価格の上昇幅とほぼ同じ。
- 遅延:国内の最初のトークンまでの遅延は約0.48秒増え、増加率は6割前後。
「1元あたりで得られる出力速度」で粗く見積もると、今年は昨年とほぼ横ばいになる。価格が2倍になり、スループットも2倍になったからだ。開発者が余分に払った代金で得たものは、主に長いコンテキストと大きなモデルであり、1回のリクエストで最初の文字が出るまでの待ち時間はむしろ長くなった。これは報告が公開した平均値をもとにした当編集部の試算にすぎず、モデルや時間帯によって差が大きいため、特定の1社の請求額に当てはめることはできない。
国内ベンダーの今年の値上げの動きは、この平均値を裏づける。Tencent Cloudは年内に何度か、Hunyuanなどの AIサービスの価格を引き上げた。報道によれば、DeepSeek-V4のAPIは8月17日から時間帯別料金を導入し、ピーク時間帯の出力価格は従来の4.5倍に上がった。価格競争の間に底値まで下げられた料金が、1社ずつ元に戻りつつある。
同じモデルでもプラットフォームで違う
報告はさらに、オープンソースの4モデル、DeepSeek、Qwen、GLM、Kimiについて、開発元のプラットフォームとサードパーティのプラットフォームでの実績を個別に監視した。結論は、同じモデルでもプラットフォームによってTPSが最大で2倍近く違い、一部のサードパーティ基盤は公式より速いというものだ。報告は、各社の推論高速化、最適化方針、コスト管理の取捨選択の違いが、性能差の主因だとしている。
個別のモデルでは、8月にDeepSeek-V4-ProのTPSがDeepSeek-V3.2の2倍に達した。5月に主要モデルが世代交代すると、最初のトークンまでの遅延は軒並み一時的に上がり、推論の最適化が進んだ後に世代交代前の水準へ徐々に戻った。
利用量の伸びが、ベンダーが値上げに踏み切れる理由を説明している。報告によれば、2026年6月の国内のトークン1日平均消費量は約500兆で、2025年12月の4倍近くに増えた。
読者が注意すべき点が2つある。公開された要約には「正規化価格」の具体的な算出方法や課金単位の説明がなく、6.8元、13.46元、117.8元は同じ基準での横比較にとどまる。特定ベンダーの公式価格と直接突き合わせるのは適切でない。また、監視対象のモデルやプラットフォームの一覧も要約には載っておらず、詳細は報告の全文を参照する必要がある。
参考資料:中国信息通信研究院、CocoLoop、界面新聞、IT之家、21世紀経済報道。正規化平均価格、TPS、最初のトークンまでの遅延、コンテキスト比率の各数値と集計期間を照合した。