AMD、新型DeepSeekで最大14.8倍の性能差

SemiAnalysisは9月13日の投稿で、CUDA側のvLLMがDeepSeek V4.1 Flashに対応してから2日が経過して初めて、AMDが自社版のDeepSeek V4.1 Flashイメージを公開したと明らかにした。イメージ自体は箱を開けてすぐ使える状態で、機能面の欠落はない。差が出るのはコストパフォーマンスだ。同社の試算では、同じモデルをAMDのハードウェアで動かした場合、1ドルあたりの性能はH200比で最大14.8倍、B200・B300比で最大42倍劣るとされる。

SemiAnalysisはこの差の原因をエコシステムに求めている。NVIDIAは開発者コミュニティとの連携によってCUDA経路をモデル公開初日から最適化できており、同社はその開発者規模を600万人としている。

2日の差はどこで生まれるのか

新モデル公開直後の数日間、推論側の作業はカーネル適合、量子化パスの選定、スケジューラの調整に集中する。vLLMやSGLangといった推論フレームワークの中核開発は長らくCUDAを軸に回っており、モデル開発企業自身によるリファレンス実装もまずCUDAで動かすことが多い。AMD側は本流のマージを待ってから移植と検証を一巡させる必要があり、2日という時間差はこの工程が生む常態的な結果と言える。

DeepSeek V4.1 Flashは9月初旬に限定テストが始まり、その後正式公開された世代のモデルで、構造は従来世代と異なる。構造変更が大きいほど移植コストは高くなり、公開初日の性能差もそれだけ広がる。

同水準の差は3週間前にも観測されていた

時計を3週間前に戻すと、SemiAnalysisは8月24日にAgentX 1.0という長文脈エージェント推論専用のベンチマークを公開していた。このテストでは匿名化されたClaude Codeの呼び出し履歴393件を使用し、コンテキストは100万トークンを超え、投入された演算資源は1000枚超のGPU、消費電力は約2メガワット、予算は300万ドル超とされている。

その際の結論はモデルごとに分かれた。SGLang上のQwen3.5では、90 tok/s/userの水準でNVIDIAがAMDを20倍以上上回った。GLM 5.3では150 tok/s/userの水準でNVIDIAのコスト効率が約5倍高かった。B300のFP4経路はH100比で1ドルあたりの性能が12倍向上していた。同じ資料には、AMDのATOMスタックはアリババグループ全体でも小規模な広告事業部門1つでしか使われていない、というさらに厳しい指摘も記されていた。

3週間前の5倍から20倍という差と、今回の14.8倍から42倍という差は、桁としては一致している。違いは、AgentXが一定期間安定稼働してきたモデルを対象にしたのに対し、今回は公開から2日しか経っていない新モデルを対象にしており、立ち上がり直後の差がより広がっている点だ。

ハードウェア自体はボトルネックではない

MI355Xのスペック上の数字自体は見劣りしない。SemiAnalysisは8月の資料で、ある水準ではAMDのチップをタダで配ったとしても、vLLMとSGLangの側が追いつくまでは1トークンあたりのコストで勝てないという見方を示していた。8月21日以降、InferactとNVIDIAによるvLLM側の最適化が加わったことで、1ドルあたりの性能でB200がMI355Xを逆転したという。

調達する側から見れば、この数字が示すのは、購入判断を左右する変数がピーク演算性能からソフトウェアスタックの成熟度と新モデルへの適合速度に移った、ということだ。新モデル公開当日にサービスを立ち上げたい推論事業者にとって、AMD側の2日の差はそのまま2日分の収益機会の喪失を意味する。

数字の読み方で注意すべき点

14.8倍と42倍という数字はいずれもSemiAnalysisの単独データであり、AMDは反応を示しておらず、第三者による再現検証もない。1ドルあたりの性能という指標はカードの価格想定に極めて敏感で、中古のH200と新品のB300の市場価格差だけで倍率はどちらの方向にも大きく振れうる。同社は過去のベンチマーク報告でテスト手法とコストモデルを公開してきたが、今回の投稿には完全な手法説明は付されていない。

AMDのソフトウェアスタックはこの数年、追い上げを続けている。その速度がNVIDIAの世代ごとの最適化投資を上回れるかどうかは、次に大幅な構造変更を伴うモデルが公開された際、両陣営のイメージが何日差で出てくるかにかかっている。

参考資料:SemiAnalysis、CocoLoop、vLLMプロジェクトの公開記録。1ドルあたりの性能倍率およびAgentXベンチマークの投入規模はいずれもSemiAnalysisの発表内容に基づく記録であり、第三者による検証は経ていない。